知らぬ間にエイリアンに浸食される恐怖「ゼイリブ」を観て | パンクフロイドのブログ

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ユジク阿佐ヶ谷

ゼイリブ 公式サイト

 

 

製作:アメリカ

監督:ジョン・カーペンター

脚本:フランク・アーミテイジ(ジョン・カーペンター)

原作:レイ・ネルソン

撮影:ゲイリー・B・キッブ

音楽:アラン・ハワース ジョン・カーペンター

出演:ロディ・パイパー キース・デヴィッド メグ・フォスター

        ジョージ・“バック”・フラワー ピーター・ジェイソン レイモン・サン・ジャック

1989年1月28日公開

 

ネイダ(ロディ・パイパー)は失業者で、職安に行っても働き口がなく、日雇い人夫で糊口を凌ぎます。同じ職場で働くフランク(キース・デヴィッド)は、泊まるところのない彼をホームレスのキャンプ地につれて行き、そこでネイダは不可解な体験をします。キャンプ地に設置されてあるテレビは、たびたび電波ジャックされ、向かいにある教会では讃美歌のテープを流しているだけで、布教活動をしている様子は見られません。

 

ネイダは教会に潜入し、壁に隠された収納スペースに段ボール箱が積まれてあるのを目にします。やがて、武装した警官隊がキャンプ地を急襲し、ホームレスの人々は逃げまどいます。翌日、ネイダが教会に行くと、誰もいなくなっており、段ボール箱を一箱失敬します。中にはぎっしりサングラスが入っており、試しにかけてみると、街の至るところにある看板に、普段は見えない命令文が人を洗脳するように書かれていることを目にします。更に裕福そうな人々は、骸骨の顔をした化物に映り、ネイダはエイリアンが人間に交って地球を侵略しようとする兆候に気づき始めます。

 

やがて、警官に化けたエイリアンがネイダを逮捕しようとしたために、彼はエイリアンを撃ち殺してしまいます。たちまちネイダは指名手配をされて、やむなくテレビ局に勤めるホリー(メグ・フォスター)を脅して、彼女の自宅まで行き匿ってもらおうとします。ところが、ホリーの反撃を食らい、ネイダは再び追われる身となります。行き場のなくなったネイダはフランクと接触し、状況を説明しようと、フランクにサングラスをかけさせようとしますが、フランクは面倒事に巻き込まれるのを怖れ拒否します。その結果、二人は殴り合いを始めてしまいます。

 

それでも、ネイダはフランクに無理矢理サングラスをかけさせ、異星人に侵略されている状況を理解してもらいます。二人はレジスタンスをしている仲間がいることを知り、そのアジトまで出向きます。そこには、ネイダを不意打ちにしたホリーもいて、彼の落としたサングラスから、この事態を知って仲間に加わった様子。ところが、またしても武装した警官隊の襲撃を受け、ホリーともはぐれてしまいます。ネイダとフランクは怪電波を発信していると思われる、ホリーの勤めるテレビ局に潜入し、そこで驚くべき事実を知ることとなります。

 

この映画が公開された80年代末は、日本がバブル絶頂期で、日本企業がロックフェラーセンターやコロンビア映画を買収して調子こいていた時代。アメリカ人からすれば、アメリカの文化や価値観を怯えさせるほどの恐怖があり、その分反発も大きかったはず。現在ならば、チャイナマネーによって、アメリカの企業を買い漁る中国をエイリアンに置き換えることもできますし、自国主義を掲げるトランプ大統領とグローバリズムを旗印にするディープステイトとの戦いのメタファとしての見方もできるでしょう。

 

さすがに、ジョン・カーペンターは80年代の時点で、そこまでの予見ができた訳ではないでしょうが、ついつい現在の世界情勢と結びつけたくなるほど、色々と語りたくなる要素に満ち溢れています。そして、「ボディスナッチャー」を骨子にしつつ、アメリカのアイデンティティの喪失への危機にまで踏み込んだところに、この映画の価値があります。何よりSFスリラーとして十分面白いですし、作り手の意図とは別に、30年後の社会情勢にも応用できる普遍性が本作の魅力になっています。