メキシコの寒村イスカトランの村人達は毎年収穫期になると恐怖に戦いていた。
カルヴェラが率いる野党がきまって掠奪にくるからだ。
しかし、今年はもう我慢が出来なくなっていた。
子供達は飢え、村を去っていく農民がふえていた。
ヒラリオと2人の農夫は皆を代表して戦うことを決議、銃を買いに国境のアメリカの町やって来た。
彼らが町に着いた時に騒ぎが起きていた。
原住民の死体を白人の墓地に埋める、埋めないの騒ぎだ。
全身黒ずくめのガンマン、クリス(ユル・ブリンナー)が無造作に、俺が埋めてやろうと買って出た。
そこへやりとりを見ていたヴィン(スティーヴ・マックイーン)も助手を志願した。
墓地で銃を構える数人の男達、だが、クリスとヴィンは鮮やかにこの騒動を片づけてしまった。
ヒリイオ達はこの有様を見てクリスにわけを話して力になってもらうことにした。
同意したクリスは腕の立つガンマンを探し始めた。
最初に仲間に入ったのがクリスの古い友人ハリー・ラック(ブラッド・デクスター)だった。
ヴィンも仲間に入った。
ナイフ使いの名人ブリット(ジェームズ・コバーン)と早打ちのリー(ロバート・ヴォーン)も加わった。
それに西部で名高いオラリー(チャールズ・ブロンソン)も仲間に入れた。
そんな中にチコという男がいた。
経験も浅く40人もの敵を相手に戦うには若過ぎた。
だがチコはクリスを尊敬していた。
チコは強引に仲間に入れてもらった。
もちろん黒澤明監督「七人の侍」のリメイクです。
基本的にオリジナル通りに物語は展開していきますが、物語の流れ、
人物設定等に若干アレンジが施されています。
ここでは「荒野の七人」を「七人の侍」と比較しながら、その違いについて
書いていきます。
「七人の侍」の上映時間が3時間半、「荒野の七人」が2時間ちょっと。
したがって後者は時間の関係上、各場面がアッサリした描写の印象を残します。
ただし時間が短い分、スピーディーな展開にはなります。
オープニングの場面から違いは表れます。
「七人の侍」は村を襲う野武士たちの話を盗み聞きした農民の一人が、
村人たちに知らせる場面から始まります。
一方「荒野の七人」は盗賊たちが村の食料を奪っている場面から始まります。
盗賊たちの残忍さを示すには、一見後者の方がわかりやすい描写になって
いますが、実は前者の方がその怖さを表した表現になっています。
今すぐ村を襲おうとする部下に対し、野武士の首領は田植えの時期の今
襲うより、米が収穫された後に襲うよう戒めるのです。
つまり今襲ったのでは食料も限られているので、収穫が終わった頃に村を襲い、
食料を根こそぎ奪うつもりであることを意味しています。
「七人の侍」は食に関する描写が多いので、参考までに
「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」に出演したときの
お菓子研究家・福田理香の“フード理論”のポッドキャストを貼付しておきます。
盗賊の略奪に我慢のならない村人たちは、対抗策を考えます。
「七人の侍」が最初から侍を雇おうとするのに対し、「荒野の七人」は
当初村人たちが銃を手に入れようと町に出ます(途中クリスの助言で
人を雇う方向に変更します)。
村人たちが戦いのリーダーとなる人物を見つける経緯も異なります。
「七人の侍」では志村喬演じる勘兵衛がお坊さんに変装し、赤ちゃんを人質に
立て篭もった盗人を斬るのを見て決めます。
一方「荒野の七人」では先住民の埋葬を拒否している白人が狙っている中、
クリスとヴィンが霊柩用の馬車に乗り墓地まで行き、そこで鮮やかに
相手の腕を撃ち、拳銃を使わせなかった様子を見て決めます。
決め手となったのは職業の違う者が自分たちのためにどこまで命を
賭けてくれるかです。
勘兵衛は赤ちゃんを助けるために武士の象徴とも言える髷を切りました。
クリスは先住民が白人と同じように手厚く葬るべきだと銃を持った白人たちと
戦いました。
リーダーが決まり、次は一緒に戦ってくれる男たちを探す場面に移ります。
ただし時間の制約上「荒野の七人」はその場面をあっさり描いています。
しかも「七人の侍」では勘兵衛の参謀役となる七郎次以外は、町で新たに
武士を集めるのに対し、「荒野の七人」ではチコとリー以外はクリスと
顔見知りの間柄。
「七人の侍」で侍探しの楽しさを味わった私としては、少々物足りないように
思えました。(後編に続く)