ひらひらと――

 

空のずっと高いところ、

澄んだ冷たい大気の中で六花の魔法をかけられ降りてくる。

生まれたての、軽やかな純な心のまま降りてくる。

 

ひらひらと、

簡単に落ちてしまわぬよう風に乗りながら、求めてくれる誰かの下まで――

 

「あっ!」

ふと薄暗い空を見上げた誰かが気がついた。

 

ひらひらと、

差し伸べた掌の上に舞い落ちる――

 

「綺麗」

ほんのひととき煌くと六花の魔法は消え去るけども、

確かにそれは差し出した掌の持ち主の心を捉え、物語は動き始める。

 

ひらひらと――

今宵もまた、魔法にかけられた誰かが、寂しい誰かの下へと舞い降りる。

 

                        <photoAC unicさん>