インディア・ソング(’74)
原作:マルグリット・デュラスの同名小説
監督:マルグリット・デュラス
『愛人/ラマン』 の原作者でもあり、アラン・レネの 『二十四時間の情事』 などの
脚本も手がけた、仏領インドシナ(現ベトナム)出身のマルグリット・デュラス。
彼女が筆を置き、映像で表現すると一体どうなるのか・・・・・。
それは、もう・・・・・・異次元の世界です(笑)
1937年、インドのカルカッタ。
フランス大使夫人アンヌ・マリー(デルフィーヌ・セイリグ)は
30代の成熟した女性。彼女は植民地の白人社会では女神のような存在で
娼婦のように男たちに身体を許している。フランス大使館でのパーティの夜
ラホールの元副領事(ミシェル・ロンダール)が招かれる。
噂では、以前副領事の時にハンセン病患者たちに向けて
発砲するという事件を起こし左遷されていたという人物である。
彼は、アンヌ・マリーを見た瞬間から彼女に惹かれる・・・・・。
パーティーが終わり、夜明けを待ちながら気だるくソファにもたれかかる大使夫人。
そして、彼女を取り巻く愛人たち。 上の画の状態のまま10分近くも続く(笑)
これに耐えられるか、眠ってしまうか、何かを感じ取るか・・・・・
静止画のような映像が延々と続き、動いたとしてもあくまで静的な動き。
そして、彼らに寄り添うように、お香の煙がゆらゆらとゆらめく・・・・・
大使館の大広間には大鏡があり、二重に映し出される彼らは
どちらが実像なのか、ともすれば、その存在すら危うい。
さらに、画の中の人物たちは、いっさい言葉を発しない。
聞こえてくるのは、ナレーションともつかぬ、誰だか分からない “オフの声”
その“オフの声”が、最初は女性二人で画の中の人物たちの事を噂話のように話す。
しばらくすると、男性の声になったり、そうかと思ったら画の中の人物の会話に
しかし、画の中の人物と本人の“オフの声”は明らかに一致していない。
アンヌ・マリーと愛人が唇を重ねても、本人の“オフの声”は語りを止めない。
その本人の“オフの声”は、いつ発せられたものなのかも分からない。
“映像” と “言葉” が完全に分断されてしまっているんです。
マルグリット・デュラスは 映像(映画)と言葉(文学)を共存させることなく
敢えて、お互いを喰い合うようなことをやっているんです。
ジル・ドゥルーズというフランスの哲学者は、この映画を
“映画が文学を殺し、文学が映画を殺す” と表現していて
どっちも一回壊してしまって、さて、そこから何が生まれるでしょうか?
みたいなことに挑んでいるようなんですけど・・・・・・
ま、これ以上の事は、映画でご飯食べている人たちにお任せするとして(笑)
とにかく、一筋縄ではいかない作品だけれど、心に深く刻みこまれた異種映画でした。
透き通るような白い肌を真っ赤なドレスで覆ったデルフィーヌ・セイリグが
だるっだるの倦怠感で、虚しい愛の日々を表現しておりました。
「愛人/ラマン」の原作者、マルグリット・デュラスが自ら監督・脚本・原作を手掛けたラブロマンス。
1937年のカルカッタを舞台に、フランス大使夫人の恋愛模様を描く。
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