娯楽に徹した泥棒映画 「華麗なる大泥棒」を観て | パンクフロイドのブログ

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新宿武蔵野館

ジャン=ポール・ベルモンド傑作選3 より

 

製作:フランス

監督:アンリ・ヴェルヌイユ

脚本:ヴァエ・カッチャ アンリ・ヴェルヌイユ

原作:デヴィッド・グーディス

撮影:クロード・ルノワール

音楽:エンニオ・モリコーネ

出演:ジャン・ポール・ベルモンド オマー・シャリフ ダイアン・キャノン

         ロベール・オッセン レナート・サルヴァトーリ

1971年12月18日公開

 

アテネに集結した3人の男と1人の女。彼らは町はずれの豪邸に車を乗りつけ、ラルフ(ロベール・オッセン)とレンジー(レナート・サルヴァトーリ)が門番を縛り上げ、リーダーのアザド(ジャン・ポール・ベルモンド)はアタッシュ・ケースを携えて邸内に入りこみます。アザドは金庫の前までくるとケースを開き、中にある装置を使って金庫を開けようとします。

 

ところが、ザカリア警部(オマー・シャリフ)が豪邸の前を通りかかり、門前に停車してあった車に不審を覚えます。アザドは何食わぬ顔でザガリアに近づき、警部もあまり詮索をせずにその場を立ち去ります。再び金庫に向ったアザドは、手慣れた様子で金庫を開けます。彼は金庫の中にあった多額の紙幣に目もくれず、大粒のエメラルドだけを皮のアタッシュ・ケースに詰めて持ち去りました。

 

翌朝、4人は港に向かったものの、彼等の逃亡用の船が修理中のため、それぞれ別行動を取って身を潜めねばならなくなります。レンジーとラルフは港の倉庫に、エレーヌ(ニコール・カルファン)は近くの島のホテルに身を隠します。その一方でアザドには、ザカリアの乗る車が後をつけていました。アザドは警部を捲こうとしますが、袋小路に追いつめられます。警部は皮のアタッシュ・ケースを調べますが、中は空っぽでした。

 

それでもザガリアはあきらめず、倉庫に戻ったラルフとレンジーを脅します。そして、レンジーは射殺され、ラルフは重傷を負います。その後、ザカリアはアザドの滞在するホテルを包囲し彼を逮捕しようとしますが、アザドは何とか逃げ切ります。

 

彼はホテルで知りあったレナ(ダイアン・キャノン)の自宅を訪ねたものの、彼女がザカリアに情報を流していたことを知ると、彼女を殴り倒して夜の町へ飛び出します。しかし、カフェにいたアザドの前にザカリアが立ちふさがり、身の安全を約束する代わりに、エメラルドを渡すよう要求してきます。八方塞がりのアザドは、ザカリアに屈するしかないと思えましたが・・・。

 

序盤における金庫破りの方法がなかなか斬新でした。携帯用のコンピューターを使って、金庫の中にある製造番号を外から透視して、その製造番号に当てはまる鍵をその場で作ってしまうからです。更に、普通は聴診器を金庫に当て、ダイアルを回しながら番号を耳で感知するのに対し、こちらはその作業もコンピューターに任せます。その間にも、ザカリア警部が付近に停めてあるアザドたちの車を怪しみ、アザドが臨機応変に対応するなど、ハラハラしたサスペンスが繰り広げられます。

 

その後のカーチェイスも、クライマックスと言っていいくらい、実に見映えのするシーンが続きます。前半に持ってくるのが惜しいほどで、公道を使った大掛かりなアクションは「ブリット」や「フレンチ・コネクション」にも見劣りはしません。ドリフトを効かせてカーブを曲がったり、長い階段を逆落としに走り下りたり、曲芸のような車のおいかけっこが実に愉快。車がボロボロになるのも頷けるほど、迫力ある描写に仕上がっています。

 

また、ベルモンドの身体を張ったアクションも健在。走るバスに飛び乗るシーンを始め、並走するバスに乗り移ったかと思えば、ダンプの荷台に隠れた彼が断崖の上に運ばれた末に、砂利と一緒に急斜面を転がり落ちるなど、随所に楽しめる場面が用意されています。

 

ザカリア警部はアザドがブツを山分けしようと妥協案を示しても、その提案を突っぱねて全額頂こうとするほど欲深い男です。この欲深さが仇となる結末もその方法に一工夫が見られ、アイデアを凝らした“復讐”がスカッとします。映画は適度にユーモラスな味があり、作り手の娯楽に徹した姿勢によって気持ちよく観られました。