しんしんと――

 

空のずっと高いところ、

澄んだ冷たい大気の中で六花の魔法をかけられ降りてくる。

夜の中、人知れず降りてきては積み重む。

 

しんしんと、

ただ、しんしんと積み重む。

 

 ※

 

「うわっ!」

一夜のうちに一変した世界に、どこかで、誰かが驚きの声を上げた。

夜のうちに静かに積もった雪は、屋根を、道を、街路樹を、街を白一色に変えてしまっていた。

 

 ※

 

ふぅっ! っと、吐いた息までが白い。

これは……、もしかして、わたしの祈りが天へと届いたのだろうか?

 

「真っ白……」

見たくないものを、白が、六花の魔法がすべて覆い隠してくれている。車の往来も途絶えていて、音すらも消し去ったかのような、日常と途絶した静かで穏やかな世界。

 

「綺麗……」

陽が本格的に昇り始めれば、すぐに魔法は解けて日常が戻ってきてしまうのだろうけれど、

でも、あれだけ泣いたのにまだ零れ出ようとする涙がどこかへ行ってしまうまで、

もう少しだけ、このままで――