ネチョネチョ生きるこっちゃ 「三匹の牝蜂」を観て | パンクフロイドのブログ

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ラピュタ阿佐ヶ谷

Laputa Asagaya 20th Anniversary より

 

 

製作:東映

監督:鳥居元宏

脚本:中島貞夫 掛札昌裕

撮影:増田敏雄

美術:雨森義允

音楽:八木正生

出演:大原麗子 渡瀬恒彦 夏純子 市地洋子 工藤堅太郎 左卜全 藤村有弘 金子信雄 小池朝雄

1970年6月13日公開

 

三人のズベ公が物見遊山で賑わう万博会場で、カモを引っ掛けようと手ぐすねを引いていました。サチコ(夏純子)は若者を色仕掛けで油断させて財布をいただき、美奈(大原麗子)は団体客の弁当を失敬し、ハツエ(市地洋子)は地方から来た金持の老人(左卜全)に身の上話を聞かせて金を巻き上げます。三人はおすみ(三島ゆり子)の経営するゴーゴー喫茶で意気投合し、手始めにおすみと愛人関係にあるスーパーマーケット営業主任の義夫(林真一郎)を標的にします。義夫は万引き女を捕まえてはホテルへ連れ込む悪質な男で、三人は罠を仕掛けて義夫を脅します。

 

更に、ホステスの仕事を引き受けて手付金だけ頂いてトンヅラするバー荒らしを実行するものの、狙ったバーが暴力団・戸田組の経営だったことから、三人はリンチを加えられてしまいます。その際、監視役の三郎(渡瀬恒彦)が三人を庇ったことをきっかけに、美奈は三郎と恋仲になります。やがて、村上産業の荒川(工藤堅太郎)が三人に近づき、彼の腹案で三人は万博見物の外国人相手の売春組織作りに奔走します。

 

ところが、再び戸田組の知るところとなり、三人はまた追われる身となります。また、おすみも戸田組の矢吹(小池朝雄)に問い詰められ、三郎が逃亡に手を貸したことを吐いてしまいます。やがて三人も捕まり、三郎は美奈の目の前で矢吹に射殺されます。その後、三人は村上産業と戸田組のために、にわか芸者に仕立て上げられ、小役人の接待係をさせられます。ところが、サチコが接待した役人から封筒を盗んだところ、封筒の中味が入札に関する極秘書類だったため、荒川、戸田組との書類の奪い合いが始まります。

 

中島貞夫監督が手掛けた「893愚連隊」の“ネチョネチョ生きるこっちゃ”の精神を、1970年の大阪万博の世相に合わせて描いたズベ公たちの物語です。冒頭からこすっからい方法で銭を稼ぐ三人の女のしたたかさと太々しさが全開。美奈は偽の万博会場の駐車券を売りつけ、万博見物に来た団体の弁当を無断で頂きます。サチコはヒッチハイクして車に乗せてくれたお礼に、キスをしながら財布を掏る有様。ハツエは嘘の身の上話で老人から弁当を恵んでもらったばかりか、その老人とホテルにしけこみ、たんまりとお金を頂戴すると言った具合に、やくざから睨まれない程度の隙間商売でシノギをします。ここらあたりは、「不良番長」シリーズに通じるものがありますね。

 

ところが、おすみの店を根城に売春稼業を始めたために、戸田組の矢吹に目をつけられ、ヤキを入れられます。矢吹は手下の三郎を使って小芝居を打ち、彼女たちのルートを活用しようとします。したたかで男を騙す術に長けた女たちに、普通に考えればその程度の小芝居は通用するはずはないのですが、美奈は身をもって女たちを庇おうとした三郎に感激し、身を任せてしまいます。大原麗子と渡瀬恒彦は実生活でも夫婦だった時期があり、後に破局したことを思えば、本作における関係も味わい深くなります。

 

美奈が三郎とくっつく一方で、女たちは村上産業の荒川と手を組み、戸田組に知られないように、外国人相手の売春商売を続けます。このあたりは怖いもの知らずのズベ公の真骨頂。ところが、おすみと関係のあった営業主任から万引きした女たちのリストを強請りとったところからケチがつき始め、美奈たちが秘かに売春稼業を続けていたことも、三郎が彼女たちの行為を見逃していたこともバレてしまいます。三郎のことをチクったのがおすみであり、何も知らない三人の女たちが、おすみを裏切った営業主任の結婚式に乗り込んで、式を滅茶苦茶にしたことを思うと、遣る瀬無い気持ちにさせられます。

 

終盤は入札に関する極秘書類をめぐって、ちょっと笑える追いかけっこがあり、派手な方法で女たちは見事に三郎の仇を討ちます。でも、彼女たちは相変わらず騙しやすいカモを物色するだろうと匂わせて幕を閉じるという風に、絶えず「893愚連隊」を意識させるような作りをしています。劇中では和田アキ子とピーターの歌が聴け、おまけにアッコのアクションも僅かに楽しめます。また、70年代初めの開放的な女性ファッションにも目が向き、親に連れて行ってもらえなかった万博会場のパビリオンが映ると、少しだけでも当時の雰囲気を味わえました。