2022年12月25日掲載
2025年4月27日改訂
静岡県中西部のイチイガシを訪ねました。
<参考リンク>
【静岡市葵区・安東熊野神社】
静岡駅の北に鎮座する小さな神社です。静岡県にお住まいの方から教えていただきました。
イチイガシの成木が5本あり、実生も育っています。
境内はクスノキ・イヌマキが優占で、ケヤキ・エノキ・アラカシ・スダジイ・タブノキ・クロガネモチ・ナギなどが見られました。下層植生が殆ど刈られていて乾燥していますが、安倍川の沖積低地に位置しており、自生かもしれません。
※2025年4月27日写真追加
イチイガシは花を咲かせていました。
情報提供してくださった方が神主さんに尋ねたところ、社叢は奈良時代から基本的にそのままの状態で続いているそうです。
【掛川市・事任(ことのまま)八幡宮】
事任八幡宮の創建年代は不詳ですが、第13代・成務天皇(西暦131~190年)の頃との記録があります。大同2年(西暦807年)、坂上田村麻呂が勅命を奉じて当社を再興し、この年に本宮山より今の地(里宮)に遷座されたそうです。平安時代には、清少納言の枕草子にも登場しています。
道路東側(里宮)の全景。3年ぶりの訪問です。静岡県ふるさとの森自然百選に選定されています。
境内には市指定天然記念物のクスノキ・スギの巨樹があります(2019年12月28日撮影)。
クスノキ。樹高31m・目通り6m・根回り19.3mです(2019年12月28日撮影)。
スギ。樹高36.5m・目通り6.3m・根回り11.2mです。
幹が真っ直ぐに伸びたイチイガシ(2019年12月28日撮影)。
イチイガシは里宮に7本・道路西側の本宮山に1本で計8本ありました。若木も多数見られます。どんぐりは凶作でした。
ミミズバイ(ハイノキ科)。伊豆半島以西の自然度の高い照葉樹林に生育します。伊東市・八幡宮来宮神社や藤枝市・青山八幡宮でもイチイガシと混生していました。
里宮は川沿いの丘に鎮座しており、青山八幡宮と同じような立地です。また、植栽とは考えにくい斜面にもイチイガシが見られたため、自生かもしれません。
スダジイが優占種・イチイガシが第二優占種で、アラカシ・ウラジロガシ・クリ・タブノキ・クスノキ・カゴノキ・ヤブニッケイ?・ミミズバイ・ヤブツバキ・ヒサカキ・サカキ・タラヨウ・ナナミノキ・ヒイラギ・ケヤキ・エノキ・シュロ・イチョウ・スギ・ヒノキ・カヤ・ナギなどが見られました。本宮山はスダジイ林でした。
尚、静岡県中西部の人里周辺はツブラジイ林・竹林・人工林ばかりで、コナラ・クヌギ・アベマキなどを見ません。気候が温暖なためでしょうか?静岡県中西部では薪炭にツブラジイを使っていたのかもしれません。
※2022年12月31日追記
掛川市・雨櫻神社のイチイガシを訪ねました。
【尾崎宮 六所神社(下社)】
雨櫻神社に向かう途中で照葉樹林が目に留まったため、立ち寄りました。
イチイガシが4本ありました!新たな発見です!川沿いの山麓に位置しており、もしかしたら自生かもしれません!植生はスダジイ・アラカシが優占で、ツブラジイもあります。
【尾崎宮 雨櫻神社(上社)】
雨櫻神社。2018年2月以来の訪問です。鳥居左にある大木はクスノキです。
「掛川市巨木・名木ガイドブック」に掲載されているイチイガシ。樹高24m・幹周264cmとのことです。川沿いの湿った場所に生えています。
前回の訪問時には気づきませんでしたが、川の横の丘にもイチイガシが3本ありました。写真中央左の高木がイチイガシで、川沿いの急傾斜地に生えています。ここのイチイガシは自生と判断して間違いなさそうです。
境内はスギ・ヒノキが多いですが、自生と思われる樹種はシラカシ・アラカシ・イチイガシ(4本)・スダジイなどがありました。
どうもイチイガシは、川沿いの丘のような場所に鎮座する神社に生育する傾向があります。しかし、神社以外(撹乱のある場所)ではアラカシばかりでイチイガシは全く見ません。アラカシは萌芽幹になることが多いですが、イチイガシは萌芽幹の個体を殆ど見ません。攪乱地で見ないのは、イチイガシが殆ど萌芽しないことに起因するのかもしれません。