高校卒業と同時に就職、独り暮らしが始まってすぐに買ったのはテレビ。SONY製の13インチのブラウン管テレビに初任給の手取りと同額の75,000円を支払った記憶がある。 

今に比べるとなんて高い買い物だったことか(否、なんと驚きの低賃金か!)。

でも、ネットもスマホも何もないバブル前の1983年、情報源はテレビ、ラジオ、雑誌くらいの時代。とにかくテレビがなけりゃ何も始まらないって感じだった。


一番の愉しみは音楽番組。

レッツゴーヤング、紅白歌のベストテン(後のザ・トップテン)、夜のヒットスタジオ、ザ・ベストテン、ミュージック・フェア等々、当時はさまざまな音楽番組が放送されていたが、それらは歌謡曲中心でロックバンドが出演するのは稀。

関東圏ではTVKなんかでFighting 80’Sって番組があって、モッズ、ARB、アナーキー、ルースターズ、RCサクセション、etc...と、自分の好きなロックバンドが次々登場する番組があったらしいが、当時はまだテレビ東京系列のテレビ局すらなかった北海道。それでも小林克也氏が司会を務める有名番組のベストヒットU.S.Aは放送されていたが、マイケル・ジャクソンのスリラーなんかが主流の時代に自分の嗜好に合ったロックバンドが登場することはほぼなかったはず。

そんな時に突如深夜枠に登場したのがミュージックトマトジャパン、通称ミュートマジャパン!マイケル富岡のDJで日本のロックバンドのPV、MVが紹介される30分の番組で、洋楽より邦楽派の自分にとっては、まさに待ってました!的な番組の登場だった。

毎週、かかさずビデオに録画し(番組が始まる頃にはビデオデッキも購入していた!)、気に入った曲をそれこそビデオテープが伸びてしまうほどに、繰り返し、繰り返し、観ていたっけ。

今回は、そんな中から今でも記憶に残っているPV、MVをいくつか紹介することに。


■摩天楼ブルース/東京JAP

あの柴田恭兵も在籍していたロックンロール劇団ミスタースリムカンパニーのメンバーで結成されたバンドということと、見た目もあってクールス的なロカビリー、ロックンロールな曲を想像していた(だってデビューシングルのタイトルはギブミー・チョコレートですよ!)が、あまりのメロウさに驚いた一曲。人気ドラマの「少女に何が起こったか」の主題歌ということもあってヒットしたはず。

ドラムはバンド解散後にDJや音楽番組のMCとして人気となった赤坂泰彦。

マイケル富岡のDJも聴けるミュートマver↓



■TOKYO JUNK TOWN/THE BOTS

こちらは見た目もサウンドも正真正銘のロカビリーバンドのTHE BOTS(バッツ)。

ロカビリーバンドとしては珍しく、メジャーなロック雑誌でもかなりプッシュされていたのは、案外ボーカルジミー倉田の端正な顔立ちがあってのことだったからかも?

ストレイ・キャッツよろしくな3ピースバンドであるものの、パンクにも近しい衣装とサウンドでパンカビリーなんて呼ばれ方もしていました。

バンド解散後にリリースされたジミー倉田のアルバムジャケットがやけにカッコよかったが買うまでには至らず。

マイケル冨岡MCverのPVは見つけられず・・・



■ROCK TRAIN/THE SHAKES

黒木伸一、厚二の兄弟を中心に結成されたロックン・ロールバンド。

当時はビート・ロック系のバンドとして紹介されることが多く、自分もそんなところが気になって手に入れたデビューアルバムのオープニング曲がこのROCK TRAIN。

ROCK TRAINに乗る前は 

まるで死んでる男だった
欲しいものが何かもわからず 

言いたいことも言えなかった

そんな俺の耳元に飛び込んできたRock’n’Roll
そいつは俺にこう言った 

次はお前、お前がやるんだ
Here comes the rock train!

