ジェームズ・キャグニー演じるマザコン・ギャングが出色 「白熱」を観て | パンクフロイドのブログ

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シネマヴェーラ渋谷

ラオール・ウォルシュ・レトロスペクティブ ウオルシュを観て死ね! より

 

製作年:1949年

製作:アメリカ

監督:ラオール・ウォルシュ

脚本:アイヴァン・ゴフ ベン・ロバーツ

原作:ヴァージニア・ケロッグ

撮影:シドニー・ヒコックス

美術:エドワード・キャレラ

音楽:マックス・スタイナー

出演:ジェームズ・キャグニー ヴァージニア・メイヨ

         エドモンド・オブライエン フレッド・クラーク

1952年12月27日公開

 

凶悪なコディ・ジャレット(ジェームズ・キャグニー)率いるギャング団が、列車を襲撃し乗務員を殺して現金を強奪しました。コディは捜査が自身に及ぶと察知し、同じ日に遠隔地で起きた刑の軽い事件の犯人として自首し、2年の懲役を言い渡されます。コディは収監されますが、その一方で、自首によってアリバイを得るという策のおかげで強盗殺人の重罪を逃れます。

 

コディは母親のマー・ジャレット(マーガレット・ワイチャーリイ)に溺愛されて育ったため、マザコンのサディストに成長しました。コディの妻のヴァーナ(ヴァージニア・メイヨ)はそんな夫に愛想を尽かし、コディの右腕であるビッグ・エド(スティーヴ・コクラン)と姦通するようになっていました。

 

列車強盗をコディ一味の仕業と見る捜査当局は、潜入捜査官のファロン(エドモンド・オブライエン)を囚人に偽装させて刑務所に送り、コディと同房に置いて真相を探り出そうとします。一方、ビッグ・エドは刑務所内の手下を使って、事故を装いコディを殺そうとしますが、ファロンの機転で阻止されます。コディはファロンの正体を知らぬまま強く信頼するようになります。

 

そんな折、コディに訃報が届きます。息子の留守にギャング団を束ねていたマー・ジャレットが、殺されたのでした。エドはコディを裏切り母殺しに荷担したヴァーナと共に、ギャング団の頭目となっていました。コディは復讐を誓い、仲間を集めて人質を取り刑務所から集団脱走し、ファロンも同行する羽目になります。コディはエドを殺し、ヴァーナを脅して自分の元に戻らせると、新たな仲間たちと共に人里離れたアジトで現金強奪計画の準備に取りかかるのですが・・・。

 

冒頭の列車強盗からコディ一味の残忍さが如実に表れ、ジェームズ・キャグニーの生きのよいギャングぶりに魅せられる映画です。疑い深く、怒りっぽいのはともかく、狂人の血統にあり、頭痛に悩まされ発狂寸前の一歩手前の状態にありながら、マザコンの気があるキャラクターはなかなか見られません。

 

彼の周囲にいる人物も、息子の悪事を容認するどころか、奨励援助するような母親、物欲が激しく夫の仲間とも平気で浮気する女房など、ロクでもない連中ばかり。コディの妻ヴァーナを演じるヴァージニア・メイヨは、「虹を掴む男」と「ヒット・パレード」くらいしか観ていませんが、こんな蓮っ葉な性悪女も演じるのかとちょっと驚きました。

 

犯罪自体よりも冷酷で非情な人間模様が見もので、そこに暴力が加わることによって、無鉄砲で凶悪でありながら愛嬌のあるジェームズ・キャグニーの存在感も際立ってきます。勿論、コディを捕らえるために刑務所に入り、昵懇の関係になるまでの潜入捜査官ファロンによる人間関係の築き方も十分面白いですが、潜入捜査もの特有のいつ正体がばれるかどうかのスリルとサスペンスがもう少し欲しかった気もします。

 

最後はマザコンの悪党に相応しい派手な終わり方を見せます。悪党でありながらどこか憎めないジェームズ・キャグニーらしい散り方でした。