萩原健一の初々しさが微笑ましい 「ザ・テンプターズ 涙のあとに微笑みを」を観て | パンクフロイドのブログ

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2年前にショーケンの追悼特集で観た映画でしたが、記事にしそびれてしまいました。彼の命日が近いので取り上げてみました。

 

池袋 新文芸坐

追悼・萩原健一

銀幕の反逆児に、別れの“ララバイ”を より

 

製作:東宝

監督:内川清一郎

脚本:池田一朗

撮影:黒田徳三

美術:小島基司

音楽:池野成

出演:萩原健一 新珠三千代 聖ミカ 山岡久乃 須賀不二男 名古屋章 堺正章 横山道代

1969年3月29日公開

 

高校生の山川健一(萩原健一)は、母久子(新珠三千代)の勤めるスーパーマーケットでアルバイトをしながら日々を送っていました。ただし、可愛がっていた鳩が病気にかかってしまい、落ち込んでしまいます。文化祭の実行委員である同級生の昇(高久昇)は、健一を文化祭の歌謡物真似コンクールに出場させます。

 

その結果、健一は見事に優勝。ところが、コンクールに優勝する気でいた不良グループのボスは、健一の優勝を根に持ち、健一の鳩を殺してしまいます。スーパーマーケットの常連客浅田夫人(横山道代)の女中美香(聖ミカ)は、そんな健一に心を痛めます。彼女の想いを汲み取った神様(堺正章)は、不思議な魔力を美香に授けます。

 

美香を始め、音楽好きの昇、由治(松崎由治)、俊夫(伊部俊夫)、広司(大口広司)は意気消沈する健一を励まし、グループ・サウンズを結成します。久子は猛反対したものの、美香の魔法にかかっては為す術もありませんでした。健一は見違えるように明るくなり、スーパーマーケットで働く若者たちも彼につられて職場が華やぎます。

 

そんな矢先、支配人(大泉滉)は、久子を含め健一たちをクビにしてしまいます。久子は、昇の父親で経営者の皿井(須賀不二男)に掛け合い、解雇の撤回を要求。皿井は久子の要求に折れたばかりでなく、彼女に惚れてしまいます。やもめの皿井は、久子にラブレターを送るものの、逆に彼女の怒りを買います。

 

昇は、親友の健一の母と父親の結婚を夢みて喜ぶものの、女手ひとつで育てられた健一にはショックでした。健一は久子に内緒で家出をし、美香やバンドのメンバーも彼について行きます。一方、子供に家出をされた久子や皿井は大あわて。久子の親友弓枝(山岡久乃)の伝手で、ようやく健一の居場所を突き止めます。そして、弓枝は健一に会うと、彼の知らない久子の秘密を打ち明けます・・・。

 

テンプターズの演奏シーンが多いのは、彼らのファンにとっては嬉しいところ。「神様お願い」「エメラルドの伝説」「おかあさん」と言った代表曲の他に、文化祭ではピンキーとキラーズの「恋の季節」をカヴァーするショーケンの貴重な歌も聴けます。GS映画の割には(話自体は他愛ありませんが)ドラマ部分がしっかりしており、ジグソーパズルのピースがピタッ、ピタッと嵌っていく心地良さがあります。脚本を手掛けているのは池田一朗。後に小説家で脚光を浴びた隆慶一郎ですね。

 

また、美香の特殊能力が、健一を始めメンバーの危機を大いに救っている面はあるにせよ、肝心なところでは健一個人が打開していくのも気持ちがいいです。殊に、鳩を殺した不良グループのボスにしっぺ返しをするくだりは、伏線が十分張られている上に、気弱な性格の健一が一皮むける通過儀礼にもなっています。

 

若者の物語だけでなく、大人の側の事情にもきちんとコミットしている点もポイントが高いです。久子の親友である弓枝の存在が、意外に大きな役割を担っています。また、殺された鳩が美香を介して健一の守護天使となっていて、母親の結婚を受け入れ独り立ちできるようになったところで、彼から離れていくあたりも腑に落ちる形となって、綺麗なまとめ方をしていました。