午後の曳航 | Untitled


午後の曳航(’76)イギリスアメリカ日本

原作:三島由紀夫の同名小説

監督:ルイス・ジョン・カリーノ


最近、原作小説と抱き合わせで映画化作品を鑑賞することが増えてきました。

労力と時間がかかってしまうけど、作品をより深く味わうことができます。

で、今回は “三島文学を読んで観よう” も~ 谷崎だとか、三島だとか(笑)

そう、“耽美”が大好きなんです。 さらに淀川長治さんがおっしゃってました。

「毒がないと、つまらないわよ。」



英国のとある港町。13歳の少年ジョナサン(ジョナサン・カーン)が

母親のアン(サラ・マイルズ)と2人きりで暮らす、丘の上に建てられた

見晴らしのいい家からは、海がよく見え、彼は海と船をこよなく愛していた。

ある日、港に大きな船が入ってくるのを目にしたジョナサンは、母親にせがんで

船の見学に出かけ、二等航海士のジム(クリス・クリストファーソン)と出会う。

ジムの魅力的な姿に、まさに海の男の理想像を見たジョナサンは

彼に強い憧れを抱く一方、アンも次第にジムに心惹かれていく。



ジョナサンの部屋のタンスの奥に小さく開いた穴。そこから見える母の部屋。

覗き穴から見る母の部屋は、もはや親の部屋などではなく “女の部屋”

嗚呼・・・「欧州覗き映画における~」に、この作品も加えるべきだった・・・・・

真鍮のツインベッド、楕円形の三面鏡、乱暴に投げかけられた肌色のストッキング

ローションの香り、そして、強靭な肉体のジムとの情交・・・・・・

細かいディティールにまでこだわって、原作のイメージを再現していて

そうそう、こういう部屋だった。 って、ニヤニヤしてしまって(笑)

母親役のサラ・マイルズは、ジョセフ・ロージー『召使』 での

小悪魔的なイメージが強かったので、どうなのかと思ったが

すっかり艶やかな女性になられていて、原作の「房子」どおりの女性でした。



予告トレーラーが見当たらなかったので、挿入曲の「Sea Dream」を

果てしなく続く大海原に貨物船の汽笛が響き渡る中、しっとりと流れる。

陸地とは無縁で遠い存在であったはずの海の男ジムが

海の栄光を捨てて女の待つ陸地(日常)へと墜落していく・・・・

という航海士ジムと、そんな男の強い肉体と精神に憧れていた

少年ジョナサンの失望をもう少し深く描いてくれれば・・・・・

そんな不満もないことはないのですが

原作に最大限の敬意を払っていることが映像の中からも伺えるので

あんまりガミガミ言うのは、やめにしておきます(笑)

そもそも、映画が原作を超えることはあり得ないので・・・・・・





三島由紀夫文学が醸し出す官能と心の葛藤を描く寓話
原作三島由紀夫。 オール海外スタッフ&キャストで映画化。
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