福島県 安達太良山、沼尻温泉先での重晶石採集 | なんだかんだの石集めと与太話

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鉱物を初めて手にしたのは、小学生の時。それからずっと中断。
2011年頃より、やっと暇になったので、また石の世界へと羽ばたき始めたけど。

 この産地は、安達太良山の登山道の傍にある。近くに硫黄を採取していた所(沼尻鉱山)があり、付近は硫黄の匂いがプンプンしている。風のないときの採集は危険な感じだ。実際、立ち入り禁止の立て札があったが、立て札は倒れていて、本当に立ち入り禁止なのかなと思ったほどだ。しかし、実際に二酸化硫黄なのか、硫化水素なのかはよくわからないが、ツンと鼻をつく臭いや腐卵臭の臭いの毒性のガスが漂っていて、死亡例もあるらしい。採集の際には、風のある時が良いかと。実際私は風の吹いているときに行った。'(2013年8月)

 産地の案内は、参考1のp102からに示されている。産地には沼尻高原や沼尻温泉を探してから行く。沼尻温泉には、有名な女性アルピニストの故田部井淳子氏が経営したロッジがあった。今は経営は変わったようだが。沼尻温泉を過ぎてからは砂利道を行くが、スキー場を通って行く前の、温泉を過ぎる際に右側に注意書きが有ったが、山に行く人は無視しているようだ。私も無視したが。今はどうなっているかは知らない。

    

 

 スキー場の中を抜けて登山道入口まで乗用車でも比較的楽に行ける。登山道の入口には、かなり多くの車を駐められる。20台以上だろう。

 石の採集には、旧の登山道を行くことになる。谷コースの登山道と言われている。勿論山の方からも行ける。しかし、ある石を採集しようと思ったら、谷コースの登山道を行く必要がある。ロープが張られているので危険を伴う。って言っても登山に危険はつきもののような気がするけど。私が進んだのは、新しい登山道の左脇のちょっと狭い、そのロープが張られた旧の登山道だ。この登山道には、温泉を引いたと思われる20cm以上の鉄の管が通っているのですぐわかる。左は渓谷を眺めながらの道程となる。しかし、左側は深い谷、右は崖となっているので、足を滑らせることがないよう注意する必要がある。道は、石や岩がゴロゴロと転がり、平坦でなく荒れている。しかも道は崖崩れで狭くなっていたり、板で橋が渡してあったりの道になる。この道を使う場合は注意が必要だ。

 話は戻って、旧の登山道を進んで、100m辺りで右側の崖を注意してみると、赤茶けた石ころが転がっているところを見つけることができる。一部の石ころの表面にチカチカと光る、小さい茶褐色透明な結晶が付いた石を見つけられる。菱形の綺麗な茶褐色透明な結晶で、これは鉄明礬石KFe3(SO4)2(OH)6だ。母岩は赤紫色の感じでポロポロと崩れやすい。鉄明礬石は薄い透明な(石英?)膜に覆われていることもある。

 鉄明礬石は、あまり大きな結晶としては産出しない。普通は土状粉状のことも多く、面白くも何ともないものだが、結晶した物もほとんどが小さい。けれどキラキラとしている。2mmもあれば大きい部類だ。群馬鉄山や諏訪鉄山、河津鉱山など硫化鉄を含む鉱床の酸化帯や温泉沈殿物として産する。この石は意外と多くの石に含まれている。参考3には、ここ(沼尻)の鉄明礬石の写真が掲載されている。とにかく鉄明礬石の結晶はキラキラして価値があると思う。


     
     鉄明礬石(KFe3(SO4)2(OH)6

         キラッと光る部分や中央付近の茶褐色透明なところ)

 そこを後にして更に進むと、左遠方に細く小さく、白糸の滝が見える。それを見ながらさらに進む。

     

 

 鉄明礬石の採集場所から20~30分ほど歩くと崖から離れ、谷の中の道を進むと小屋が見え、風景が一変し、草木ひとつ生えていない荒涼とした風景となる。

     

     白糸の滝を過ぎた後の経路、目的地手前

 

       

     温泉に湯を送る。           湯ノ華を採集している

 

      

     採集地遠景

 

     

     小屋の傍からこの通路で対岸に渡る。

 

 小屋の傍には温泉へ運ぶ湯量を調整する湯だまりのようなものがあって、熱いお湯が勢いよく流れる。そこからは少し広くなった谷の中央に湯ノ華を採取する樋が見られる。その中ほどにある橋を渡って対岸に進む。目の前に灰白色に変質した岩肌が見える。岩肌は所々崩れていて、その中を注意してみると白い透明な結晶を見ることができる。重晶石(BaSO4)だ。石を割ると、中には薄い黄色の結晶が含まれている物もある。自然硫黄(S)で、石の中に皮膜状だったり、点々と点在しているものをしばしば目にする。

 

    

    採集場所から小屋の方を振り返る。

 

 また、ここでの白い石ころは、熱で珪化した物と思われるが、鱗珪石(トリジマイト)方珪石(クリストバライト)の混合物なっているらしい。(参考1) よくわからないけれど一応は採集した。

 繰り返し注意しておくが、この付近は硫黄系の(SO2、H2Sなどの有毒)ガスの臭いがプンプンする。有毒のガスが溜まりやすい地形で、死亡事故も以前にあった。なので、風のないときの採集は危険を伴う。十分注意されたい。

 ちなみに尾根コースをとると、この辺りの面白い風景を見ることができ、なかなか楽しめる。Youtubeには沼尻鉱山跡付近の様子があげられている。自分で探してみてください。

 

 危険と書いてきて、一応ここは登山コースにあって、凄い危険なわけではないし、安達太良山に登るとまた楽しいです。

     

     重晶石1(BaSO4)

     

     重晶石1の拡大

 

     

     重晶石2

 

     

     重晶石2の拡大

 

     

     重晶石2の拡大2

 

     
     自然硫黄(S)


     
     自然硫黄2


1.松原聰,フィールド版続鉱物図鑑,丸善(1997)
2.以下のサイトで別ルートで沼尻鉱山へ行く経路が写真入りで紹介されています。

 参考に。→ 乾パンさんのサイト
3.松原聰,宮脇律郎,門馬綱一,鉱物の博物学,p138,秀和システム(2016)