前作より更にスケールアップした「ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ」を観て | パンクフロイドのブログ

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ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ 公式サイト

 

 

チラシより

アメリカ国内で市民15人の命が奪われる自爆テロが発生。犯人らがメキシコ経由で不法入国したとにらんだ政府は、国境地帯で密入国ビジネスを仕切る麻薬カルテルを混乱に陥れるという任務を、CIA特別捜査官マット・グレイヴァー(ジョシュ・ブローリン)に命じる。それを受けてマットは、カルテルに家族を殺された過去を持つ旧知の暗殺者アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)に協力を要請。麻薬王の娘イサベル(イザベラ・モナー)を誘拐し、カルテル同士の戦争を誘発しようと企てる。しかしその極秘作戦は敵の奇襲や米政府の無慈悲な方針変更によって想定外の事態を招き、メキシコの地で孤立を余儀なくされたアレハンドロは、兵士としての任務、復讐、そして人質として保護する少女の命の狭間で、過酷なジレンマに直面することになる・・・。

 

製作:アメリカ

監督:ステファノ・ソッリマ

脚本:テイラー・シェリダン

撮影:ダリウス・ウォルスキー

美術:ケヴィン・カバナー

音楽:ヒドゥル・グドナドッティル

出演:ベニチオ・デル・トロ ジョシュ・ブローリン イザベラ・モナー マシュー・モディーン

        キャサリン・キーナー ジェフリー・ドノヴァン マヌエル・ガルシア=ルルフォ 

2018年11月16日公開

 

CIAが麻薬カルテルのボスの娘を誘拐することにより、内部抗争を誘発して、麻薬組織を壊滅させる作戦が進められる一方で、不法移民をメキシコからアメリカに密入国させる少年の物語が同時進行で描かれます。このふたつがどのように結びつくかは、映画を観てのお楽しみですが、麻薬の流入、不法滞在者による犯罪、テロに悩まされるアメリカの現状を的確に映し出しています。

 

マットが率いるチームは計画通り事を進めていくものの、アクシデントにより作戦を中止せざるを得なくなります。CIAの決断は非情であり、窮地に陥ったアレハンドロは、命令を無視して違法な手段でイサベルをアメリカに入国させようとします。そもそも、このアクシデント自体、メキシコ警察内部に麻薬カルテルへの情報提供者がいた可能性大で(私にはCIAのチームを警護していたメキシコ警察の車両から突然銃が発射されたように見えました)、メキシコの行政機関の腐敗ぶりも垣間見えます。

 

CIAに誘拐されるイサベルは、可愛らしい顔立ちながら、血の気が多く、学校では問題児扱いされています。麻薬カルテルのボスの娘という立場を熟知していて、学校側が彼女を退学させることができないのも見抜いています。小生意気で感じの悪い少女なのですが、アレハンドロと行動を共にするうちに、徐々に変化が見られるようになります。

 

メキシコに取り残されたアレハンドロとイサベルは、自力で国境を突破しようとするものの、思いがけぬ伏兵によって道が断たれます。最悪の展開のまま、嫌な気分で劇場を後にするのかと思いきや、「お前は『実録・私設銀座警察』の渡瀬恒彦か!」と言いたくなるような、奇跡?が用意されています。かなりご都合主義のような感じもしますが、不穏な終わり方は続編を期待させます。特に密入国者の手助けをし、アレハンドロにも制裁を加えた挙句、逃亡した少年ミゲル(イライジャ・ロドリゲス)には、きっちり落とし前をつけてもらわないと気が済まないと思っていただけに、物語が続くこの幕引きは歓迎します。

 

映画は前作同様、終始乾いたタッチで描かれ、感傷の入る隙間はありません。密入国ビジネスを仕切る麻薬組織は、たとえ子供でも容赦のない扱いをしますが、CIAも彼らに匹敵するほど汚い手を使い、冷酷な判断を下します。その狭間で、アレハンドロは家族の仇とも言える麻薬カルテルのボスの娘と行動を共にしながら、二人が生き残る道を探っていくのが見どころとなっています。「ウィンド・リバー」で監督を務めたテイラー・シェリダンが、脚本でも相変わらずいい仕事をしています。