悲壮感を漂わせない難病映画 「We Live In Time この時を生きて」を観て | パンクフロイドのブログ

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We Live In Time この時を生きて 公式サイト

 

映画.comより

新進気鋭のシェフであるアルムートと、離婚して失意の底にいたトビアスは、運命的な出会いを果たし恋に落ちる。自由奔放なアルムートと慎重派のトビアスは幾度もの危機を乗り越えながら、やがて一緒に暮らしはじめ、娘が生まれ、家族としての絆を深めていく。そんなある日、自分の余命がわずかであることを知ったアルムートは、トビアスに驚きの決意を告げる。

 

製作:イギリス フランス

監督:ジョン・クローリー

脚本:ニック・ペイン

撮影:スチュワート・ベントリー

美術:アリス・ノーミントン

音楽:ブライス・デスナー

出演:フローレンス・ピュー アンドリュー・ガーフィルド グレース・デラニー

2025年6月6日公開

 

本来余命いくばくもない難病ものは苦手で食指が動かないのですが、3つの理由で観ようと思いました。

 

①「ブルックリン」を手掛けたジョン・クローリー監督の最新作であること

②フローレンス・ピューが主役のひとりであること

③事前情報で結構笑える場面があると聞いたこと

 

※記事ではヒロインの結末に触れていますのでご注意ください

 

本作は意図的に時間軸をバラバラにしたことで、定番な展開で退屈になりがちな話に変化をつけ、思わぬ効果も生んでいます。例えば、アルムートの癌が発覚して間もなく、トビアスが離婚届にサインをしようとするのでギョッとなります。その後、彼がコンビニにペンを買いに行った帰りに事故に遭い、病院の待合室でのアルムートとの会話から、「そういうことね」と作り手に一杯食わされニヤリとさせられます。

 

また、アルムートの難産の場面をかなり後に持ってきたことによって、出産することに難色を示していた彼女が、癌の発症を契機に心境の変化が起き、時系列を変化させたことによって、料理コンテストを通してその苦労も実を結んだことが観客にも直に伝わってきました。

 

他にも二人にとって大事なイベントが重なったことで、「まだ正式に結婚していなかったのかよ」とツッコミたくなる件も含め、観る者を驚かせる意味においては、時系列通りに描かなかったことのメリットは多かったです。

 

しっかり者のアルムートに比べ、トビアスはちょいちょいボンクラな面が窺えます。でも、癌に罹った彼女に対しては寧ろ正論を吐き、逆にアルムートは時折駄々っ子の様な振る舞いを見せます。その点も彼女が決して完璧な人間でなく、人間味が感じられて好ましかったです。

 

私のような天邪鬼は、こうした難病ものを悲壮感溢れるような描き方をされると醒めてしまうのですが、この映画は身内に不幸が起きたとしても、あくまで日常の延長線上の距離感で自然に接しているのがいい。最後もアルムートの死を見せず、残された夫と娘の日常の風景を見せてあっさり終わる点も、却って深い余韻が残り、監督のセンスの良さを感じさせました。