福島県石川町での鉱物採集 | なんだかんだの石集めと与太話

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鉱物を初めて手にしたのは、小学生の時。それからずっと中断。
2011年頃より、やっと暇になったので、また石の世界へと羽ばたき始めたけど。

0.はじめに

 福島県石川町と言えば、、岐阜県苗木地方滋賀県田上地方と並んで「日本三大ペグマタイト鉱物産地」の一つの地としてよく知られている。石川町の地質は、中央から西側で花崗岩質の地層が、東側で変成岩質の地層が分布している。今回はそこの花崗岩質の地層が分布する石川町西部での採集の話。行ったのは5年以上前までで10回以上は行ったでしょうか。

1.石川町では


 石川町での鉱物採集については参考1や2に書かれている。参考1では、歴史民俗資料館新屋敷和久和久観音山を回るコースを紹介している。参考2では歴史民俗資料館の他に猫啼和久観音山を紹介している。

 石川町で鉱物をみたいと思った人は、石川町立歴史民俗資料館(図1の右端の小さい赤丸の位置)へ是非行ってみるべきだ。ここはほとんど鉱物博物館と言ってもいいくらいだ。石川付近で産出したほとんどの石が見られる。以前に産出した、大きな水晶緑柱石長石電気石や希少な希元素鉱物など多くの鉱物を見ることができる。石川町では150種以上の非常に多くの鉱物を産出した。電気石や緑柱石では人の腕程の大きさのものを見ることができる。ただこの産地の緑柱石はいずれも透明感がほとんどないのが残念だ。資料館の上がり口(下足は脱ぐ)右側には、高さ90cmほど、直径50cmほどの黒水晶がどんと置かれていたり、館内では人の大きさほどの長石が置かれている。

    

写真1.正長石(KAlSi3O8,館内にあり、触れることもできる)

 

 くどいようだが、石川町立歴史民俗資料館には是非立ち寄ってみるべきである。石川町歴史民俗資料館ではパンフレット(参考11)を入手できるだけでも価値がある。これは採集にとって非常に参考になる。産出した鉱物写真が多いだけでなく、地質図もあり昔の鉱山跡地がわかるなどする。パンフレットの他に石川でとれた鉱物関連の資料や書籍(参考4~8、11)も入手できる。絶版になっていなければですが。

2.石川町での採集

 石川では鉱山は今は全くなくなってしまった。採集できるところはなかなか見つからない。私有地だったり、鉱山は跡形がほとんどなくなってしまっている。
     

 図1.石川町付近の地図(google mapより、修正引用)


 最初に石川を訪ねたのは、2010年頃。参考1に書かれた飛ヶ作新屋敷辺りだが、2015年頃にそこを訪ねたときには個人所有の敷地内であったようで既に囲いがされていた。

 国道118号沿いの塩ノ平にある採石場入口左側の空き地には、ペグマタイト脈が露出しており、電気石や石榴石などが転がっているが、採集していると採石場の人に注意される。地主さんはその空き地の左側の家だそうだが、留守のことが多いようだ。私が2度伺ってチャイムを鳴らしたが留守だったようで出てこられなかった。

 同じく塩ノ平の工業団地の奥には石がゴロゴロ転がっていたが、今はgoogle mapでみると工場が建ってしまっている。また老人ホーム入口の道沿いの右の法面(のりめん)にはペグマタイトの脈が見られたが、ここは法面が急で登って崩すわけにはいかない。

 実際に自由に採集できるのは、猫啼と和久観音山の第2抗体の前くらいだ。
 猫啼(図1の一番下の赤丸の位置)の産地については参考13が非常に参考になる。猫啼は、近くの宿(井筒屋など)の温泉源となっているらしい。ここは比較的容易に立ち入ることができる。(youtubeでここへ行くのにとんでもないところを使って行った様子が示されていたが、絶句してしまった。下図のA区の文字猫啼の坑口の中間に南北に走る細い道がある(点線で書かれている)。この道を利用し、更に二つを結んだ、一寸下辺りから坑口の方へ入る(地図には書かれていない)道がある。これを利用すると簡単に行ける。)

 猫啼についてはミネラルハンターズ氏のサイト(参考10)をみるとアクアマリンが2008年に採集できたようだが、その後に私は何度か訪れているが黒雲母と、黒水晶と言うより黒石英をたくさんみかけるが採集成果はほとんどない。

     

図2.猫啼付近の地形と地質鉱床図(参考13より)

  採集に適した位置が推測できる。

 和久観音山鉱山(図1の一番左の赤丸の位置)第2抗体では自由に採集ができるが、やっぱりめぼしい物は見つからない。第1抗体は入口が扉で施錠されており、また第3抗体は周囲が金網で囲まれ立入禁止になっている。第1抗体は斜坑で下部に水が貯まり、第3抗体では坑道が地下に深く掘られて、いずれも危険なようでしっかり管理されていて、立ち入るには許可が必要だ。年に何回かは一般にも公開されているようだが、私は一度も行ったことはない。

 ちなみに和久観音山鉱山での巡検の様子が、以下のサイト中の後半にある。

    (→ [千葉県地学教育研究会]の阿武隈巡検(参考15))
 探検家族も行っている。

    (→ こちら )


