チラシより
第二次世界大戦下、アメリカで立ち上げられた極秘プロジェクト「マンハッタン計画」。これに参加したJ・ロバート・オッペンハイマーは優秀な科学者たちを率いて世界で初となる原子爆弾の開発に成功する。しかし原爆が実戦で投下されると、その惨状を聞いたオッペンハイマーは深く苦悩するようになる。冷戦、赤狩り----激動の時代の波に、オッペンハイマーはのまれてゆくのだった----。
製作:アメリカ
監督・脚本:クリストファー・ノーラン
原作:カイ・バード マーティン・J・シャーウィン
撮影:ホイテ・ヴァン・ホイテマ
美術:ルース・デ・ヨンク
音楽:ルドウィグ・ゴランソン
出演:キリアン・マーフィー エミリー・ブラント マット・デイモン
ロバート・ダウニー・Jr. フローレンス・ピュー ジョシュ・ハートネット
ケイシー・アフレック ラミ・マレック ケネス・ブラナー
2024年3月29日公開
オッペンハイマーの屈折したキャラクターが興味深かったです。叱責された教授を恨んでリンゴに青酸カリを仕込んだり、党員にこそならなかったものの、共産主義に傾倒した結果、赤狩りによって足元を掬われたり、女にだらしのない一面があったりと、ダメンズ好きからすると、少しばかり精神を病んだ主人公の隙のある部分は人間味が感じられて、これはこれで十分楽しめました。
この映画はR15指定で、何故と思いながら観ていると、キリアン・マーフィーとフローレンス・ピューの濡れ場があって、この描写って必要だった?と思いつつもちょっと得した気分を味わえました(笑)。しかも、査問委員会の席で当の二人が裸で抱き合う姿が唐突に出てくるシュールな描写もあり、クリストファー・ノーランによる遣り過ぎ感のある演出は嫌いではありません。
日本人としては原爆開発の話に目が向きがちになりますが、戦後の赤狩りの話もなかなかエグいです。赤狩りを扱った映画では、裁かれる者に対して自己保身のために不利な証言を行うことがしばしば見られ、この映画も例外ではありません。それに加え、ロバート・ダウニー・Jr.演じるルイス・ストローズなぞは、私的な怨みのためだけに、オッペンハイマーを窮地に陥れようとします。日本人はそこまで執念深くはなれないでしょう。
この映画では日本に原爆を落としたことを、相変わらず米国の兵士の犠牲を減らしたというスタンスで正当化していましたが(当時の米国の空気を反映させただけで作り手は違う思いがあったかもしれませんが)、最近米国ではキャンセル・カルチャーの流れも出てきたことですし、そろそろ原爆投下や東京大空襲を非戦闘員に対する虐殺という見方に変えてもらえないでしょうかねぇ。日本はどこぞの国のように、条約が締結したにも関わらず、賠償金のおかわりは求めないからさぁ。
日米が相まみえる戦争映画を観るたび、日本も米国も、しばしば組む相手や戦う敵を見誤ってきたことを痛感させられます。先の大戦でも、国際連盟で人種差別撤廃を訴えてきた日本が、ホロコーストを行なったドイツと組むべきではなかったですし、同じ民主主義の価値観を持つ米国とも戦うべきではありませんでした。
このことを肝に銘じて、現在の日本も良い方向に進んで行きたいのですが、現実は政財官及びメディアは某国にべったり。エネルギー政策、移民政策、土地売買等は、某国に利するばかりで、日本だけが損失をこうむり、益々日本人が貧しくなるのですから目も当てられません。先進国の筈の日本の国民所得が30年前とほぼ同じの上に、税金を始めとする負担ばかり大きくなって、可処分所得が減るってどうよ?
只でさえGHQによって日本の伝統が毀損された上に、日本の価値観と真逆の某国が静かに日本を侵略しようとするのを考えると、暗澹たる気持ちにさせられます。そんなことを考えつつ、原爆開発に苦悩する科学者の辛気臭い話を、原爆を落とされた当事国の国民としては、複雑な想いに駆られながら鑑賞した次第です。