召使 | Untitled



召使(’63)イギリス


原作:ロビン・モームの同名小説

監督:ジョセフ・ロージー


主人と召使。 絶対的な上下関係のはずが・・・・・

そのパワーバランスが崩れたとき、終わらぬ悪夢が始まる・・・・・

淀川長治さんの言葉を借りれば

召使が貴族のお坊ちゃんを精神的に食べちゃう話。



結婚するために南米から帰った貴族トニー(ジェームズ・フォックス)が

バレット(ダーク・ボガード)という召使を雇った。

完璧な執事ぶりを示すバレットに、トニーは次第にすべてを任すようになる。

バレットなしでは生きていけなくなっていくトニー。

やがて、二人の間には肉体関係さえ結ばれていく。

しかし、それはすべてバレットの計画通りであった。

身も心もバレットに支配されていくトニー。

彼を待ち受ける運命は破滅しか残っていなかった・・・。



大豪邸の中で繰り広げられる、暗喩に満ちた心理劇。

主人と召使の肉体関係といった核心にふれる描写は

暗にほのめかすだけで、あとは観客の無限の想像力に任せる。

登場人物を中心に回り込むようなカメラ・ワーク。

縦と横の空間を利用した奥行きのある構図。

肖像画や彫像たちが不気味ほどに静かに見守り

壁にかけられた歪んだ鏡が人間たちのエゴイズムを映し出す。

最高級の家具や調度品に囲まれ、悪夢の舞台の幕が開く。



「私はただの召使です。」

トニーの婚約者スーザン(ウェンディ・クレーグ)だけは

最初からこの召使の持つただならぬ雰囲気に危機感を募らせる。

それは、いわゆる女の勘というものだろうか。 その悪い予感は的中してしまう。

バレットの妹と名乗る女ヴェラ(サラ・マイルズ)が使用人として加わることで

貴族階級がさらに侵食され、音を立てて崩れはじめていく・・・・・

ラストの倒錯的な映像に、めまいすら覚えてしまうほど衝撃を受けてしまった。




主人と召使。立場が逆転したとき悪夢が始まる。
不条理、暗澹たる雰囲気、ジョセフ・ロージーの演出が冴える傑作サスペンス!
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