ラピュタ阿佐ヶ谷
製作:渡辺プロダクション
監督:前田陽一
脚本:石松愛弘 前田陽一
潤色:鴨下信一
撮影:梁井潤
美術:樋口幸男
音楽:山本直純
出演:堺正章 いかりや長介 なべおさみ 吉沢京子 范文雀 紀比呂子
1971年4月29日公開
城南大学に逆田(堺正章)が新入生として入学してきます。彼は早速応援団の入部の勧誘を受けますが、坊主にされるのが嫌で、なし崩しにヤスオ(田辺靖雄)をリーダーとする軽音楽部に入部します。
そんなある日、鍋山団長(なべおさみ)に引率された応援団は、部費の資金調達のため、箱根小涌園にボーイのアルバイトに出かけて行きます。そんなことは露知らずに、軽音楽部の部員たちも、演奏のアルバイトで箱根小涌園に向かいます。その結果、両者はホテルで鉢合わせして、事ある毎に反目し合います。
また、応援団はバイトの合間に発声練習をしようとしたところ、さゆり(范文雀)を主将とする西北大学の空手部女性部員と場所を巡って揉め、鍋山が怪我をする羽目に。更に長田巡査(いかりや長介)が部活のしごきと勘違いしたため、更に面倒なことに巻き込まれます。
そんな騒動の中で、五十嵐(平田昭彦)が、佐藤(大泉滉)、ひとみ(紀比呂子)らを連れてホテルの迎賓館へやってきます。そのホテルで五十嵐は大規模な宴会を主催し、城南大学のOBと知った鍋山は感激し、彼の新たな国家造りに心酔します。一方逆田は、美しいひとみに一目惚れし、彼女からのお誘いに舞い上がります。
やがて、五十嵐は自身の理想の実現に向けて、ホテルを本拠にして日本からの独立を宣言。鍋山も五十嵐の理想実現に共鳴し協力しようとします。その一方で、五十嵐一党は秘かにホテルに爆弾を仕掛け、実力行使の機会を窺うのですが・・・。
本作は大学の硬派な応援団と軟派な音楽部員の対立軸で物語が進んでいくかと思いきや、双方の部員たちが箱根小涌園でアルバイトしながら、五十嵐を始めとする四人組と関わっていくところから、話が徐々に脱線していきます。この方向のズレを楽しめるかどうかで、評価が分かれそうな作品でもあります。
ホテルを占拠し箱根を企てる辺りは、60年代末の左翼運動の名残りがあり、時代を反映しています。尤も、五十嵐を始めとする四人組のイカれた行動と彼らの正体を知るとズッこけますが、前田陽一がフィリップ・ド・ブロカの「まぼろしの市街戦」を意識しているようにも見受けられます。
特に平田昭彦による今までに見せたことのない弾けた芝居が見もの。私はてっきり堺正章主演の映画と思い込んでいましたが、実際に観ると応援団長のなべおさみがだいぶ話を転がしていきます。
ナベプロ主導の映画に相応しく、所属タレントもかなり出演しています。マチャアキがステージで「さらば恋人」を歌うほかにも、布施明(そう言えば1970年前後の歌番組で布施が歌う直前に堺正章がフセェ、クセェというしょうもないギャグを飛ばしていたのを思い出しました)、ゴールデンハーフの歌う場面も見られました。
個人的には子供の頃にテレビでよく目にしていた女優、「アテンション・プリーズ」の紀比呂子、「サインはV」の范文雀、「柔道一直線」の吉沢京子を再び拝める楽しみがありました。また、ほんの僅かな出演でしたが、山東昭子が美人女優であることを改めて認識しました。
箱根小涌園の周辺には、富士山をバックに絵になる自然が多くあり、観光をPRするタイアップ映画としては良かったと思います。ただし、爆弾によって占拠される設定は、ホテル側としてメリットがあったかどうかは微妙でしたね(笑)。