加山雄三のもみあげが印象的な「薔薇の標的」を観て | パンクフロイドのブログ

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池袋 新文芸坐

絶対に観てほしい活劇 電光石火の24本 より

 

 

製作:東宝

監督:西村潔

脚本:白坂依志夫 桂千穂

撮影:原一民

美術:村木忍

出演:加山雄三 チェン・チェン 岡田英次 トビー門口 加瀬英明 広村芳子

        二瓶正也 ロルフ・ジュザー ユロフ・オスマン ハンス・シーバーガー

1972年4月5日公開

 

日野昭(加山雄三)は、メキシコ・オリンピックにおいて、フリーライフルで上位入賞もしたほど射撃に関しては腕の立つ男でした。ところが、ライバルの同僚が射撃訓練中に暴発事故で亡くなったため、昭に殺人容疑がかかります。彼は不起訴になったものの、社会的には抹殺されてしまいました。昭は渡米しますが、食うや食わずの状態で、再び日本に戻ってきます。そんな昭を、マイク・立花(岡田英次)がスカウトします。彼は昭を暗殺者に仕立てるべく、あらゆる銃の訓練を課しました。

 

そんな折、アメリカのニュースカメラマンのロバート(ロルフ・ジュザー)は、立花の訓練所での異様な光景を目撃しカメラに捉えます。そのことを知った立花は、昭にロバートの暗殺を命令し、昭は香港の路上で彼を射殺しました。同時に、倒れたロバートに駈けよる美しい女、季玲玲(チェン・チェン)の姿も目にします。玲玲は両親を早くに失った中国人女性で、新聞記者だった彼女の兄もラオス戦線で亡くなっていました。彼と親友だったロバートが彼女の保護者代わりをしていたため、玲玲はロバートを狙撃した犯人を探しだす決心をして、かつてロバートが立ち寄った立花の研究所に目をつけます。

 

ところが、周囲を探索する彼女を、立花の部下が拉致しようとします。その直後、昭が玲玲を救出し、彼の宿泊しているホテルに匿います。二人は互いに惹かれ合うものの、昭にはロバートを殺したことを、玲玲に告げることはできませんでした。しかし、昭は苛責に耐えられず、自分が殺し屋であること、ロバートを狙撃したことを彼女に話します。玲玲は既に昭を愛し始めていたため、彼を心底憎むことはできませんでした。

 

昭は彼女に報いるため、立花に直談判します。立花は、玲玲に手出しをしないことと、昭を組織から抜けさせることを約束する代わり、最後の仕事として一人の男を狙撃することを命じます。その一方で、玲玲には昭を救う交換条件として、ロバートが写したフィルムを取引場所に持ってくるよう指示をします。昭は立花の指定した場所で、狙撃する標的を待ち、ようやく後ろ姿をスコープに捉えます。そして、昭の指先が引き金を引いた瞬間、彼は標的が誰なのかに気づきます。

 

銃にしか生きがいを見出せなかったスナイパーが、女を愛することを知り、謎の組織の魔の手から彼女を守ろうとする物語です。ジャック・ヒギンズの「死にゆく者への祈り」を連想させるプロットですが、こちらのほうがヒギンズの小説より早かったですね。加山雄三の尾崎紀世彦ばりのもみあげと野性味溢れる容姿が、従来とは異色のキャラクターで目を惹きます。後に彼がブラック・ジャックを演じた時にも驚かされましたが(笑)、それと双璧かも。また、トビー門口を起用したことでも分かるように、映画ではガンアクションを含め銃に関してのこだわりも強く感じられます。

 

その一方で、個人的には日本の風景とSLにも目が向きました。SLが田舎を走る光景を見ているうちに、70年代初期に国鉄がデスカバー・ジャパンと称して、国内旅行に目を向けさせるキャンペーンがあったことも思い出しました。主人公は銃器の他に鉄道にも興味があるようで、機関車の走行音をオープンリールのテープに録音したり、玲玲に機関車の解体現場を見学させたりします。SLが解体される映像は貴重ですし、暗殺者が鉄ちゃんという設定も随分と珍しいですね(笑)。余談になりますが、キャストの中に加瀬英明の名がありました。外交評論家の加瀬英明でしょうか?ロバートが玲玲の生い立ちを語った際に、聞き役だった人物が彼だったような気がしますが・・・。もう一度観る機会があれば、そのことも確かめてみたいです。