具体的に内容を書けないのがもどかしい「トールマン」を観て | パンクフロイドのブログ

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広大な森と迷路のような地下道に囲まれた炭鉱町コールド・ロック。6年前の鉱山閉鎖で急速に寂れたこの町で、次々と幼い子供たちが消えていく連続失踪事件が発生。犠牲者は既に18人。謎は謎を呼び、人々は正体不明の誘拐犯を“トールマン”と名付け、恐れていた。そんなある晩、夫に先立たれ地元で診療所を開く看護師のジュリア(ジェシカ・ビール)は、自宅から何者かに連れ去られた子供を追い、傷だらけになりながらも町外れのダイナーに辿り着く。そこに集う住人たちの奇妙な行動。やがて、想像を絶する真実が明らかになったとき“トールマン”は忌わしい伝説と化す。


トールマン 公式サイト



パンクフロイドのブログ-トールマン1


製作:アメリカ カナダ フランス

監督・脚本:パスカル・ロジェ

撮影:カマル・ダーカウイ

出演:ジェシカ・ビール ジョデル・フェルランド スティーヴン・マクハティ

2012113日公開



122日をもって、シアターN渋谷が閉館になるため、ここで観る映画も「トールマン」が最後となります。ロバート・アルドリッチ監督の「合衆国最後の日」で締めても良かったのですが、この映画館の特徴を考慮した場合、旧作よりもジャンル映画の新作のほうが、見納めには相応しいと思い、急遽鑑賞することに決めました。


チラシの情報だけでホラー映画と思いながら観ていましたが、実はそんな単純な映画でないことが、後半になるに従って思い知らされることになります。確かに寂れた炭坑町で、次々と幼い子供たちが消えていく話はホラー要素たっぷりで、おまけに街の人々は子供を攫う人物をトールマンと名付けていて、怪物映画の要素も加わってきます。更に映画の中盤では、白だと思っていた人物が、実は黒であることを知らされる意外な展開も待っています。


そして、“容疑者”が警察に拘束された時点で、事件は収束の方向に向かうものと思っていると、この後にもうひとつの物語が浮かび上がってきます。映画の冒頭で、子供を攫われたと思しき女性が、FBI捜査官に子供は見つからなかったと報告を受ける場面があります。そして、“容疑者”が拘束される直前に、もう一度同じ場面が挿入されます。しかし、その場面は最初に観たときとは、まるで別の様相を呈しているのです。



パンクフロイドのブログ-トールマン2


“容疑者”を拘束したものの、攫われた子供たちの消息は不明で、手がかりを掴みたい警察は、子供を攫われた母親の一人を“容疑者”と面会させます。しかし、その試みは失敗に終わり、“容疑者”は、子供が生きていないことを示唆します。普通の映画だと嫌な気分のまま、ここで幕となりますが、物語はまだまだ続きます。しかし、それを具体的に書いてしまうと、興が削がれる恐れがあり痛し痒しです。ネタバレになってしまう要素が、映画の中に散りばめられていて、迂闊に話を書けないのが残念ですが、人によっては感動させる結末になっています。


それは、ある人物が犠牲になることで成立しているからです。ただ、それ以前に私は“容疑者”が子供を攫った動機に納得できません。確かに“容疑者”が,その行為を行なわざるを得なかった背景は理解できます。ただ、いかなる正当な理由があろうとも、子供が誘拐されたために、多くの人々が苦しみを味わったのは事実であり、特に子供を攫われた母親の気持ちは、同じ立場の人間でなければ実感できないでしょう。本編を観ていない方には、何が何やらわからないと思いますが、具体的な指摘をするとネタバレになりかねないので、控えざるを得ません。ブログの記事にしにくい内容の映画ですが、意欲的な試みでホラー映画に一石を投じた作品として評価したいです。