人が人を裁くことの難しさ 「法廷遊戯」を観て | パンクフロイドのブログ

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法廷遊戯 公式サイト

 

チラシより

法律家を目指すロースクールの裁判ゲームで起こった悲劇。無罪を主張し「お願い、私を弁護して」とだけ話すと、一切口を開かない容疑者・美鈴(杉咲花)。この謎の状況に翻弄される弁護士・清義(永瀬廉)だが、これは死者・結城(北村匠海)が仕掛けた最後のゲームだった。「ゲームのプレイヤーは貴方なの」の言葉をヒントに、裁判はマスコミも騒がす前代未聞の展開に!そして暴かれてゆく封印されていた3人の秘密。追いこまれた淸義は究極の決断をするが・・・最も神聖な場のひとつである法廷で待つ驚愕の結末は!

 

製作:「法廷遊戯」製作委員会

配給:東映

監督:深川栄洋

脚本:松田沙也

原作:五十嵐律人

撮影:石井浩一

美術:黒瀧きみえ

音楽:安川午朗

出演:永瀬廉 杉咲花 北村匠海 戸塚純真 黒沢あすか 倉野章子

         やべけんじ タモト清嵐 柄本明 生瀬勝久 筒井道隆 大森南朋

2023年11月10日公開

 

これがオリジナル脚本だったら、もっと評価したいのですが・・・。それでも、原作を読んだ者からすると、勘所を抑えて無難にまとめた点は良かったです。上映時間も程よい長さで、テンポよく話が進んでいくため、ストレスなく観ることはできました。

 

ただし、裁判劇を期待すると、肩透かしを食らいます。映画の冒頭の無辜ゲームは、話の導入部としては最適であるものの、清義が美鈴の無罪を証明する裁判場面では、弁護士と検事の応酬が繰り広げられる訳ではありません。大森南朋が裁判の場を荒らしまくる面白さはあっても、最終的にUSBメモリーに残された動画が決め手になるため、裁判の醍醐味は薄らぎます。

 

元々、原作も映画も、主旨は裁判の勝ち負けにあるのではなく、法が完全ではないことを問うています。その結果、ある人物が仕掛けた工作の“意図”が重要になってきます。この人物が巧妙に立ち回っていて、清義と美鈴が過去に犯した罪を露わにしなければ、美鈴を救えない状況に持って行っています。したがって、清義が過去とどのように向き合いながら、美鈴の無罪を立証するかが見どころとなります。

 

事件の真相がほぼ判明してからも、更にひねりが加えられており、その点はミステリーとしてポイントが高いです。一見弱々しく映る美鈴が、したたかな面を窺える点も意外性があります。

 

日本の検察が容疑者を起訴した場合は、かなり高い確率で有罪判決が下されます。裏を返せば、自分たちが勝てる確率が高くなければ裁判に持ち込まないことも意味しています。そんな姿勢の検察でも、時折冤罪のケースが生じており、人が人を裁くことの難しさを物語っています。本作はそうした問題提起に相応しい映画でした。