すったもんだがありまして・・・「お嬢さん」を観て | パンクフロイドのブログ

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都内では『若尾文子 映画祭』は2月28日から4月2日まで開催されました。若尾さんの特集はこれまでにも何度か開催されているせいか、今後もまとまって上映される機会はあるだろうと思って、今回は2本の鑑賞のみに留まりました。何となく若尾さんのラブコメが観たかったので、本作と「実は熟したり」を観てきました。

 

角川シネマ有楽町

若尾文子 映画祭 より

 

製作:大映

監督:弓削太郎

脚本:長谷川公之

原作:三島由紀夫

撮影:小林節雄

美術:山口煕

音楽:池野成

出演:若尾文子 川口浩 野添ひとみ 田宮二郎 清水将夫 三宅邦子

1961年2月15日公開

 

藤沢かすみ(若尾文子)とチエ子(野添ひとみ)は親友同士。二人ともそろそろ結婚適齢期に入りかけています。かすみの父の一太郎(清水将夫)は会社の部長、母のかより(三宅邦子)は良妻賢母の主婦。兄の正道(友田輝)は、妻の秋子(中田康子)と所帯を持って独立しています。

 

父の会社で働く三人の部下はしょっちゅう家に遊びに来ており、三人の男性のうち二人はかすみに好意をもっている模様。そのうちの一人、牧(田宮二郎)が会社の専務を通じてかすみを嫁にもらいたいとアタックをかけます。ところがかすみはもう一人の男性、沢井(川口浩)が気になる様子。それにも関わらず、沢井は、大へんなプレイボーイで、かすみの知っているだけでも、洋品店の売り子の浅子(仁木多鶴子)、小町芸者の紅子(中川弘子)となかなかお盛んなご様子。

 

彼もかすみには気があるようで、彼女の前でわざと女の子をひっかけて見せて、反応を窺う節も見受けられます。かすみは沢井の女関係を知りながらも、二人は噴水のある公園のベンチで口づけをかわして、一気に結婚にゴール・イン。ところが、新婚旅行に紅子が現われたり、アパートに浅子が出没したりで、新婚生活は波乱万丈の気配。そのうえかすみが、沢井と義理の姉との間を疑ったあげく、とうとう家出にまで発展するのですが・・・。

 

浮気な男と知りつつ、男の正体を見究めたい好奇心から、深みに嵌っていく若い女性を、若尾文子がドライに演じています。かすみはチエ子と駅のプラットホームで電車を待つ間、偶然父の部下の沢井と女性の愁嘆場を目にします。沢井は何度もかすみの家に来ており、彼女とも顔なじみ。かすみは沢井の化けの皮を剥がしたい衝動に駆られ、彼に誘い水をかけます。

 

ところが、敵も然るもの。女の扱いに長けた沢井は、かすみに明け透けに女遍歴を語って挑発しようとするのです。かすみは平凡よりも刺激を求めるタイプなこともあり、沢井が目の前で女の子をナンパしたり、付き合っていた女が待ち伏せしたりする現場を見せられると、俄然結婚に前のめりになっていく姿が面白いです。

 

一般的な感覚だと、自分も浮気されるのではないかと疑いたくなるものですが、彼女は微動だにしません。浮気をされるとは露も疑わぬほど、自分に自信がある証であり、そりゃ若尾文子が女房ならば、普通の男は他の女には目もくれませんわな。ただし、二人の結婚のネックとなるのが、沢井の過去の女性関係。かすみの父親は常々、結婚したいと思う男が現れたら報告するよう娘に言っており、当然相手の素行調査をすることも宣言しています。

 

二人は調査される前に、彼女の両親に結婚を打ち明ける奇襲作戦に打って出るものの、父親は娘の結婚候補に目星をつけており、調査は既に終了済み。万事休すかと思われたところ、意外にも両親は上機嫌で二人の結婚を認めることに・・・。私はてっきり、興信所の調査報告が沢井と牧を間違えたと考えたのですが、そうでなかったことが後に明らかになります。それでは、沢井の女性問題が露呈しなかったことが謎として残り、こちらは最後まで明かされません。

 

二人はめでたく新婚生活が始まったものの、些細な事からかすみに夫への不信感が芽生え始めます。こうなると沢井の独身時代の武勇伝を聞かされているだけに、更に疑惑が深まってきます。おまけに、彼女が妄想好きなのも拍車をかけ、ついには新妻が新居を出ていくまでに発展します。

 

この騒ぎをどう収拾させるかは、作り手の腕の見せ所でもあり、多少ご都合主義的な面はあるとは言え、ラブコメとしては許容範囲内。最後のオチも予想できるものの、締めとしては悪くありません。キャラだけ考えれば、ヒロインは野添ひとみ向きだし、後に川口浩と夫婦になったことを思えば、彼女を主役に据えても面白かったと思います。それでも、かつてのプレイボーイが家庭に収まると大人しくなる点に説得力を持たせるならば、若尾の圧倒的な美貌が必要だったということなのでしょう。