手に汗握る 「ウォーリアー」を観て | パンクフロイドのブログ

パンクフロイドのブログ

私たちは何度でも立ち上がってきた。
ともに苦難を乗り越えよう!


ウォーリアー


amazon ストーリーより

アルコール中毒の父親(ニック・ノルティ)を逃れ、母親とともに家を出たトミー(トム・ハーディ)が14年ぶりに実家に戻った。父の指導により、学生時代はレスリングの選手として名を馳せていた彼は、総合格闘技の大イベント“スパルタ”に出場するため、父にトレーナー役を依頼する。一方、トミーが家を出て以来、生き別れとなっている兄のブレンダン(ジョエル・エドガートン)もまた、かつて格闘家だったが、今は教師として働いていた。しかし、娘の病気にかかる医療費のため家計は厳しく、銀行から自己破産をすすめられてしまう。愛する家族を守るため彼に残された道は、総合格闘技の試合で金を稼ぐことだった。奇しくも再び格闘技の世界へと足を踏み入れた兄弟が再会したのは、“スパルタ”の会場だった


製作年:2011年

製作:アメリカ

監督:ギャヴィン・オコーナー

脚本:アンソニー・タムバキス クリフ・ドーフマン ギャヴィン・オコーナー

原案:クリフ・ドーフマン ギャヴィン・オコーナー

撮影:マサノブ・タカヤナギ

音楽:マーク・アイシャム

出演:ジョエル・エドガートン トム・ハーディ ニック・ノルティ ジェニファー・モリソン

2015年9月19日公開


3年ほど前にTBSラジオ「たまむすび」で、町山智浩氏がこの映画を紹介した時から観たかった作品です。シネマカリテ新宿でひっそりと公開されていたので、危うく見逃すところでした


ボクシングやプロレスなど格闘系の映画は、いかに観客を試合に熱中させるか、これに尽きるのではないでしょうか?「ロッキー」然り、「カリフォルニア・ドールズ」然り。日本映画では「百円の恋」もありました。その点、総合格闘技の試合を存分に盛り込んだ本作は、申し分のない映画と言えます。トーナメントが準決勝、決勝と進むにつれ、大きなうねりとなって盛り上がりを見せる流れも、アメリカ映画らしい演出に富んでいます


人間ドラマもいい。アル中の父親の暴力から、母親と逃げた弟と父親についていった兄との対比。どちらも父親を憎んでいるにも関わらず、決して共闘関係にはなりません。ブレンダンは父親がレスリングの才能があり余るトミーに力を注いだことに嫉妬があり、今もまた弟が実家に戻って父親にトレーナーを頼んだことに心がざわつきます。一方トミーは、子供の頃に兄が一緒に逃げてくれなかったことにわだかまりがあり、兄が平穏な家庭を持ったことも心穏やかでいられなくなります


観客はどちらかと言えば、兄のブレンダンに肩入れしたくなります。父親の愛を得るために家に留まったものの、その愛は受け入れられず、結局弟からも疎まれます。父親を反面教師として捉え、妻と娘2人の幸せな家庭を築くも、娘の一人が難病に侵され治療には莫大な金がかかります。その上、銀行からは融資が打ち切られ、家のローンの返済の目処も立たず、家を追い出されようとしている崖っぷち状態。トミーほど格闘技のセンスがあるわけでないブレンダンが、妻の反対を振り切り高額の賞金を求め、総合格闘技“スパルタ”に参戦する姿を、観客ならば当然応援したくなります


ただし、作り手は兄にばかり耳目を集めようとするのではなく、弟にも観客が関心を持つように工夫が施されています。彼が海兵隊を離れたのは何故か、憎しみを引き摺っている息子が父親をトレーナーにしてまで総合格闘技に出場する目的は何か。トミーのベールに包まれた部分を、小出しに剥がしていく演出も巧みです


父親のパディも実に辛い立場に置かれています。妻と2人の息子にした仕打ちを悔い、3年前から酒断ちをしているにも関わらず、長男には嫁や孫にも会わせてもらえず、トミーのトレーナーになっても、彼からは距離を置かれます。パディは常にメルヴィルの「白鯨」の朗読を聴いており、父親の心中を象徴しています


試合内容についても語りたいのですが、これから観る方の興を削ぐことになるので割愛します。ただ、ジョエル・エドガートン、トム・ハーディの動きは迫力があり、カメラワークも良いため、臨場感を十分味わえます。男の闘争本能を掻き立て、胸を熱くさせる映画です。そして、「マッド・マックス」の最新作同様、リアルタイムにスクリーンで観たことを、後々自慢できる映画でもあります