世の中には、
風呂掃除だけは、苦手って、
いう人がいます。
カビがあるからです。
掃除すると、
身体に悪いと思っているんです。
カビの菌を吸い込むからです。
それで、
僕のような掃除屋に依頼するんです。
今日も、
依頼主さんが、
風呂場の黒ずんだカビを見せて、
忌々(いまいま)しそうに、
顔を顰(しか)めて、
「カビなんて、
なんで、あるのかしら?
いらないわよね」
って、吐き捨てると、
「いるわよ」
って答えた人がいたんです。
見ると、
ものスゴい美人です。
全裸です。
僕は、あわてて、
「お風呂ですか?」って聞いたんです。
裸だから、です。
依頼主さんの娘さんが、
これから掃除するのに、
風呂に入るのか?と思ったんです。
ところが、50歳くらいの依頼主さんが、
「お風呂ですよ?」
って答えるんです。
依頼主さんには、
全裸の美しい娘さんが、
見えていないんです。
そこへ、
風が吹き込みます。
風の精霊です。
「花の精霊よ。
頼みたいことがあるって言うから、
連れて来たの」
「今、仕事中だよ」
花の精霊が、依頼主さんに話します。
「もし、
この子たちが、いなかったら、
花は、なかったわ。
土を作ってくれたのよ?」
たぶん、
この子たちって、カビのことです。
微生物です。
地球に、土があるのは、
微生物たちのお蔭らしいです。
花の精霊は、
浴槽の縁に腰かけると、
なぜか、
脚を開きます。
僕に、
女性器を見せるんです。
「私たちの世話をしてくれる子がいるのよ。
その子が、死のうとしているの。
助けてあげて?」
指で、
女性器を開いて、見せながら、
そんな話をするんです。
普通、
そんなことは、しないですよね?
それも、
スゴい美人なんです。
M字に開いた脚も、
キレイです。
「今から、掃除するんです。
そんなところを見せてくれたからって、
行きませんよ?」
「何を見てるの?」
聞いたのは、依頼主さんです。
僕が浴槽の縁を、顔を真っ赤にして、
見つめているからです。
僕は、気づきます。
「あっ、蘭の花だ」
女性器が、蘭の花そっくりです。
「じゃ、M字に開いた脚って、
葉っぱかな?」
「蘭の花? 葉っぱ?」
依頼主さんは、不思議がります。
花の精霊は、細面の美人です。
女性器を、指で、
いじります。
「お願い? 来て?」
でも、
そんなことをしながら、
「来て?」って言われたら、
どう考えたって、そういうことですよね?
ー つづく ー
そういうことですよね