正にかぐや姫の「神田川」の世界 「神田川」を観て | パンクフロイドのブログ

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池袋 新文芸坐

二枚目は笑顔で殺す 草刈正雄スペシャルッ! より

 

 

製作:東宝

監督:出目昌伸

脚本:中西隆三

原作:喜多条忠

撮影:原一民

美術:竹中和雄

音楽:佐藤允彦

出演:草刈正雄 関根恵子 勝部演之 所雅樹 黒沢のり子

        花沢徳衛 神山繁 鳳八千代 賀原夏子 北見敏之 佐久間亮

1974年4月6日公開

 

上条真(草刈正雄)は大学の人形劇サークルに所属しており、巡業先で若い女性と出会います。真は東京に戻ると、偶然その女性と再会します。女性の名前は池間みち子(関根恵子)と言い、小さな印刷会社に勤めていました。それ以来二人は、休みの日にデートをするようになります。みち子は料亭の下働きで娘に金をせびる母(賀原夏子)に悩まされ、真は厳格な兄(勝部演之)から説教を受けつつも、愛を育んでいきます。その一方で、同じサークル仲間のビゼン(所雅樹)とマキシ(黒沢のり子)は、心穏やかではいられません。ビゼンはみち子を秘かに愛し、マキシは真に公然と気がある素振りを見せていたからです。

 

そんなある日、真はみち子をモデルにかぐや姫を題材にした人形劇を書き上げます。しかし、サークル仲間の一人から軟弱だと批判され、兄からは勉学に身を入れていない弟を厳しく叱責する手紙が届きます。サークルの飲み会で酔っ払った真は、酒の勢いでみち子のアパートに行き、彼女を無理矢理犯そうとします。彼女は頑強に拒み、自責の念に駆られた真は、失意のうちに北陸の巡回公演に出発します。公演は今までにないほどの好評で、打ち上げの最中、みち子が真を訪ねてきます。その夜、燃え上る焚火の炎のそばで二人は結ばれます。やがて、真とみち子の同棲生活が始まり、みち子は妊娠します。

 

しかし、そのことを知った真の兄は、検診と偽り友人の医者(神山繁)のもとにみち子を連れ出し、強引に中絶をさせます。仕送りを断たれた真はサークルを辞め、二人の生活を守るために工事現場に働きに出ます。しかし、みち子は学業をなげうってまで働く真を見ることには耐えられませんでした。そんな折、ビゼン(所雅樹)とマキシが、雪山で遭難したという報せが二人の元に届けられます。

 

四畳半フォークの世界観を、そのまま再現したかのような物語が展開されます。個人的にはナイーヴ過ぎる登場人物たちは苦手なのですが、学園紛争後の目標を失った若者たちの挫折感を含め、70年代の空気感はよく捉えられています。時折、気恥ずかしくなるほどの描写が差し挟まれ、居心地の悪さを感じさせもしますが、その部分も込みでの70年代の映画と言えます。

 

この頃の草刈正雄のイケメンぶりは格別で、とにかく何をやっても絵になります。また、ボンクラ野郎にとっては、抜かりなく関根恵子のサーヴィスショットを入れてくるのが嬉しいです。話自体はかぐや姫の「神田川」の歌詞を踏襲した内容で、取り立てて語るほどのものはありません。ただし、当時の東京の風景や若者の生活スタイルを多少とも知る者には、今となっては懐かしめる映画になっています。

 

余談になりますが、私は映画の中で左利きの役者を見つけるのを楽しみにしていて、本作で草刈正雄が左利きであることが判明しました。併映の「あにいもうと」でも左手で箸を使っていたので、まず間違いないでしょう。

 

左利きの俳優・女優:夏帆、中山仁 大木実 松岡茉優 川谷拓三 草刈正雄