おいしい話には裏がある 「裏階段」を観て | パンクフロイドのブログ

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ともに苦難を乗り越えよう!

シネマヴェーラ渋谷

シネマヴェーラ的 大映女優祭 より

 

 

製作:大映

監督:井上梅次

脚本:田口耕三 井上梅次

撮影:渡辺徹

美術:山口煕

音楽:広瀬健次郎

出演:田宮二郎 司葉子 安部徹 成田三樹夫 仲村隆 村上不二夫 内田朝雄

1965年2月6日公開

 

木島健一(田宮二郎)は、外国人向けのクラブでピアノを弾いています。彼は自動車事故で許婚を失くし、その後遺症により一流ピアニストの道も絶たれました。今では顎に残る傷跡と許婚への悔恨から、荒んだ生活を送っています。そんな木島に奇妙な依頼が持ち込まれます。元華族と名乗る海堂義則(安部徹)は、木島に一時的に妹・理枝(司葉子)の許婚になってくれと頼み、50万円の札束と妹の写真を置いて帰って行きました。

 

木島は海堂邸を訪れ怪しい話を断るつもりでしたが、許婚に似た理枝の寂しそうな横顔を見て、依頼を引き受けます。海堂邸には海堂兄妹の他に、田所(成田三樹夫)という顎鬚をたくわえた運転手がいました。理枝は木島に夫の犬丸と離婚手続きをしていると告白しますが、彼はそれ以外にも何か秘密があることを嗅ぎ取ります。同じ頃、強盗犯で刑務所に収監されている団(内田朝雄)が、宝石を持ち逃げした仲間の行方を追うため、面会に来た二人の男に指示を出していました。

 

木島は理枝と接するうちに恋心を抱き、理枝も木島に対して好意を持つ素振りを見せるものの、離婚訴訟中を理由に二人の仲はなかなか進展しません。業を煮やした木島は、海堂の立ち合いのもと犬丸と会い、理枝を貰い受ける約束を取りつけます。その後、海堂の奇妙な依頼が、病床にある母親の保険金の受取人を理枝にするため、一芝居打とうと仕組んだことが分かり、木島は理枝との結婚を益々望むようになります。

 

その一方で、木島が海堂兄妹の母親に贈った見舞品が送り返される出来事が起きます。木島は確認のため病院を訪れますが、母親が入院した形跡がないことを知らされます。その帰途、木島は運転中にブレーキが効かなくなり、彼の乗った車は止めることができずに坂を下り続けます・・・。

 

許婚を失った傷心のピアニストが、怪しい依頼を引き受け、許婚に似た美女をモノにしようと、敢えて火中に飛び込んでいくミステリーです。海堂が持ち掛ける話は如何にも裏がありそうで、木島もそのことを承知しながら、理枝に惹かれたためにその話に乗ってみせます。その一方で、服役中の強盗犯の親玉の指示で、宝石を持ち逃げした仲間を探す話も進行します。当然、二つの話には繋がりがあり、察しの良い観客ならば、凡その青写真を描けるでしょう。

 

木島と理枝は偽りの許婚を演じているにも関わらず、理枝は木島に気のある素振りを見せ、木島もヤレる落とせる感触を得るものの、彼女は最後の一線だけは越えさせません。アラン・ドロン主演の映画に「悪魔のようなあなた」があり、記憶喪失の男が夫婦なのに夜の営みをさせてもらえない状態を思い出してしまいました。

 

途中まではミステリーの小品として良くできています。海堂兄妹の母親に贈った品が送り返され、不審に思った木島が病院に確かめに行くくだりなどは、論理に適った話の進め方で、僅かな疑念がやがて疑惑となって広がる醍醐味も味わえます。顎鬚姿の成田三樹夫は珍しいですが、これもちゃんと意味が込められていて(割と簡単に意味は分かりますけど)、細かな設定も抜かりありません。終盤はバタバタした展開になってしまい、それまでのミステリアスなムードが薄められたのは少々残念。

 

田宮二郎のクールさ、安部徹のいかがわしい悪党、獄中から指示を出す内田朝雄のフィクサーぶりは、それぞれいつも通りのイメージですが、成田三樹夫は役が役だけに芝居を抑え気味。東宝から駆り出された司葉子は、悪女の一歩手前という役どころで、東宝作品では見られない一面を覗かせています。

 

今年も私の拙いブログ記事をお読みくださりありがとうございます。

正月三が日は例年通りブログをお休みします。

あしからず。

来年も引き続きよろしくお願いします。

皆様も良いお年をお迎えください。