静岡県中部(静岡市・焼津市・藤枝市)のイチイガシを見に行きました。
イチイガシは沖積低地や谷底などの湿潤な肥沃地に自生しますが、社寺に植栽されることもあり、 自生と植栽の区別は地形から判断する必要がありそうです。低地に生育するため開発の影響を受けやすく、まとまったイチイガシ林は全国的にも少なくなっています。
【静岡市葵区】
①津嶋神社
静岡駅北口からバス「大浜麻機線」に乗り、羽高で下車。羽高橋交差点から西へ約250mの場所にあります。
参道沿いにイチイガシが計2本あり、うち1本はかなりの大木です。
「静岡市の巨木」に載っていて、樹高25m・目通り4.5mあるそうです。天然記念物等の指定はありませんが、静岡県内のイチイガシ巨樹としては浜松市天竜区の米沢諏訪神社・水窪小学校、伊豆市の大宮神社の個体と並んで4本の指に入るでしょう。
周囲に障害物が多いですが、幹は真っ直ぐに伸びて綺麗な樹形をしています。境内には他に、カゴノキやナギがありました。
【焼津市】
②林叟院
道路の南東側斜面に比較的若いイチイガシが2,3本あります。
谷の地形になっているため、自生かもしれません。他にはアラカシ、クスノキ、ヤブニッケイ、カゴノキ、ホルトノキ、イヌマキなどが見られました。
③坂本神社
イチイガシの成木1本、若木1本、実生が数本あります。ここはシイ類(ツブラジイ、スダジイ・ツブラジイの中間型)が優占種で、アラカシ、タブノキ、クスノキ、ヤブニッケイ、カゴノキ、ミミズバイなどが混生していました。
【藤枝市】
④子持坂浅間神社
樹高28m・幹周り4.5mのイチイガシの大木があると知りましたが、伐採されて切株になっていました。しかし、境内にはイチイガシの成木が2本現存していました。
写真の階段右側のキヅタに覆われた木がイチイガシです。
⑤子持坂熊野神社
朝比奈川に近い農地の中にある小さな神社です。
イチイガシは計6本(成木5本、若木1本)ありました。他にはアラカシ、タブノキ、クスノキ、カゴノキ、エノキ、モチノキ、クロガネモチ、イヌマキなどがありました。
河川沿いの低地に位置しており、小規模ながらもイチイガシが優占種となっていたことから、かつて広がっていたイチイガシ林の断片と言えそうです!近隣の子持坂浅間神社や青山八幡宮のイチイガシとともに、連続した林を形成していたのかもしれません。
神社の森(鎮守の森)は、古くから神域として崇められ伐採が禁じられてきたため、周囲が開発された中でも辛うじて伐採を免れ、潜在自然植生が残っているのでしょう。青山八幡宮のイチイガシ林に比べると規模は小さいですが、貴重な存在です。
河川沿いの低地は古くから水田や農地に転換されてきたため、このような環境に自生する樹種は開発の影響を強く受けるものと思われます。イチイガシ林が少ないのは、ナラガシワ林が少ないのと同じ理由かもしれません。
御前崎市の比木賀茂神社、浜松市北区の正明寺・細江神社・三ケ日町神明宮、浜松市天竜区、浜名湖周辺などでもイチイガシ林が残存しているようです。静岡県西部のイチイガシもいつか見に行きたいです。