7年前にベルト交換修理をしたCDチェンジャーSONY CDP-CX350が不調になりましたので再び修理しました。


■故障状況
・OPEN/CLOSEボタンを押すと扉がオープンするが、CDを載せたトレー(テーブル)が十数秒に一回15枚分ほど左右に回転する現象を繰り返す。
・再生ボタンを押すとテーブルが回転するがディスクをローディングできず再生不可能。
・ディスプレイにTable Errorと表示される事がある。


本機はCDプレーヤーとしては巨大なので極力いじりたくなく半年以上放置していましたが、CDを取り出している最中にテーブルが回転してパネルと扉の間にCDが挟まって1枚割ってしまい、このままではいかんと修理を決意。

■原因追及
ケースを開けて眺めてみました。再生ボタンを押すとテーブルが回転しローディング位置まで回っていきますが、ディスクを挟む白いクランプアームの位置と0.5枚分程わずかにズレがありローディングできないようです。



テーブルがズレて止まった後、手で少し押して正確なローディング位置に合わせてやるとちゃんとローディングして再生することから、再生できない理由はテーブルが止まる位置がズレてしまうためだとわかりました。テーブルが勝手に回ってしまう症状についてはまだわからない。


テーブルを回転させるゴムベルトか歯車、またはブレーキ?が摩耗しバックラッシュが出ているのかと思いましたが、少なくともゴムベルト2本は以前修理した際にSONY純正部品で交換しています。しかし可能性を絞り込むためにまずはゴムベルトを交換してみました。


以前の修理の際に純正ベルトのサイズを測った記憶はあるのですが記録が探し出せません。現在のサイズから推測するとΦ45mmかと思いましたが、以前の記事に「純正品の直径を測ってみると、どちらも汎用品にあるサイズではない」と自分で書いているので汎用品で買えるΦ45mmではないはず。Φ40mmとΦ45mmの2種類を購入しΦ40mmで交換してみました。


Φ40mmだとやはりちょっときつく、若干プーリー軸に負担がかかるかなあ、という感じですが使えます。しかし症状は一切改善しませんで原因がベルトでは無いと確認できました。

本機は一旦テーブルを外して取り付けると電源投入時に自動的にテーブルを回転させて位置を認識するようになっています。その際にテーブルの位置を微調整する機能があったような、とネット上で入手した英文サービスマニュアルを眺めていると、初期化モードと自己診断モードがあるとわかりました。

初期化(ALL ERASE)
CLEARボタンを押しながら電源OFF。電源再投入後、ディスプレイに"ALL ERASE"と表示が出る。

実行してみましたが症状変わらず。登録していたディスクの情報は全部消えます。

自己診断(AGING MODE)
診断モードには各種あるのですが、ここではテーブルエージングモードのみ書きます。

1.電源ONしてOPEN/CLOSEボタンを押し、1番、2番、99番、100番、200番のスリットにCDをセットします。他のスリットにはディスクをセットしないこと。
2.GROUP1とOPEN/CLOSEと+100の3つのボタンを同時に押します。
3.エージングモードに入った場合は再生ボタンと一時停止ボタンのLEDがブリンクします(当方の機種ではEASY PLAYとMEGA CONTROLのLEDもブリンクしました)。

4.再生ボタンを押すと扉が閉まってテーブルが回転し診断動作を開始します(写真は正常動作時で24回動作した表示例)。


5.エラーが出た場合、エラーコードが表示されます。エラーが出ない場合は動作を繰り返すので、適当な所で電源ボタンを押して停止させます。

診断の結果、Err 04が表示されました。サービスマニュアルのコード表によると"No table sensor input"すなわち「テーブルセンサーエラー」であることがわかりました。

テーブルの裏側の板には切れ目があって、そこを赤外線?が抜ける様子を検出することでテーブル位置を認識するようです。


センサー基板はこれで、テーブル裏の切れ目を認識すると思われる凹型のフォトセンサー4個に加えて、


テーブルのスリットの隙間から赤外線を当ててディスクの有無を検出するらしいセンサーもあります。


回路図によるとこの凹型のセンサー部品はRPI-1391という型式です(SONY部品番号 8-749-924-18 IC PHOTO INTERRUPTER RPI-1391(TABLE SENSOR))。型式で検索するとAliExpressでヒットしましたので輸入してみました。発注は10個単位でセンサー全部交換しても4個なのでそんなに要らないと思いましたが背に腹は変えられません。

HongKong K.L.N Electronic Technology Co.,Ltd
https://ja.aliexpress.com/item/1005003630899784.html

10日ほどでRPI-1391が届きました。お値段は10個で1,863円と送料521円で合計2,384円でした。


回路図によるとセンサー基板からの信号はCN507という7pinコネクタに届きます。メイン基板上で探すとこれがCN507です。


テスターで並びを確認すると写真の左側の電解コンデンサーがあるほうが1番ピンで、


1 T.SENS1
2 T.SENS2
3 T.SENS3
4 GND
5 +5V
6 D.SENS
7 T.SENS4

のようになっています。テーブルが回転している間にアナログテスターで電圧を見るとT.SENSは一旦5Vまで振れたあとパルス状の振幅が減衰していくような挙動をしますが、2番センサー(T.SENS2)のみ出力がありませんでしたので、2番が怪しいと検討をつけました。

■修理作業
取り外したセンサー基板です。見やすい基板ですね。センサー2番は真ん中です。



RPI-1391を取り外し、交換しました。5本足なので向きを間違える心配はありません。





元通りに組み立てて動作確認をすると前述のディスク位置を迷うような動きをせず正常にローディングできました。これに気を良くして、ついでにベルトをΦ40mmから新品のΦ45mmに交換し、元通りに組み立てました。

Table Error

????センサーじゃなかったの????

他のセンサーも交換してみましたが、テーブルエラーと迷い回転の症状変わらず。交換直後は動いていたのに、まさか、ベルトか?


ベルトでした。ベルトをΦ40mmに戻すと正常動作に戻りました。今回の故障はエラーコードが表示されたので2番センサー死亡が直接の原因でしたが、サイズオーバーと思われるΦ45mmベルトを付けても同様にテーブルエラーが出るようです。ということは経年でベルトが劣化して緩くなっても出る可能性があります。なお、途中で書いたようにエージングモードにはテーブル以外にもディスクセンサーやローディングのチェックをしたりする各種モードがあり、サービスマニュアルを見る限りローディング位置やテーブルセンサーの微調整を行う方法もあるようです。今回はセンサー部品を交換しただけで調整は不要でしたが、部品交換前に調整をしてしまうと部品交換だけで修理できたはずが迷宮に入ってしまう可能性もあると思います。もし同一症状で修理をされる場合は、今回と同様にまず適切なサイズのベルトに交換し、それでもテーブルエラーが治らないならセンサーを調べて交換してみる手順を取ったほうが無難と思います(その後調べてみると海外サイトにテーブル回転用のベルトはΦ42mm/T1.2だという記述がありました。しかし外した純正ベルトを見るとT1.6に見えます)。

無事元の場所に設置して正常動作に戻りました。


当家ではSPDI/F光出力をSRC2496につないで鳴らしているので本機のアナログ出力を聴くことが無いのですが、今回ブロック図を見たところSONY製のCXD2587QというDSPチップに1bit-DACやフィルター、CDプレーヤー自体のマイコンやコントローラまで全部内蔵されているようで、またもや国産CDプレーヤーが全盛期だったころのSONYの工業生産技術の凄みを感じてしまいました。

本記事を参考にした修理は自己責任でお願いします。
(がんくま)

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