息子のお世話を一人でしなければならない日に、ブログ記事を2回以上更新する難しさ。
昼間も仕事があると、あとは夜しかないんだけど、まぁ睡魔に勝てないよね…
と言いつつ、今夜もお送りします。
【in the Dark】第29話です。
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#29 夢ならよかった
父が、帰宅しました。
しばらくぶりに顔を合わせた父に、いつもの軽快さはなく、さすがに憔悴しきっている様子でした。
生きて帰ってきやがったな、こいつ。
…正直、顔を見た瞬間は、そう感じました。
『本当に、申し訳ない』
だからかな、土下座する勢いでそう言われても、なんにも心に響かなくてね。
『もう、死のうと思って…海まで行ったけど…死ねなかった』
でしょうね、そうでしょう。
言ってるだけで、そんな気なんかなかったでしょう。
まぁ、もしかしたら本当に死ぬかもしれないって、ちょっとだけ思ったけど。
『まぁ、死ななくてよかったんじゃない?』
まだ体内に残ったアルコールが、この時ばかりはいい仕事をしてくれ、事態の深刻さには全くそぐわない軽さで、そう言えました。
両親は、驚いてたけど。
多分このときは、酔いと眠気もあって、早く話を終わらせたかったんだと思います。
あとは、現実逃避…かな。
一通り話に区切りがついた後は、すぐベッドに倒れこみ、すぐ眠れたんです。
で、翌朝…
《夢だよね?》
二日酔いでぼんやりとした頭の中で、思い出すのは父の憔悴しきった顔と、母の怒りをとっくに通り越した呆れの表情。
…いや、夢じゃないんだ。
私、実家に戻るつもりはなかったけど、もう、ここに泊まりにくること、できなくなるんだ。
窓から見える海、好きだったんだけどな。
歩いてすぐに行ける海。大好きな海。
このベッドで、毎日のように泣きながら眠った日々もあったな…
あの頃よりは、きっと私も強くなってるはずだから、何とかなるかな?
この部屋の荷物、新しい宿舎に入るかな?
…無理だな。
片付けなきゃ。
父は、これからどうするんだろう。
とりあえず、死ななくてよかったけど。
だけど、もう会いたくない。
こんな風に二度も家庭を壊したのが、よりによって血の繋がった父親だなんて。
私、こんなしょうもない、愚かな人間の血を引いてるんだな…
そこからは、どうやっても逃げられないんだ。
私が働いていれば、金銭的には、何とか母と二人で暮らすこともできる。
精神的にもつかどうかは、謎だけど。
ていうか、こんな形で住む場所を追われるなんて、さすがに母が可哀想すぎる…
しばらくは、何とか私が支えなきゃ。
キラキラ陽射しが差し込む部屋で、いろんなことを思い出し、涙が止まらない日曜の朝でした。
〜第30話につづく〜