主人公は矢太郎 | むばたまの夜の衣を返してぞ着る

むばたまの夜の衣を返してぞ着る

~いとせめて恋しきときはむばたまの夜の衣を返してぞ着る~
平安時代の歌人小野小町の歌から。
愛しい人にどうしようもなく会いたくてしかたのないときは、
寝間着を裏返して寝るわ
(寝間着を裏返して寝ると恋しい人の夢を見ることができるという説があったそうで)

「宮城野〈ディレクターズカット版)」

製作年2008年 上映時間113分

~お蔵出し映画祭2011~


祝 審査員特別賞受賞 クラッカー

これを観たときにはまだ決まっていなかったが、後日

「お蔵出し映画祭」において「審査員特別賞」を受賞した。

この賞は審査員評価の高かった作品に贈られる賞なのだという。

受賞をきっかけに、

「日本映画専門チャンネル」で放映なんてことがあるといいな。



2011年10月15日(土)

広島県福山市 シネマモード1(事前の情報では2とあったが・・・)


福山はガムラン関係でしばしば訪れた街。

新幹線を降りて駅前に出ると、釣り人の銅像(?)が懐かしい。

ただ、映画館は初めてだったので

途中道に迷ってしまい、道を尋ねながらたどり着いた。



1DAY PASS(1,000円)を首にかけて会場へ・・・。


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主人公は矢太郎だった。


まぎれもなく矢太郎という男の

熱情・純愛・誠実さ・卑屈さ・野心を描いていた。

スタンダード版を初めて観たときに感じた濃密な雰囲気や

「小さな映画館で上映されるマニアックな映画

」といった風情はそのままだったけれど。

同じピースを並べても、

並べ方によってかなり異なる趣の作品が出来上がるのだということを

初めて実感した。

映画を撮り終えたとの仕事、というものについて

全くというほど知らずにいたので、この衝撃は大きい。

スタンダード版とディレクターズカット版がエンディングをはじめてとして

かなり違っていることを両方を観た人に聞いてはいたのだが、

ここまで違うとは驚いた。


そして、両方を観て出た結論。

私はディレクターズカット版の劇場公開とDVD化を熱望する。


だって、

もう一度観たいんだもん(笑)


初めのほうで通路隔てた隣の人が

何度も席を立つし、

鼻息(!)が異様に大きいし・・・

また、その2列ほど前の人は

あろうことかいびきかいて寝てるし!

気が散ってしまったのだった。


そんなこともあって

ちょっと台詞が聞き取れなかった箇所があることも

再度観たい理由の一つ。


もう一つは、

写楽を殺した後、宮城野の元を訪れたときの矢太郎と

「あばよ」と冷たい言葉を残して去っていく矢太郎の心の変化を

もう一度じっくり見たいから。


あと、

気になったことば。

宮城野の台詞

「矢太さん、酒が止まってる」と

「矢太さん、筆が止まってる」

この台詞に関連はあるんだろうか?

「筆が止まってる」は何度も出てくるのだが、

宮城野が話を逸らそうとしているのか、

真に矢太郎に絵を描かせたいと思っているのか

わからずにいる。


初めのほうで、版元と写楽が矢太郎の絵について話すシーンがDC版にはある。

そして、それを立ち聞きする矢太郎とそのことに気づく写楽。

このシーンが矢太郎が写楽に取って代わるという結末の伏線となっている。

このときの二人の表情が印象的だった。


好きなシーンはいくつもある。

黒衣はSD版でも効果的だなと思ったけれど、

DC版ではより効果を上げていると思った。

うつろな表情で歩く矢太郎の足元を照らすところなど特に。


だんまり風のシーンはSD版にもあるけれど、

挿入される場面が違っている。

SD版では取って付けたような感じが否めなかったけれど

DC版では写楽は矢太郎の絵を

矢太郎は写楽の版下を手にしているところから

ストーリーを象徴的に表現しているのだろう。


最も好きなシーンはどこかと言われれば、

ふたりのなれ初めのところだろう。

自分のことを臭くないかと問う宮城野に、

矢太郎は「おれも臭えからわからない」というようなことを言う。

あんな顔してそんなこと言われたら惚れてしまうよ、誰だって・・・。


宮城野の部屋のふすまを開けたら、

写楽の部屋…という回想シーンへの入り方も好きだ。

もう一度ふすまを開けたら

もう一つの結末が出てきそうな気さえしてくる。

そんなゾクゾクするような映画だ。



上映後は監督挨拶があった。

昨年京都で観た友人が

一番初めに送ってきたメールが

「監督イケメン!」だったので楽しみにしていた。

噂にたがわずイケメンだった(笑)

和服が似合って

「しゅっとした」というのが最もぴったり当てはまりそうな気がする。

しかし、端正なのは容姿ばかりではない。

監督の話す日本語が端正なのだった。

こういう美意識の高い監督が作った作品なのだなと改めて思った。



一度書きかけた記事がすべて消えてしまって

気力がなくなりかけたのを

もう一度振り絞って書いたので

どうにもまとまりがつかない(・・;)

でも、

推敲もせずに書き散らしてしまおうっと。

兼好法師みたいに

「あやしうこそものぐるほしけれ」ってね・・・。