フィルム・ノワールの世界① 「三人の狙撃者」を観て | パンクフロイドのブログ

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シネマヴェーラ渋谷

フィルム・ノワールの世界Ⅱ より

 

 

今年の夏、一番楽しみにしていた特集が“フィルムノワールの世界Ⅱ”。

中にはこの作品がフィルムノワール?と言いたくなる映画も混じっていますが

滅多に観られない作品を上映してくれるのはありがたいです。

おかげで新作の鑑賞がままなりません(笑)。

尚、鑑賞した映画の記事は、小出しに更新してゆきます。

 

製作:アメリカ

監督:ルイス・アレン

脚本:リチャード・セイル

撮影:チャールズ・G・クラーク

音楽:デイヴィッド・ラクシン

出演:フランク・シナトラ スターリング・ヘイドン ナンシー・ゲイツ ジェームズ・グリースン

1955年1月15日公開

 

ある日の午後、大統領が魚釣りを楽しむために、サドンリーという小さな町を訪れることになりました。町の保安官(スターリング・ヘイドン)は、大統領の警護にあたるに際し、シークレットサービスと共に周辺の家々を調べます。同じ頃、ジョン・バロン(フランク・シナトラ)が、手下のバート(クリストファー・ダーク)とベニー(ポール・フリーズ)を引き連れ、サドンリーを訪れます。彼らは駅を見渡せる一軒家を訪問し、FBIと名乗って家宅捜査します。三人は大統領の命を狙う暗殺者で、列車から降りる大統領を狙撃できる家を物色していたのでした。

 

彼らは家主のペポップ(チャールズ・スミス)、未亡人のエレン(ナンシー・ゲイツ)、その息子ピッジの3人家族を脅迫して家を占拠します。一方、シークレットサービスを指揮するダン・カーニー(ウィリス・バウチイ)は、ペポップと知り合いだったため、保安官と共に自宅を訪れますが、カーニーは射殺され、保安官も腕を負傷します。保安官とペポップは隙を見て外部に事態を知らせようと試みますが、用心深いジョンはなかなか隙を見せません。そうこうするうちにも、大統領を乗せた列車が到着する時刻が、刻一刻と迫って来ます。

 

大統領の命を狙う暗殺者たちと、暗殺を阻止しようとする人々の攻防が繰り広げられる密室劇ですが、その背景には意外と戦争の影が重くのしかかっています。保安官もジョンも軍隊経験者で、ジョンは彼の言動から明らかに戦争後遺症が見られます。

 

また、未亡人のエレンは夫を戦争で亡くしているため、息子のピッジの行動に対して過敏な反応を見せます。息子を危険から守るあまり、拳銃のおもちゃを買うのも、戦争映画を観るのも、ボーイスカウトに参加するのも悉く禁止します。

 

彼女の言動を目で追っていくうちに、敗戦によって交戦権を認められぬ憲法を追いつけられた結果、領海や領空を侵犯する国に対して手出しができず、拉致された国民を40年も取り戻しに行けず、憲法改正しようとすると反対勢力が改憲を拒む日本の状況と重なり、思わず苦い笑いになりました。ただし、エレンは無法者たちから子供を守るため、終盤には真っ当な対処をするのですが・・・。

 

それはともかく、巧妙な伏線、暗殺者との緊迫した会話、クライマックスに向けての緊張感など、シナリオの面白さが際立っています。しかも、80分に満たない枠の中で話が進行するため、凝縮された濃密な内容となっています。この映画を観たら、久しぶりにウィリアム・ワイラー監督の「必死の逃亡者」が無性に観たくなってきました。