痺れた。



■気まぐれロメオ/THE PRIVATES

このバンドもTHE SHAKES同様ビート・ロックのカテゴリーで紹介されることが多かったが、どちらかというとR&Bの匂いもするオーソドックスなロックン・ロールバンドの印象が強いのだが、メジャーでのデビュー曲”君が好きだから”とこの”気まぐれロメオ”はポップさが際立っている良曲。

インディーズながら現在もほぼ当時のメンバーのまま活動を続けているのが素晴らしい。


↓これもマイケル富岡MC入りver見当たらず…



■VISITOR/ECHOES

辻仁成率いるエコーズのファーストアルバムに収めらたれこの曲は、意外にもシングルとしてはリリースされていない。にも関わらずPVが作られたのは、いじめを題材にしたこの曲に強い思い入れがあったからなのか。


このバンドを支持し続けたのはビートニク系の作家に影響されていたであろう、他のバンドとは少し違った視点の歌詞に依るところも大きいが、実は辻仁成が自分と同じ高校の出身ということもあったことは否定できないな。

↓そんなエコーズのことは数年前のブログでも紹介



■次の汽車に乗って/Be Modern

当時住んでいた田舎町からまさか同じ年代のバンドがデビューするとは思いもよらなかった。ザ・モッズ辺りのバンドのフォロワーとしては正統な部類であろうサウンドは、この彼らのデビュー曲でも感じ取れるはず。

デビュー当初の彼らのPVには故郷の街の風景がよく登場していたのは、同じ街に住む自分にとってはなんだがとても嬉しかった。

彼らのデビューアルバム、とりわけこの次の汽車に乗っては、現在の自分を構成しているロックナンバーの中の紛れもない一曲だ。

↓ブログを始めてすぐに彼らとの出会いを語ってた



■もォやだ!/BARBEE BOYS

まったく前情報なし、ミュートマジャパンで出会った一曲。このPVでの杏子とKONTAのステージでの立ち振る舞いの虜になり、すぐにLPを買いに出かけた思い出の曲。
その後大人気バンドになるも、自分はこの一枚だけで充分だった。

ベースのエンリケが最近ストリー・ビーツの正式メンバーとして加入したのは嬉しいニュースだ。



■ONE STEP/PEARL

ボーカルのSHO-TA(田村直美)を中心にした男女2名づつのロックバンドのデビューアルバムのラストに収録されていた曲で、SHO-TAの声とイントロと間奏で聴くことができるギターの音が胸に突き刺さる名曲だ。

なのに、なぜかレコードを購入しなかったのは、多分、これ以外の曲に気にいる曲はないだろうと勝手な思い込みがあったからだろう。

再結成PEARLにはあのカーマイン・アピスが正式ドラマーとして加入したのは驚きだった。



■ラストダンス/本田泰章

本田泰章8枚目のシングルのPVが気に入り、日に何度も繰り返し見ていたのは、デヴィッド・シルビアンばりの粘りのある本田泰章の声に魅了されてでも、PVに登場する外人の女性と本田泰章のミスマッチなカップルぶりが気に入ってたからでもなく、メロディの心地よさが当時の自分にはまったからこそだろう。

つい先日、35年以上の時を経てこの曲の12インチシングルを見つけ購入。やっぱりこの曲自体が好きだったんだと再認識。



まだ20世紀だったあの頃から35年以上も過ぎ、21世紀も既に20数年も経てしまった2023年の現在では、週一の深夜番組を待たずとも気になる曲があればYouTubeなんかでPVでもなんでも好き放題、見放題というところだが、どんな曲に、PVに出会えるかわからないドキドキやワクワク感を味わえたあの頃もよかったと思えるのは、若かりし頃を思い出してノスタルジックな気分に浸っているってだけのことではなさそうだ。


ドキドキやワクワク感を味わえる音楽との出会い方が今でもまだどこかにあるはずで、いつかまたそんな出会いを味わいたいと願わずにはいられない休日の午後なのである。


今週も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。