 石川町のでも採集したこともあるが、いずれの場所でも注意されることが多い。石川では採集場所は人目につきやすい。塩沢地区では花崗岩が真砂土(まさど)化している場所が多く、地滑りで道路が通行止めになっていることもある。採集で土地が荒れて地滑りなんてこともあり得ることだから、注意されることも多いのだと思うが。

 それでも、私が今のところ石川に行くと訪ねる所は猫啼と塩沢などを含め何カ所かある。猫啼や塩沢には友人を案内したことがある。案内した塩沢のひとつは黒江鉱山跡と思うが、ここで友人は緑柱石を採集していて帰りの車の中でそれを言われてびっくりしたことがある。その緑柱石の写真は、鉱物同志会設立30周年の写真集(参考14のp208)に掲載されている。が、私はその実物を見たことがない。その石が採集できた場所は、以前は竹林の中にあったが、2016年頃にはすっかり取り払われていた。

 石川は今では採集に非常に苦労する地域となっている。しかし、上であげた場所ではなく、他にも可能性があるようなのでまたいつか探索しようと思っているが、いつまで続けられるやら。石川町はあまり雪の降らない土地のようで、東北なので寒いけれど、年末でも雪が少ないので、今年の年末には出掛けてみようかと考えている。

 

追記)(23/10/10)

 最近(2023年)の状況を書いたブログは → こちらです。


3.採集できた石たち
 石川で採集した鉱物を紹介する。一部は現金採集品であるが。

 

     

写真2.緑柱石(Beryl、Be3Al2Si6O18、塩沢産)

 淡緑の2カ所、淡緑色部分のサイズ:26mm、11mm

 石を割ったら、割れ飛んだ部分から小さい方が出てきた。

 やっぱり透明感がない。

 

     

写真3.白雲母(KAl2(AlSi3)O10(OH)2)

    六角形が二つくっついた物か

 

     

写真4.白雲母(KAl2(AlSi3)O10(OH)2

 試料長:64mm、厚み:8mm)

 石川では、このような矢羽状(矢筈状とも)のものが

 よく見られる。

 

     
写真5.白雲母(KAl2(AlSi3)O10(OH)2)

     試料長:55mm、厚み:5mm

     

写真6.鉄礬石榴石(Almanndine、Fe3Al2(SiO4)3)

    試料長:11mm

   平べったい感じで、3連晶になった物。

   採石場入口左の広場で採集。

 

     

写真7.鉄礬石榴石(Almanndine、Fe3Al2(SiO4)3)

    試料長(右):22mm

    右は主に24面体の綺麗な面が出た物

    裏面も綺麗な面がある。

 

 
写真8.鉄礬石榴石(Almanndine、Fe3Al2(SiO4)3

    試料長:左22mm,20mm、右55mm)

 石川では、右のような平べったい石榴石をしばしば見かける。

 時には、赤黒く透明感のあるところがあるものも。

     
写真9.鉄電気石(Shorl、NaFe3Al6(BO3)3Si6O18(OH)4

    試料長(左):26mm)

     
写真10.コルンブ石(Columbite、(Fe,Mn)(Nb,Ta)2O6

    試料長:16mm、現金採集品)

     
写真11.サマルスキー石((Y,Ce,U,Fe)3(Nb,Ta,Ti)5O16

      最大長:2mm、現金採集品)

     
写真12.文象(もんしょう)花崗岩

  (サイズ約250mm、庭で敷石にしているので汚れている)

  ペグマタイト産地ではしばしば見られる花崗岩。

  石英と長石がいくつも縞状になっている。


4.参考
1.松原聰,鉱物ウォーキングガイド,p12-16,丸善(2005)
2.松原聰編著,加藤昭他,鉱物観察ガイド,p12-15(2008)
3.松原秀樹,地質調査所月報,v7,p335-348(1956)
4.石川町歴史民俗資料館編,石川町鉱物調査報告書3集
   -塩の平周辺ペグマタイト鉱床産出鉱物報告書-,
    福島県石川町教育委員会(2000)
5.石川町歴史民俗資料館編,石川町鉱物調査報告書4集
 -和久・観音山・入山鉱山ペグマタイト鉱床産出鉱物報告書-,

 福島県石川町教育委員会(2002)
6.三森たか子編,鉱物の里 のぎさわ,野木沢宝物探し研究会(2011年改訂)
7.三森たか子,いしかわの石の物語 改訂三版,石川町教育委員会(2011)
8.福島県石川町町史編集委員会,石川町史 第7巻上,石川町(2011)
9.松原聰,石川の鉱石・鉱物,歴史春秋社(2012)
10.ミネラルハンターズ氏のサイト
  → 福島県希元素ミネラルウォッチングの旅

 氏のサイトは石川での採集では非常に参考になる
 → 福島県石川町野木沢の鉱物

 → 福島県石川町の鉱物

 → 石川町立歴史民俗資料館 「石川の鉱物150展」

 → 2008年 北関東ミネラルウォッチング行
11.石川町・石川町観光物産協会、石川町立歴史民俗資料館,石川の鉱物と岩石
12.石川町の鉱物のいくつかが紹介されている。

 → こちら
13.小関幸治、郷原範造,地質調査所月報,v7,p93-110(1956)

 → こちら
14.山田隆、大島昭夫監修、高橋一郎編集,関東周辺の鉱物,鉱物同志会(2017)

15.千葉県地学教育研究会の阿武隈巡検

 → こちら

  このサイトの後半で和久観音山鉱山の様子が見られる。