土手に、
ヘンな女の子がいます。
本格的なカメラを持って、
地面ばかりを撮っているんです。
始め、
アリとか、撮っているのかと、
思ったんですけど、
草なら、草に、
話しかけているんです。
「あなた、いい影しているのね。
撮らせてもらっても
いいかしら?」
草に、そう聞いているんです。
草を撮っているのではなくて、
草の影を
撮っているらしいんです。
ところが、
僕の影に驚きます。
「・・・やっと見つけた」
「何を見つけたんですか?」
「私が結ばれる男(ひと)。
約束なんだって」
いきなりですよ?
でも、
彼女、僕を見てないんです。
僕の影を見ているんです。
「影を見て、わかるんですか?」
「いい。
すごく、いい」
彼女が目を瞠(みは)って、
僕の影に興奮しています。
「何が、いいんですか?」
彼女が、僕の影に、
手を触れたそうにします。
「こんな、いい影、
見たことない」
「影は、みんな、同じでしょ?」
「影が薄い人って、
けっこう、いるのよ」
「その影って、
この影のことじゃないと
思うけど?」
「私は、
影ばかり見てきたから、
わかるの」
実際、
彼女は、僕を見ません。
僕の影だけ見ているんです。
「今日は、
天気がいいから、
濃く映っているだけですよ」
「どうやったら、
こんな、いい影になるの?」
僕は、彼女の影を指さします。
「あなたの影と、同じですよ。
何も変わらない」
「深いわ」
「影に、
深いとか、浅いって、
あるんですか?」
「うらやましい」
「影が、ですか?」
僕は、
影を褒(ほ)められるなんて、
初めてです。
だいたい、
影を褒める人なんて、
いないですよね?
それに、
影を褒められたって、
うれしくないです。
「写真を撮らせてもらっても、
いいですか?」
「影の、ですよね?」
「もう、ドキドキしちゃう」
「影に、ですか?」
「撮っても、いいですか?」
「・・・いいですけど」
彼女は、
カメラを構えて、
僕の影を、
何枚も、何枚も、撮るんです。
ー つづく ー
世界は広いですから、
影が好きな人っているでしょうね![]()
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