チンピラが生き残るには・・・「ゆがんだ月」を観て | パンクフロイドのブログ

パンクフロイドのブログ

私たちは何度でも立ち上がってきた。
ともに苦難を乗り越えよう!

シネマヴェーラ渋谷

ニッポン・ノワール より

 

 

製作:日活

監督:松尾昭典

脚本:山崎巌

原作:菊村到

撮影:姫田真佐久

美術:千葉一彦

音楽:鏑木創

出演:長門裕之 南田洋子 芦川いづみ 大坂志郎

        赤木圭一郎 梅野泰靖 三島雅夫 高原駿雄 神山繁

1959年7月28日公開

 

立花組の正夫(長門裕之)は、兄貴分の辰吉(高原駿雄)と連れ立ってキャバレーを出た後、タクシーを呼び止めようとします。突然、銃声が響き、正夫は辰吉が倒れるのを目にします。近くには同じ立花組の幹部・立石(梅野泰靖)がいました。正夫は自分の身を守るために、仲間にも、警察にも口を割ませんでしたが、奈美子(南田洋子)にだけは真相を洩らしました。正夫は博多の人形問屋の跡取りでしたが、女給で年上の奈美子と懇ろになり、親の反対に遭った挙句、一年前に神戸に駈落ちしたのです。

 

翌日、正夫はボスの立花(三島雅夫)に呼び出され、口止め料を握らされます。そして後日、犯人として、チンピラの五郎(神戸瓢介)が立花につきそわれて自首しました。しかし、日東新聞神戸支局の記者の木元(大坂志郎)だけは疑いをもち、正夫に揺さぶりをかけ始めます。辰吉の葬儀の日、正夫は辰吉の妹・文枝(芦川いづみ)の接待役を命じられます。彼は文枝を連れて神戸を案内するうちに、彼女に惹かれるものを感じます。

 

正夫は急に自分が口を噤んでいることが腹立しくなり、文枝に真相を打明け、さらにその足で日東新聞へ行き、木元にも告白します。その結果、立石は警察に逮捕され、立花は身を隠し、正夫は木元の計らいで東京へ逃げました。しかし、正夫の身辺にはいつも黒い影がつきまとっていました。やがて、奈美子が正夫を追って上京。正夫と共に新宿のバーに勤めることになります。

 

ある夜、アパートにバーの客の由良(神山繁)が待っていました。彼は立花組が送った殺し屋で、その夜はそのまま帰って行きます。翌朝、アパートに文枝が尋ねてきたことから、奈美子は正夫を責め、そのまま行方をくらまします。一方、正夫は辰吉の法要の席で、文枝に許婚(赤木圭一郎)がいたことを知らされます。

 

正夫は木元の兄(大坂志郎:二役)と共に、行方不明の奈美子の手掛かりを掴もうと、奈美子がバーの客と出入りしていた喫茶店を探し出し、彼女にまつわりついていた黒川(下元勉)の存在を突きとめます。二人は黒川の足取りを追いますが、正夫の前に由良が再び現れます。

 

彼は正夫を横浜の暗黒街へ連れていき、拳銃を二挺買いいれます。その時、正夫は黒川に連れられた奈美子を目にします。彼女は麻薬に溺れた夜の女たちと共に、香港に売られて行くところでした。やがて、由良と正夫は夜の河原に行き、拳銃でケリをつけようとするのですが・・・。

 

長門裕之と南田洋子の共演した映画は不思議と観たことがなく、二人の共演作を観るのは「ゆがんだ月」が初めてと思います。しかも、駆け落ちしたカップルという設定で、男は女に飽きが来ているのに対し、女は男に未練たっぷりで、しつこく執着するという関係。この映画が製作された時点で二人はまだ結婚していませんが、後におしどり夫婦と知られる長門と南田を思うと、興味が尽きない作品です。

 

前半から中盤にかけて、正夫、奈美子、文枝の三角関係で話を引っ張り、文枝に対する奈美子の嫉妬心で話を盛り上げています。南田洋子の大人のしっとりした色気と、芦川いづみの純真な乙女心の対比も際立ちます。特に文枝が正夫のアパートを訪ねた際に、奈美子が下着姿に上着を羽織り、寝乱れたベッドの様子から、正夫と奈美子の情事を匂わせ、「私が正夫の女よ」と勝ち誇ったようにさり気なくアピール。

 

でも、文枝がすぐにその場を立ち去ったのは、正夫が好きで居たたまれなくなったのではなく、単にタイミングの悪い時に居合わせた罰の悪さからくるものだったことは、法要の席に許婚がいたことで明らかになります。正夫も奈美子も文枝のことを誤解しているのですよね・・・。ちなみに許婚を演じた赤木圭一郎は、本作がデビュー作で端役でもいい男は人目を惹きますな。

 

正夫の命を狙う殺し屋のキャラクターがまたユニーク。神山繁演じる殺し屋は常に赤とんぼのメロディを口笛で吹き、メロディが聴こえるたびに自然とサスペンスも高まってきます。また、相手の知らぬ間に殺すのではなく、標的も自分と同じ条件の下で決闘した末に殺すと言う美学を持っています。この設定は、最近名画座で旧作を観た際に、同じような記憶が・・・。

 

それはともかく、一人二役を演じた大坂志郎も、正義漢溢れる律儀な神戸の新聞記者と、とぼけた風情のある東京の新聞記者との使い分けが面白かったです。松尾昭典監督の演出はテンポが良く、メリハリも利かせているため、話の続きが見たくなる気にさせます。殺し屋に狙われた正夫の運命は?香港に売られそうになる奈美子は助かるのか?それは映画を観てのお楽しみ。意外な拾い物でした。