欲の皮の突っ張った者たちがあの手この手で観光客を誘致しようとする「ちんころ海女っこ」を観て | パンクフロイドのブログ

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ラピュタ阿佐ヶ谷

前田陽一のマジメ精神喜劇ぱらだいす より

 

製作:松竹

監督:前田陽一

脚本:石堂淑朗 前田陽一

原案:富永一朗

撮影:小原治夫

美術:佐藤公信

音楽:山本直純

出演:中村晃子 ホキ徳田 扇町京子 春川ますみ 南道郎 左卜全

1965年6月26日公開

 

昔、江戸の罪人が流されてきたという為朝島で、助徳(南道郎)は観光会長を兼ねながら海流荘という旅館を経営しています。彼はトップレスの海女の巨大な看板を建てて、観光客を誘致することで為朝島を日本のハワイにしようと目論んでいました。島の村長やストリップ小屋「人魚館」の経営者(江幡高志)も助徳の計画に乗り気な一方、島の重鎮の大納言(浜村純)は海女たちの意見を汲んで反対に回っていました。

 

助徳は海女に海中レビューをさせて観光客を呼び込もうとしますが、本職の海女たちに拒絶されます。いずれ助徳の後妻に収まろうとする腹積もりのショウ子(ホキ徳田)は、彼の苦境を見かね、ストリッパーたちに海女の格好をさせて見世物にすることを考えます。

 

一方、ショウ子の妹・お玉(中村晃子)は、温泉の試掘に夢中になっている父の伍作(左卜全)の生計を助けるため海女となって働いていました。彼女は村の若者の竜一(加藤正)に惚れられつつ、このまま海女として働くことに疑問を抱いていました。

 

海女集落には昔からのしきたりで、妊婦や“月のモノ”の女達は自発的に“他火小屋”という小屋に入ることになっていました。お玉もそのしきたりに従い、他火小屋で一夜を過ごしますが、その際に竜一が夜這いを仕掛けたことで彼に失望します。彼女は大納言の屋敷に逃げ込むものの、そこでも大納言に夜這いをかけられ、更にこの漁村に居ることに嫌気が差します。

 

そんな折、有名女優の春本ます江(春川ますみ)が別荘を買いに来島します。島はにわかに活気づき、海中レビューを実行するため、彼女はストリッパーや海女の演技指導にあたります。その頃、お玉にフラれた竜一は、その腹いせに助徳の本妻とデキてしまい、おまけにホテルの一室で一戦交えている模様を助徳に録音されてしまいます。助徳は竜一の母親に、息子の不始末を水に流す代わりに、処女のお玉に夜這いできるよう話を持ち掛けるのですが・・・。

 

題名に惹かれたのと、若き中村晃子目当てで、この映画を鑑賞しました。お玉を除けば、いずれもしたたかで欲深な人物が登場し、一癖も二癖もある人々が集まる群像劇は、自然と話も面白くなってきます。自治体が地域振興のためにプロジェクトを組むと、得てして利権が絡まり、結局住民がロクな目に遭わないのは過去に山ほど例があります。

 

ただ、この島の住民は泣き寝入りをせずに、自分たちが得になると悟ると変わり身も早く、それが救いにもなっています。ストリッパーたちがニセの海女の格好をして仕事をしたことにより、本職の海女たちが自分たちの仕事を汚された気持ちになり、憤りを感じつつも、彼女らも芸者まがいの仕事をヌケヌケとする辺りは神経が図太いです。お玉の姉のショウ子にしても、助徳の毒牙から妹を護ると一瞬思わせておいて、実はちゃっかり助徳の後妻の座に収まる画策をしている点も、なかなか一筋縄では行きません。

 

島の男たちはドスケベ揃いで、隙あらば夜這いをかけたり、ホテルの一室にマジックミラーを仕掛けて男女の痴態を覗き見しようとしたり、その時の喘ぎ声を録音したり、エロの追求に余念がありません(笑)。島民から尊敬を受ける大納言ですら魔が差して、お玉の貞操を奪いそうになります。こうした欲にまみれた故郷に幻滅して、最終的にお玉は島を去る訳ですが、その際にこの映画でも、ヒロインが彼女を待つ男を一顧だにせず通り過ぎる「第三の男」オマージュの演出が見られます。

 

本作は八丈島で撮影されていて、とりわけ水中カメラで撮った映像が美しいです。その反面、一部の豪族の利益のために、自国民に負担ばかりを強いる現在の政治の腐敗とも重なる醜さがあり、いつから日本は政財官及びメディアが一体となった利権まみれの国家になったのだろうと考えると、喜劇にも関わらず暗い気持ちにさせられました。