僕と、彼女は、
土手に、
並んで、坐っているんですけど、
彼女が見つめているのは、
僕の影です。
彼女は、影が好きなんです。
影が好きなんて女の子、
僕は、初めてです。
そのうえ、
僕の影に
見惚(みほ)れているんです。
「ほかの人の影とは、
ぜんぜん、違う。
いい。
すごく、いい」
でも、
影なんて、
普段、忘れていますよね?
そんなものを
褒(ほ)められたって、
どう応(こた)えたらいいのか、
とまどいます。
「さっき、
過去、現在、未来って、
言ったでしょ?」
「どうして、
誰も、
文句を言わないのかしら?」
「文句って?」
「勝手に、
過去にされたり、
未来に、
投げ込まれたりするでしょ?」
「勝手に?」
「誰が、
過去にしていいって
言ったのよね?
あなたの影だって、
どんどん薄くなって、
消えちゃうのよ?」
「日が暮れれば、ね」
「だから、
写真に撮るんだけど。
でも、
私たちだって、
歳を取ったり、
死んだりするの。
私、
納得いかないのよね」
カメラを膝の上に、
抱えて、
つぶやきます。
「さっきの、
過去、現在、未来の話だけど、
僕は、
そう、感じないんだ」
「でしょ?
でしょ? でしょ?」
「それだけで、わかるの?」
彼女が、
僕の影を指さします。
「だって、
そんな影だもの」
「幼い頃は、不安だった。
友だちが、
平気で、遊んでいるのが、
信じられなかった。
僕は、遊べなかった。
現実が、
信じられなかったんだ」
「あー、やっぱりね。
そうか・・・そうなのね」
僕の話に、
うなずいてくれる人なんて、
初めてです。
「本当に、わかるの?」
「私たちって、
あなた以外よ?
この空間の、中だけなのよ。
ヘンじゃない?
そんなんで、いいのかしら?」
僕の方が、わかりません。
「いいのかしら?って」
「なんか、
捕まった虫が、
ビニール袋に、
入れられているみたいでしょ?」
「そうかな?」
「ビニール袋に入れられて、
振り回されているみたい」
「そんなに?」
「あなたこそ、
どう、
現実が信じられなかったの?」
「逆じゃないかな?
過去、現在、未来って、
流れて行くとは、
思えないんだ。
今、
無くなるみたいな・・・」
彼女は、
影を見つめて、
僕の話を
聞いているんです。
ー つづく ー
地球は、
自転して、
公転しているので、
大気圏というビニール袋に、
入れられて、
振り回されているって
ことでしょうか![]()
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