憎めない女・緑魔子に胸キュン 「カモとねぎ」「可愛いくて凄い女」を観て | パンクフロイドのブログ

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ラピュタ阿佐ヶ谷

ピカレスク スクリーンで味わう<悪>の愉しみ より

 

カモとねぎ

 

製作:東宝 宝塚映画

監督:谷口千吉

脚本:松木ひろし 田波靖男

撮影:鈴木斌

美術:松山崇

音楽:真鍋理一郎

出演:森雅之 緑魔子 山岡久乃 高島忠夫 小沢昭一 砂塚秀夫

        東野英治郎 藤村有弘 桜井浩子 ロミ山田 桂米朝

1968年3月16日公開

 

石黒信吉(森雅之)は、キザなチンピラ・丸木久平(高島忠夫)、発明狂の堅物・森洋介(砂塚秀夫)を使い、数々の詐欺を働いていました。3人の詐欺師は、競艇でボートのスクリューに細工をして、まんまと300万円を手にするものの、その金を謎の女に持ち逃げされてしまいます。女の残したマッチを手掛りに、暴力バーのホステスである女、麻美(緑魔子)に辿り着きますが、彼女は情夫の保釈金にその300万円を使ったと言います。

 

麻美が金庫破りの技術を持っていたことから、彼女も仲間に入ることになり、信吉は300万円の穴埋めに、税務署員に化けて、麻美が働く暴力バーへ乗込みます。麻美の協力によって、信吉を税務署員と思い込んだ支配人(藤村有弘)は、信吉に脱税の口止め料を払う羽目に。

 

ある日、麻美は信吉と一緒に出掛けたクラブのカウンターで、客が東西油脂の工場に不発弾が埋まっている話を耳にします。詐欺師集団は下見に工場周辺で情報を収集していると、工場の廃液によって地元の人々が迷惑を被っていることを知ります。信吉は新聞記者に化けて公害による奇病の実態を調べるうち、東西油脂に一泡吹かせようと企みます。

 

彼らは自衛隊の不発弾処理班になりすまし、緊急避難命令で工場の人々を退避させ、その隙に工場の金庫にあった手提げ金庫を奪います。ところが、中に入っていたのははした金。一同はがっかりするものの、2通の書類が闘志を奮い立たせます。

 

一通は廃液を有害とする研究報告書で、もう一通は秘かに製造しているナパーム弾の米軍との受注契約書でした。信吉たちは2通の書類をネタに、東西油脂を脅して金をせしめようとしますが、逆に社長の大井(東野英治郎)の罠に嵌り、危うく信吉、久平、洋介は命を落としかけます。

 

普段野暮ったい演出をする谷口千吉監督ですが、この映画に関しては洒落っ気があり、弾けてもいます。しかも、森雅之が初老とは言え、緑魔子をメロメロにさせるだけのダンディぶりを見せつけます。渋いおじ様の反面、長い黒髪フェチというギャップもいい感じですね。ショートカットの緑魔子には目もくれないため、余計彼女が森に熱を上げてしまいます。緑魔子が演じる麻美は、本来3人組から300万円を奪った性悪女なのですが、話が進むにつれ、片想いをする可愛い女としか思えなくなります。

 

映画の中で特に気に入ったのは、本筋とは関係ない枝葉の部分。山岡久乃を始めとする青少年教育に力を入れるおば様たちに、わいせつ罪の冤罪を着せる話の運びには抱腹絶倒。このエピソードはこれで終わりかと思いきや、彼女たちにした仕打ちが、終盤になって信吉がしっぺ返しを食らう繋がりを見せるあたりも気が利いていて実に心憎い演出。麻美が最初に奪った300万円が、最後の最後に生きてくるところも気持ちのいい終わり方でした。

 

 

可愛いくて凄い女

 

製作:東映

監督:小西通雄

脚本:舟橋和郎 池田雄一

撮影:山沢義一

美術:森幹男

音楽:八木正生

出演:緑魔子 天知茂 城野ゆき 浦辺粂子 今井健二 大村文武

        園佳也子 国景子 大坂志郎 山本緑 須賀良 小林稔侍

1966年9月17日公開

 

分不相応なマンションに暮している池辺千枝子(緑魔子)は、周囲にはタイピストを装っているものの、実は名うてのスリでした。千枝子を一人前に仕込んだのは黒木(天知茂)で、彼は師匠でありながら千枝子と関係を持っています。ある日千枝子が、同じマンションに住む榊美和子(城野ゆき)に盗品のハンドバッグを売ったことから、昔馴染みの刑事・山崎(大坂志郎)に目をつけられます。美和子が千枝子から買ったことを言わなかったため難を逃れますが、黒木と千枝子は危険な割に儲けの少ない仕事に見切りをつけます。

 

今度は、ムショ仲間の飯島ゆき(浦辺粂子)、堀江さと子(園佳也子)と3人で、宝石店からダイヤモンドを盗む計画を立て、3人の連携プレイによって見事に成功します。一方、銀行員で美和子の夫である榊吾郎(大村文武)は、粘着質のやくざ野坂(今井健二)による美人局の罠に嵌り、自分の女房を差し出すよう迫られます。美和子に恩義のある千枝子は、彼女を野坂の毒牙から守るため、金で解決するよう交渉役を買って出ます。

 

その結果、美人局であることを見抜かれた野坂は、100万円で手を打つことに了承します。ところが、千枝子はその100万円までも野坂の懐から掏ったため、野坂は怒り狂います。やくざの怖さを知る黒木は、千枝子の身を案じ、彼女を微罪で刑務所に入れて危険を避けます。ところが、千枝子が出所した直後、彼女は黒木の使いと名乗る野坂の子分たちに、ゆきと一緒に拉致されます。

 

緑魔子演じる清濁併せ持つ女スリが何とも魅力的。刑事を手玉にとるしたたかさがある一方で、師匠の黒木には師弟関係を取っ払いデレデレ状態。また、ハンドバッグの出処に口を割らなかった美和子のために、一肌脱ぐ女の心意気を見せます。

 

緑魔子がスリという設定のため、その鮮やかな手口もたっぷり拝めます。浦辺粂子、園佳也子と組んで、チームプレイで銀座の高級宝石店からダイヤモンドを盗み取るシーンなど、単純な手口ながらハラハラドキドキさせます。その際には、ワンちゃん、バッグ、雑誌などの小道具がいいアクセントとなって、サスペンスに彩を添えます。

 

前半はコメディ描写もあり、犯罪映画でもゲーム的な愉しみがあるのですが、強面の今井健二演じるやくざが登場してからは、一気に緊迫感が増します。美人局の落とし前は金で片をつけるのが常識ですが、このやくざは目には目をというやり方で、銀行員の貞淑な奥様を抱かせろと迫ってきます。

 

この陰険なやくざに啖呵を切る時の、魔子姐さんのかっこいいこと!ただし、100万円で手打ちしたのに、その金も掏ってしまうのは明らかにヤリ過ぎ。でも、この分別のなさと脇の甘さも、この映画の緑魔子ならば赦せるかも。

 

天知茂演じる黒木は、千枝子と寝ても師弟関係は崩さずにいます。女に情を見せた途端、ロクな結果にならないと、頑ななまでに信じているからであり、実際その通りになるのです(笑)。それでも、ラスト近くに二人が交わす会話から、黒木が真の男女の仲になったことを、決して後悔していないことが十分に読み取れます。