千葉真一の体を張ったアクションに目が釘づけ「脱走遊戯」を観て | パンクフロイドのブログ

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池袋 新文芸坐

世界のアクションスター 追悼 千葉真一 より

 

製作:東映

監督:山下耕作

脚本:高田宏冶 関本郁夫 大原清秀

撮影:増田敏雄

美術:井川徳道

音楽:八木正生

出演:千葉真一 鰐淵晴子 垂水悟郎 郷鍈治 小沢栄太郎 ウィリー・ドシー 根岸一正 花沢徳衛

1976年6月19日公開

 

神木渡(千葉真一)は、12歳の時に傷害事件で教護院に収容されて以来、今日まで社会と刑務所を往復していました。その神木が服役中に、またとないチャンスが訪れます。囚人に説話する教誨師の田所洪善(小沢栄太郎)は、裏では脱獄グループを率いていました。田所一派のメンバーは、愛人の久世陽子(鰐淵晴子)、ヒゲの教授(垂水悟郎)、黒人の脱走米兵ベトナム(ウィリー・ドシー)、殺し屋のジョーズ(郷鍈治)などでした。田所グループは服役囚の松田(田中浩)の依頼で、彼をヘリコプターで脱獄させようとします。

 

ところが、神木が松田に成り済まして、まんまと脱獄に成功します。田所の手下は神木が依頼客でないと分かると、彼を始末しようとします。神木は報酬を支払うことで手を打とうとしますが、彼はかつての依頼主の楊明徳(汐路章)から自分の取り分を巻き上げて、田所一味に金を払わずそのまま逃走しようとします。しかし、そのことが発覚し、彼は手足を縛られたまま海に沈められます。それでも神木は生還し、大胆にも田所の前に現れます。

 

田所は神木の度胸に感心し、三千万円の仕事を一緒にやらせてみます。その仕事とは、やくざの親分の関口(北村英三)を脱獄させてほしいと、情婦の順子(風間千代子)からの依頼でした。神木は目的の刑務所に侵入すると、脱獄に必要な道具を所内に持ち込み、関口を脱獄させようとします。ところが、同房の水原(志賀勝)がその計画に気づき、彼も一緒に脱獄させねばならなくなります。

 

その頃、田所一派も脱獄が成功した暁には、神木を殺そうと手ぐすねを引いていました。しかし、神木も用心深く、水原を囮にして関口を脱獄させることに成功します。神木と関口は順子のマンションに向かいますが、部屋の外ではジョーズやベトナムが見張っており、神木はベランダから部屋に侵入し順子を逃がそうとします。

 

ところが、神木は彼らに見つかり危うく殺されそうになります。それでも彼は反撃し、金の入ったアタッシュケースを持って隠れ家に戻ります。ところが、喜んだのも束の間、隠れ家が見つかり、神木は再び危機に晒されます。ジョーズに銃を突きつけられ、絶体絶命の状況を救ったのは、意外にも陽子でした。彼女は神木に自分と手を組み、二人で田所の狙っているものを横取りしようと持ち掛けるのですが・・・。

 

序盤から千葉真一のアクションが炸裂します。刑務所からの脱走時に、ヘリコプターの縄梯子にぶら下がるだけでなく、飛行中にも関わらず、縄梯子に掴まりながら囚人服を脱ぎ棄て米軍服に着替えをしてしまう離れ業に度肝を抜かれます。これだけで掴みはOK。スタントを一切使わず、己の肉体でやっている事に価値がります。

 

この手のアクション映画は、どちらかと言えば石井輝男監督が手掛けそうで、必ずしも山下耕作監督向きの映画ではありません。ただし、山下監督は松方弘樹の脱獄三部作の最終作「強盗放火殺人囚」を撮った実績があります。得意分野でないのに、手慣れた感じになっているのは、職人監督ならではの熟練の技と言えるでしょう。

 

石井監督ならば、もっと大馬鹿な演出をしたかもしれませんが、山下監督も結構ハメを外した演出をしています。例えば、刑務所内での上映会。蜜蜂の一生のフィルムを流す筈がポルノ映画のフィルムにすり替わっている場面は、正に東映の本領発揮と言ったところ。更に上映を中止しようとする刑務官と見せろと要求する囚人の小競り合いから暴動に発展し、その混乱に乗じて田所のお目当ての奥垣(花沢徳衛)を逃げさせる辺りは、脱獄映画の醍醐味があります。

 

千葉ちゃん演じる神木のキャラクターにしても、脱獄三部作の松方に寄せているようで、散々危険な目に遭いながら全く“懲りていない”点も主人公の魅力となっています。神木と陽子の束の間のふれあい、終盤の皮肉なオチと奥垣の現代社会への批判ともとれるセリフもいいですが、とにかく繰り出すアクションが変化に富んでおり、千葉真一の素晴らしい体技抜きには語れない映画でした。