ひとつの心って、
言われて、喜んだんですけど、
背中は、
くっついたままです。
このままじゃ、仕事にも行けません。
「で?
どうなるの?」
「これまで、
僕らが身体だったのは、
他人(ひと)が見ている世界の中に
いたからです。
物が、
物に見えるのも、
他人(ひと)が見ている世界の中だからです」
彼が言っていることが、
さっぱり、わかりません。
「でも、
私たちって身体でしょ?」
「言葉です」
「どうして言葉なの?」
「意味だからです」
意味が、わかりません。
「物を、
物だと思うから、
意味がわからないんです」
「だったら、
背中がくっついている私たちは、
どんな意味なの?」
「ですから、ひとつの心です。
これまで、
僕らは、
僕らの意味を見失っていたんです。
自分たちを、
物だと見ていたからです。
身体ってことですけど」
「私、
病院で、
リハビリの仕事をしているんだけど、
私たちが身体じゃなかったら、
それこそ、
私に意味がないわ」
「でも、
僕らを身体だと見ている限りは、
僕らは、
ひとつには、なれません。
ひとつじゃないって、
意味が、
他人(ひと)ってことなんです。
他人(ひと)が見ている世界って、
ひとつじゃないって世界なんです」
「ひとつになるって、
具体的には、どういうことなの?」
「僕たち、
今、
背中あわせで、
ひとつになっているじゃないですか。
他人(ひと)が見ている世界から
解放されて、
一緒にいるんです」
「この部屋から出られなくても?」
だって、
背中がぴったりくっついて、
ブラもつけられないんです。
外になんか出られないでしょ?
「あなたも言葉だって、
わかれば、
きっと、
僕らは自由になれますよ。
この物質界からってことですけど」
「私は、
この部屋から出られれば、いいんだけど?
でも、
少なくても、
明日のトイレ問題だけは解決したいわね。
解決しないと困るからね」
背中あわせで、
便座には座れないですからね。
オシッコなら、
浴室でできますけど、
ウンチはムリです。
背中あわせで、
ウンチするなんて、
絶対にイヤです。
ー つづく ー
背中あわせで、
ウンチは、したくないですね![]()
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