午前十時の映画祭 「荒野の七人」を観て 後編 | パンクフロイドのブログ

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私たちは何度でも立ち上がってきた。
ともに苦難を乗り越えよう!

ここからはクライマックスの戦闘場面、結末について書きますので、

まだこの映画を観ていなく、これから観ようとしている方は読まないほうが

良いかもしれません。


7人のガンマンを迎えて村は一変した。

クリスは村人達に戦う準備をさせた。

防壁を築いたり銃の使い方を教えたり、7人の男達と村人の間には奇妙な友情が生まれていった。

チコはペトラという村娘と仲良くなった。

そんな時に、カルヴェラ一味が村を襲って来た。

凄惨な拳銃戦が展開された。

野盗は撃退された。

死傷者も出た。

村の雑貨商ソテロは臆病者で戦いにまき込まれるのを恐れていた。

クリスはこの機を逃さず一味を全滅させようと深夜野盗のキャンプを襲った。

しかし誰もいなかった。

ソテロの裏切りでカルヴェラは7人の逆をついて村を占領していたのだ。

7人は村を追い払われた。

しかし、クリスはもう一度村へ引返し戦うことを皆に告げた。

逆襲は掠奪に酔ったカルヴェラ一味の隙をついた。

戦闘は激烈をきわめたが、カルヴェラも一味も全滅できた。

味方もハリー、ブリット、リー、オラリーが斃れた。

チコはペトラと暮らすことになり、クリスとヴィンは村を去った。



パンクフロイドのブログ-荒野の七人2


「七人の侍」と「荒野の七人」は一行が村に着いてから大きく展開が変わってきます。

最初の戦闘後、村の中から裏切り者が現れることです。

盗賊たちと戦うことで命を落とす危険性より、食料を差し出すことで生き延びる選択を

した結果、クリスたちはその場で銃を奪われ、失意のうちに村を出る状況に

追い込まれます。



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オラリーが村を出るために身の回りのものを整理している途中、彼を慕っている

村の子供たちが現れます。

子供たちは、村を助けに来た彼らを裏切った自分たちの父親を卑怯者と

口走ってしまいます。

するとそれを聞いたオラリーは子供の尻を叩いた後で次のように諭します。

「俺たちとお前たちの父親では立場が違う。俺たちが死んでも誰も悲しまないが、

父親が死ねばお前たちの家族は悲しむだろう。お前たちの父親は自分が死ぬことを

恐れて盗賊に屈したんじゃない。お前たちを守るために屈したんだ」

「七人の侍」にはない視点で語られた素晴らしい場面でした。

そしてこのセリフがクライマックスの戦闘場面で生かされます。



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一度は村を去った七人ですが、再び村に戻る決意をします。

そこで重要になるのが動機づけ。

一度村人に裏切られた彼らが、再び戦う決意をするには相当な理由が必要になります。

そこでジョン・スタージェス監督は最後のカードの切り札を出します。

即ち農民出身のガンマンという持ち札を。

「七人の侍」では中盤、三船敏郎演じる菊千代が侍ではなく農民の出であることが

明かされます。

一方「荒野の七人」ではようやくここで、チコが農民出であることを、クリスの口から

明かされます。

物語の後半にこのカードを使ったのは正解で、「農民への不満」を言う農民出のチコを

見て、他の六人が村に引き返す理由に説得力が与えられます。



パンクフロイドのブログ-荒野の七人11


そして村に戻った七人と盗賊たちの銃撃戦が開始されます。

村に戻った七人を見て、村人たちも彼らに加勢していきます。

ハリー、ブリット、リーが斃れていく中、オラリーも彼の身を心配した子供たちを

庇って命を落とします。

息を引き取る前にオラリーは子供たちに言います。

「見てみろ、お前たちを守るために戦っている父親の姿を」

やがて盗賊の首領だった男も、クリスの銃で斃れ戦いは終わりを告げます。

惜しむらくは戦闘の幕の引かせ方。

「七人の侍」で農民出の菊千代が野武士の首領を倒したことに意味があったように、

ラスボスを倒すのはクリスではなくチコであってほしかったです。

特にラストでクリスがヴィンに「勝ったのは農民たちだ。俺たちではない」と言うセリフを

生かすためにも。



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「七人の侍」と「荒野の七人」では人物設定を若干変えています。

「七人の侍」の菊千代と勝四郎(木村功)の役どころを、チコ一人に集約しています。

「七人の侍」の五郎兵衛にあたるのがハリーになりますが、ガンマンたちが農民の申し出を

引き受けるのは何か裏があると疑っているキャラクターづけをしています。

五郎兵衛が前半のうちに敵に斃されてしまうのに対し、ハリーはクライマックスの戦闘で

死にます。

息を引き取る前のクリスとのやり取りは、彼のキャラクターが生きた粋な演出が

されています。

死を恐れるガンマン、リーはこの映画のために作られたキャラクターですが、

正直物語にうまく溶け込んでいたとは思えません。

彼が戦闘の前に死を恐れなくなったエピソードがひとつ欲しかったところです。

盗賊の首領は悪党の要素が足りないように思えました。

まず七人の命を取るチャンスが十分ありながら、見逃したこと。

七人の命を取らずに村から追い出すだけにした理由をもっともらしく言いますが、

あまり説得力は感じられませんでした。

それと食料を奪う場面は見せていても、女を奪う場面を一切見せていないのも、

残忍さに欠けています。

食料を奪われるよりも、女を奪われる方が男にとっては堪えるのですから。

その点「七人の侍」は非常に隠微な表現で、盗賊たちの暴力性を描いていました。



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今回初めてこの映画を大きなスクリーンで観たが、馬の疾走シーン、銃撃戦の迫力など、

大きな画面で観ることの意味を改めて認識しました。

基本的に映画は映画館で観て、DVDは細部の記憶を確認するのに留めておいた方が

良いのかもしれません。