スカイラブ(’11)
監督:ジュリー・デルピー
“ヌーヴェル・ヴァーグ” という新しい波が世界を席巻してから半世紀
フランス映画界では、新たな “新しい波” が沸き起こっているそうです。
“フレンチ・フィーメイル・ニューウェーブ”
女性監督による女性ならではの視点から描かれる新たなフランス映画。
その一人が、女優としても活躍している ジュリー・デルピー
家族4人でパリ行きの列車に揺られながら、母親のアルベルティーヌは
幼い頃のバカンスへと思いをはせていた。
人工衛星「スカイラブ」墜落目前のニュースが流れる、1979年の夏休み
11歳の彼女は父(エリック・エルモスニーノ)や
母(ジュリー・デルピー)と共にブルターニュ地方を訪れる。
そこには祖母アマンディーヌ(ベルナデット・ラフォン)の誕生日を祝うため
親せき一同が集まっており……。
「映画では何も起こらないシンプルな瞬間こそ重要なことが表現できる」
ジュリー・デルピー
お婆ちゃんの誕生日を祝いに集まった大家族が織りなす人間模様は
大きな事件が起こるわけでも、ドラマチックな展開になるわけでもない。
大きな庭に置かれた大きなテーブルを囲んで “わたし”の親戚と変わらず
大いに喋って、笑って、食べて、飲んで、時には怒ったり、泣いたり・・・・・
生きてるんだ~っ! って強く感じさせてくれるんです。
ブルターニュ地方って、にわか雨が多いんですかね。
夏の陽光が降りそそいでいたかと思ったら、突然雨が降り出してきて
みんなで大皿やグラスや赤ちゃんを抱え、家の中に避難するんですけど
もうひとりのお婆ちゃん(エマニュエル・リヴァ)がいつも居眠りしてるもんだから
お婆ちゃん忘れてきた~っ! って男たちが椅子ごと担いで、にわか雨から救い
「だいじょうぶだった~?」 「なんかよくわからないけど楽しかったわ」
何てことはないシンプルな瞬間に、愛おしくなって泣けてきてしまうんです。
それにしても、この一族は、下ネタが羊の丸焼きよりも大好物で
親も親なら子も子で、あけっぴろげな下ネタで大笑いしている。
これは、いい子に育つわ~(笑)
そうかと思ったら、政治の話でガチで喧嘩しはじめて
「殺すぞっ!」 なんて物騒な言葉まで飛び交い始める。
でも、誰かが何気なくつぶやいた “下ネタ” で政治思想の対立は
一気に吹き飛んでしまう。 一族を固い絆で結ぶ偉大なる下ネタ(笑)
時代が、’70年代後半ということもあって、当時のファッションや音楽、映画
高まりはじめたフェミニズム、政治的背景なんかも織り込まれていて
ジュリー・デルピーの多感な少女時代の想い出が色濃く反映されてるんでしょう。
誕生日を祝ってもらう祖母役が、多くのヌーヴェル・ヴァーグ作品で活躍した
ベルナデット・ラフォン。 もうひとりの祖母(妻の実母?)役が
アラン・レネの 『二十四時間の情事』 や、最近では
ミヒャエル・ハネケの 『愛、アムール』 に出ていたエマニュエル・リヴァ
ベルナデット・ラフォンは残念ながら、この2年後に他界してしまったのですが
こうやって次の世代の女性たちへ、フランス映画が受け継げられていくんですね。
1979年ブルターニュ。ある大家族のノスタルジックな夏の情景を描いた本作は
女優としても知られるジュリー・デルピーの長編第3作目。
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