昌子、淳子、百恵の共演作 「花の高2トリオ 初恋時代」を観て | パンクフロイドのブログ

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ラピュタ阿佐ヶ谷

昭和アイドル映画の時代 より

 

製作:ホリ企画制作

監督:森永健次郎

脚本:才賀明

撮影:萩原憲治

美術:坂口武玄

音楽:服部克久

出演:森昌子 桜田淳子 山口百恵 南田洋子 フランキー堺 夏夕介

        藤田弓子 川口厚 中島久之 南利明 鈴木ヒロミツ

1975年8月9日公開

 

地方に住む高校2年生の小田切みどり(森昌子)、高木あかね(桜田淳子)、津田あおい(山口百恵)は、夏休みを利用して東京へやって来ます。3人は全く知らない者同士でしたが、行く先々で不思議と遭遇するうちに、次第に意気投合するようになります。3人の目的はいずれもデザイナーの矢沢恵子(南田洋子)を訪ねることだったにも関わらず、恵子が不在のため別居中の恵子の夫・一平(フランキー堺)の許を訪れます。

 

しかし、熱気球作りに夢中の一平の部屋は荒れ放題で、ゴキブリが到るところに現れ3人娘は閉口します。仕方なく彼女たちは泊る場所を求めて、あかねの幼ななじみで大学生の五郎(川口厚)の所属するボート部の合宿所へ押しかけます。ところが、男所帯に突然若い娘3人が舞込んだために部員たちは舞い上がり、主将の柳田(夏夕介)は3人を叩き出そうとします。それでも、娘たちは彼のハンサムなルックスと男らしさにすっかり魅了されるのです。

 

3日目になって恵子が帰って来たため、3人は彼女のマンションに移り、憧れの東京生活を満喫し始めます。一平は恵子のマンションを訪れるものの、恵子は相変わらず小説も書かずに熱気球に夢中の夫に呆れ追い返してしまいます。そんな折、一平が事故を起こして入院します。

 

一平は事故に遭う前に、リハビリを続ける少年弘(安藤一人)を熱気球に乗せる約束をしていました。弘は交通事故で両親を失ったため、父親と一緒に飛行機に乗る約束を果たしてもらえず、一平は何とか弘の願いを叶えてあげたかったのですが、熱気球に乗せるのは厳しくなりました。その事を知った3人娘は、熱気球の資金集めのアルバイトを開始するのですが・・・。

 

話の内容なぞ、二の次。昌子、淳子、百恵の3人が揃って出演していることに意義のあるアイドル映画だからです。したがって、3人娘の全盛期を直接経験していない世代には、ほとんど響かない作品かもしれません。

 

夏休みに上京した3人の女子高生は互いに面識がなく、住んでいる場所もバラバラでしたが、デザイナーの恵子を訪ねることが目的だったため、瞬く間に仲良しになります。しかし、恵子が不在のため、別居中の夫の一平を訪ねたり、ボート部の倉庫で一夜を明かしたりと、順風満帆とは行きません。

 

一平は元々小説家なのですが、熱気球に夢中になって本業に身が入らない様子。恵子との別居の原因はその辺りにありそうです。現在の世知辛い世の中と違い、70年代は手元にあまりお金がなくとも何とかやっていけるようなムードが漂っていました。社会に一定の余裕があるからこそ、一平のように自分のやりたいような生活もできたと思えます。夫婦に子供があれば、また別なのでしょうが。

 

一平は事故で両親を失った少年と知り合い、彼を励ますために熱気球に乗せようと思い立ち、熱気球を製作するための資金を工面しようと、ビル清掃のアルバイトをします。しかし、清掃中にゴンドラから落ちてしまい、少年の願いを叶えるのが難しくなります。そこで、3人娘が一平のためにひと肌脱ごうとするのが、後半の見どころとなります。

 

彼女たちはアルバイトで、熱気球の製作費を捻出する一方で、工学知識のあるボート部のキャプテン柳田を製作に引き込もうと、彼を説得にあたります。先に話の内容は二の次と書きましたが、一平と弘の交流エピソードはいい話ですし、熱気球製作に奔走する3人娘の奮闘ぶりも見もの。

 

百恵ちゃんのチンドン屋姿は滅多に見られないし、高校生にも関わらず、3人が芸者姿に扮し南利明をもてなす場面は、女将役の十勝花子の仕切りが巧いこともあってなかなか笑えます。特に百恵ちゃんが南の酌に酒をこぼす様子を十勝が目にして「誰でも一度は経験するのにねぇ・・・」とつぶやくのが個人的にはツボでした(もちろん百恵ちゃんの「ひと夏の経験」の歌詞を踏まえた台詞)。

 

 

70年代に限らず昔の映画は、その時代では普通に行われていたことが、現在の基準に照らし合わせると、ギョッとすることが多々見られます。この映画も例外ではありません。それでも、コンプライアンスが罷り通り、息苦しさを感じさせる社会より、ユルい空気感のほうが人間らしく暮らせるような気がします。