米軍のおこぼれ仕事で生計をたてる男がしっぺ返しを食らう「弾丸大将」を観て | パンクフロイドのブログ

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私たちは何度でも立ち上がってきた。
ともに苦難を乗り越えよう!

ラピュタ阿佐ヶ谷

「基地」の街から より

 

製作:東映

監督:家城巳代治

脚本:橋本忍

原作:赤江行夫

撮影:飯村雅彦

美術:森幹男

音楽:池野成

出演:南廣 淡島千景 木村功 春丘典子 花澤徳衛 東野英治郎 清村耕次 三井弘次

1960年9月13日公開

 

不発の善ちゃんこと高岡善三郎(南廣)を始めとする弾拾いたちは、米軍の演習場で生活のために命を張って、不発弾や薬莢を拾っては屑屋に売っていました。殊に善ちゃんは弾拾いの名手で、不発弾の処理にも長けていました。彼は弾拾い中に死亡した大谷の未亡人のマキ(淡島千景)に惚れていて、何かと面倒を見ようとします。しかし、彼女の心は同じ弾拾いの但見(木村功)にありました。

 

やがて、善ちゃんは演習場の名誉案内人になったことをきっかけに、商売を広げていきます。シズ(春丘典子)に米兵の衣類を洗濯させる一方、女の世話まで手をのばしますが、縄張りを荒らされたやくざの恨みを買います。日頃から善ちゃんを毛嫌いしていた同業の茂(清村耕次)は、彼の解体工場に白旗を掲げ、米軍が目標物と見間違えた末に工場を粉砕してしまいます。

 

ある夜、但見が不発弾の分解作業中爆死します。マキは生きる張り合いを失い、目的地に案内しようとした米兵に、森の中で全てを与えてしまいます。一方、善ちゃんは自分の仕事場を爆破させた犯人を見つけようと、美里村の巡査(三井弘次)に掛け合いますが、逆に違法行為をしていた罪で拘留されます。

 

やがて、見知らぬ米兵が善ちゃんを引き取りに来ます。善ちゃんは怪訝な思いを抱きながら釈放されます。引き取りに来たビリー軍曹の話によれば、マキの頼んだことだと分かり合点が行きます。ところが、そのビリー軍曹とマキが結婚し、アメリカで暮らすと知らされ愕然とします。そんな折、弾拾いのカナさんが米兵に射殺される事件が起きます・・・。

 

不発の善ちゃんは目ざといと言うか、利にさといと言うか、かなり要領よく立ち回る男です。植木等の「無責任」シリーズにおける平均のような感じもしますが、あちらほど嫌味な感じはなく、周囲とも波風は立てずに巧く関係を築いています。彼には米軍に自分たちの土地を奪われた屈辱感は多少あっても、目先の利益を優先して現実的な対応をしています。それは善ちゃんに限らず、弾拾いの面々にも言えます。貧しい彼らが生きていくには、仕事を選んではおれず、部落民であることも幾ばくか影を落としています。

 

薬莢や不発弾を勝手に持っていくのは違法行為なのですが、米軍は弾拾いを見逃しています。不発弾の処理や薬莢を拾う手間が省けるのと、土地を奪った貧しき民の生活の糧を失わせることに後ろめたさがあるのかもしれません。謂わば両者持ちつ持たれつの関係にあると言ってよいでしょう。弾拾いは決して褒められた仕事ではありませんが、爆発を防ぐための信管を取り除く作業には危険が伴い、鉄くずとして売るまでにはそれなりの手間がかかっており、誰かがやらねばならぬような必要とされている側面もあります。善ちゃんに嫌な印象を抱かないのは、こうした部分が大きいと思えます。

 

そんな善ちゃんも米軍に女を世話する仕事に手を広げたことにより、やくざたちから恨みを買い、その挙句に仕事場を爆破されてしまいます。また、意中の女のマキを米兵に横から攫われもします。更に米軍基地の撤退の話が持ち上がり、善ちゃんも焼きが回るようになります。米軍の撤退後に自衛隊が来て、仕事がやりやすくなったと思いきや、呆然となるオチはなかなか皮肉が利いていました。