2024年12月3日改訂
 
今年も静岡県中部(藤枝市)のイチイガシを見に行きました。この辺りは何回か訪ねていますが、新たに写真を撮ったので掲載します。
 
※昨年の記事はこちら
【若一王子神社】
社叢は県指定天然記念物です。ここでは藤枝市を北限とするヤマモガシ・カンザブロウノキが見られるのが特徴です。
東側に本殿裏に入る道があります。クスノキ・ツブラジイが優占で、イチイガシ・タブノキ・ヤブニッケイ・サカキ・モチノキ・ミミズバイ・カンザブロウノキ・ヤマモガシ・ムクノキ・イヌマキなどが見られました。イチイガシは本殿裏に2本あるのみで、植栽起源な気がします。
近隣の飽波神社にもツブラジイを優占種とする社叢があります。
 
【青山八幡宮】
静岡県ふるさとの森自然百選に選定されています。本州では貴重なイチイガシの優占林で、植生区分はルリミノキ-イチイガシ群集です。
ツブラジイ(左)とイチイガシ(右)を見上げた様子(2024年11月30日撮影)。
イチイガシは巨樹サイズの個体はないため、林齢100年以下ではないかと思います(2024年11月30日撮影)。
本殿裏手にある境内で最大と思われるイチイガシ(2024年11月30日撮影)。
優占種はイチイガシで、次いでツブラジイが多く、アラカシ・タブノキ・カゴノキ・ヤブニッケイ・バクチノキ・ミミズバイ・ヤマモガシ・ヒメユズリハ・カクレミノ・ヤブツバキ・ヒサカキ・サカキ・イヌマキなどが見られます。植林されたスギ・ヒノキも多いです。明確な階層構造が見られ、湿潤な環境です。
イチイガシ群落は青山八幡宮が東限になると思います。伊豆や房総にもイチイガシは分布しますが、まとまった林はありません。
 
【子持坂熊野神社】
昨年発見した、朝比奈川に近い農地の中にある小さな神社です。
ここにもイチイガシの成木が5本あります。こんなに小さな神社にもイチイガシ林の断片が残っていたことに大変驚きました。鎮守の森の存在意義は大きいと思いました。近隣の子持坂浅間神社にもイチイガシの成木が2本あります。
 
青山八幡宮や子持坂熊野神社の植生を見ると、静岡県中部の沖積低地や山麓部にもかつてはイチイガシ林が存在したのだと思います。この地域では丘陵帯の湿った所でイチイガシ、乾いた所でアラカシ・ツブラジイが極相となるようです。
沢山のどんぐりが落ちていましたが、このような光景を見ると採集して苗木を作って植樹したくなります。イチイガシは現存する天然林が極めて少ないので、静岡県中部で植生を復元する際には青山八幡宮や子持坂熊野神社が貴重な種子採集地となりそうです。