前回に引き続き、リサイクルショップで入手した古いST管ラジオを修理します。


■抵抗、コンデンサー類のチェックと交換
ペーパーコンデンサは小学校の頃に読んだアマチュア無線の製作記事や、古い真空管のアンプなどでオイルコンとして見かけた事があるが、自分の世代では既にセラミックやマイラーが普通になっておりほとんど馴染みのないパーツ。経年で絶縁特性が落ちるのが問題だそうだ。

ペーパーコンデンサの絶縁抵抗(おんにょの真空管オーディオ)
https://65124258.at.webry.info/201608/article_15.html

ああ、シャーシを外した時に埃まみれの飴のようなものがキャビネットの床に付着していたが、あれが溶け落ちたパラフィンか。


シャーシ裏を見ても確かに溶けて床板に触れた跡がある。ペーパーコンデンサは全部交換しよう。


シャーシ上に屹立している、4つの電解コンデンサーA〜Dがまとまったブロックコンデンサーは、容量を測定したところDを除けば一応使えそう。

【ブロックコンデンサーの容量実測値】
表示値→実測値
A 20μF/350V→30.04μF ESR:0.32Ω
B 10μF/350V→17.54μF ESR:1.29Ω
C 1μF/350V→1.33μF ESR:3.2Ω
D 10μF/50V→Leak ESR:0.92Ω


巻線抵抗の数値を読もうと洗剤で汚れを拭ったら表示が消えてしまった。では、と水だけ付けたティッシュで擦ってもかすれてしまう。


テスターで測ってみたところ微妙に抵抗値が増えている傾向があるものの、極端に異常な数値は見られないので抵抗はそのまま使う。


真空管用の高耐圧部品のストックが無いので買い集めるために秋葉原へ。ラジオの部品を買いに秋葉原へ来た、というのは何十年ぶりか。



1950年代の部品は現代のE12系列やE24系列になっている部品と数値が合わないが、数値が厳密な箇所は局発・同調回路くらいなので、回路図を見ながら適当にマージンをとって現代的な数値の部品に置き換えた。ペーパーコンデンサの置換に使う400〜630V耐圧のフィルムコンデンサーは下記で入手できた。

秋月電子
高圧フィルムコンデンサー
緑色のルビコンのメタライズドポリプロピレンコンデンサが中心で、単価は最も安いが種類は少ない。

海神無線
高音質の抵抗やコンデンサーにこだわるオーディオマニアに一目置かれる店。シルバードディップマイカコンデンサは耐圧も高く、自社特注品もあり他店より容量の種類も多いが容量の大きいものは高価。

シオヤ無線三栄電波瀬田無線
茶色の松下製またはFARAD製メタライズドポリエステルフィルムコンデンサーの250〜630V耐圧のものが入手できる。特にシオヤ無線は高周波系の部品に強く、いわゆる昔のラジオ少年が慕った秋葉原の部品屋そのものである。普段オーディオの修理ばかりしているので、今回久々に買い物ができてとても嬉しかった。
瀬田無線 2022年3月末廃業
パーツ販売はラジオデパート地下1Fのゼネラルトランス販売で継続。
シオヤ無線 2023年8月末廃業

千石電商
茶色の東信工業のAC用メタライズドポリエステルフィルムコンデンサー2EMMSSACがある。AC250V耐圧品だがDC630Vで使用可。安価で小型。

若松通商
NTKやシーメンスの400〜630Vフィルムコンデンサーの在庫がある。容量によってはチューブラータイプもあるので元の部品と近い姿の実装を気に掛けるなら良いかも。

マルツ電子
FARAD製の400V〜630Vメタライズドポリエステルフィルムコンデンサーや、500Vマイカコンデンサー、高耐圧セラミックコンデンサーがある。地方からの購入で通販先をまとめたい場合は最も良さそう。

真空管ラジオ修理用の高周波系部品やスピーカーは前述のシオヤ無線の他、ラジオセンター2階の池之谷ラジオ商会(元:内田ラジオ)、菊地無線電機で手に入るみたい。出力トランスは前回書いたように1階の東栄変成器で購入。
菊池無線電機 2025年12月廃業


配線は昔懐かしい空中配線・空中絶縁で、ニッパーで元の部品のリード線を切って取り外し、交換。小学校や中学校の頃は実体配線図を眺めながらラグ板や隣の部品にリード線を絡めて部品を付けていたのを思い出す。


この時代の配線は漠然と絹巻線のイメージだったが実際にはビニール被膜線(単線)が一部に使われている。しかしこの被膜の耐熱性はあまり良くない。はんだも半世紀以上前のもので表面に溶けたパラフィンと埃が混じった汚れが付着しており新しいはんだが乗りにくく、リレークリーナーを綿棒につけて汚れを落としつつ、必要に応じてペーストを使った。


リークでNGだった電解コンデンサー10μF/50Vはuniconのチューブラー型で真空管下に配置を移して新調。


電源トランスの一時側に付いていた0.05μFはAC規格のフィルムコンデンサーECQUL 0.1μF(ECQU2A104ML 秋月電子で10個250円)に交換。aitendoで売っている台湾TENTA社製の275VAC規格のフィルムコンデンサも同様に使える。青いほうは三栄電波で購入したムラタの耐圧2kVセラミックコンデンサ0.0033μF。


整流管の下にある、スピーカーの出力トランスとパラに入っているコンデンサーは回路図では0.003μFだったが実機では0.005μFが入っていた。0.0047μFを付けた。


ボリュームに付いていた100pFのみ適当な手持ちが無かったので容量を測った上で再利用。高電圧がかかる所ではないのだけれど本当に豆粒のような積セラを付ける気になれず。そのうちマイカでも買ってこよう。パディングコンデンサの445pFやIFT内の150pFは動作確認の結果次第で交換判断なのでそのまま。部品が小さくなってすっきりしたな。


【取り外したペーパーコンデンサの容量実測値】
表示値→実測値
0.0001μF(100pF)→94pF
0.00025μF(250pF)→646pF
0.00025μF(250pF)→630pF
0.003μF→0.005μF
0.005μF→0.013μF
0.01μF→0.008μF
0.01μF→0.021μF
0.05μF→0.125μF
0.05μF→0.086μF
0.1μF→0.133μF


切れていたパイロットランプはシオヤ無線で6V0.15Aのものを入手して交換。




同じように真空管機材を修理する方が読んでいたら、言うまでもないことだがトランジスタ回路よりも高電圧なので感電には注意。部品交換中は通電していないだろうが、動作確認中に何十年かぶりに感電した。びっくりしてラジオを落としたりぶつけたりすると壊れる可能性がある。

■いよいよ本格通電
配線をチェックし、まずは整流管KX-12FK以外を挿して通電。ヒーター、パイロットランプも点灯し異常無いのでいよいよ整流管を挿し、+B電圧をモニターしながらスイッチオン。



音が出た!チューニングを回すとラジオ放送も受信できた。おそらく半世紀の間、埃に埋もれていたであろうラジオが元の機能を取り戻した瞬間。IFTやバリコンも生きているし、ボリュームも大丈夫そう、とホッとする。

初回通電時は+B電圧が198〜202V前後と思ったほど上がらず、音も割れていたが、2回目以降は電圧も224V〜231V〜247Vと徐々に上がり、音割れもしなくなった。最初に電圧が低かったのはブロックコンデンサーのリークではないかと思われる。何度か通電しているうちに自己回復したのだと思うが、電圧は結構変動していて265Vになることがある。

放送波は全体の感度こそ低いものの至近局はかなりの大音響。AGC が無いので入感が強い局と弱い局の音量の落差が激しい。それでも夜間は韓国の放送局も聞こえていた。

つづく

真空管ラジオ ナショナル BX-715 修理記(1)
真空管ラジオ ナショナル BX-715 修理記(3)