夢の王国 | ひなたぼっこの縁側で

ひなたぼっこの縁側で

ひだまりの庭に遊びにいらしてくださって ありがとうございます♪
うつくしいものと出逢ったこと、こころ動かされたことなどを、
ゆっくりペースで つづっています。

 

雨あがりの朝、お庭の

初代ぴなちゃんが眠るそばに

植えたお花が咲いていました。

 

小さな羽根のような小さなお花は、

パールピンクというサルビアです。

 

 

 

 

前向きにならなきゃという想いで、

昼間は家事もがんばって

にゅーぴなちゃんのお世話もして、

家族に心配かけないように、と

なるだけにこにこしているけれど、

ほんとうはまだかなしくて……、


心の底に湖があるみたいです。


時間が助けてくれるまで、

しかたがないですよね。

 

 

鴨川はすっかり初夏の景色です。

 

 

外の空気に触れようと

三条へおでかけして、

「ハピネス」という

映画を観ました。

 

 

「ハピネス」は

淡いトーンの、静かで

やさしい、美しい物語でした。

 

生まれつきの心臓の病気で

残りの生命があとわずかな

女の子・由茉ちゃんが、

いつもどおりの日々を過ごして、

その日を迎えるお話です。

 

生きているあいだに、

好きなお洋服を着たり、

行ってみたいところへ

行ったりしながら、

「神さまっているのかな」

「なぜ生きて、死ぬのかな」

と、彼女なりに考えるのです。

 

 

 

 

原作が好きな小説だったので

観てみたのですが、

大切な存在を亡くした

今のわたしの気持ちに

寄り添ってくれて、おもわず

ほろほろと泣きました。

 

映画館で

たくさん泣いた日、

ゆっくり眠れて

穏やかな心持ちで目が覚めたので、

観に行ってよかったのだとおもいます。

 

 

物語は、大好きな彼女を

見守りながら、共に行動する

恋人の雪夫くんの視点で

描かれていきます。

 

ふたりで旅した夜に、

雪夫くんは、不思議な

夢を見る場面があります。

 

「3ヶ月後、隕石の衝突で

世界が終わる。人々は混乱し、

各地で事件が起きた、

何をやっても無意味だからと。


……けれど、しばらくすると、人々は

落ち着きを取り戻した。

 

農家は収穫されることのない野菜を作り、

大工は人が住むことのない家を建てた。


皆、自分の日常を生き始めたのだ。


そして……、」


その夢での世界が終わる時、

雪夫くんは、目を覚まします。


そこにはまだ、先に起きて

かわいくお着替えしていた

由茉ちゃんがいるのです。

 

 

 

原作でも(もう少し長いです)

この夢の箇所が示唆的で、ものすごく

印象に残っています。

 

「明日、世界が滅びるとしても、

わたしはりんごの木を植えるだろう」

 

という、昔の人の言葉を思い出します。


(マルティン・ルターの言葉という説、

いろんな説がありますが、

人の心に残っているのは確かなのです)

 

 

 

由茉ちゃんは、死が近づくにつれ

「神さまはいる」

「生きることには意味がある」

と、答えを見出していきます。

 

生まれてきて、出会えた奇跡は、

ものすごく幸せなことなのだと。

神さま、

この世に産み落としてくれて

ありがとうって。

 

「死ぬことには意味がないと

思っていたけれど、

きっと意味があるんだよ、

『ちゃんと、生きましたか?

生まれてきて、よかったですか?』

って、考えるためなんだよ。」

 

この場面は、ずきっと胸に響きました。

 

 

雪夫くんの背中を押してくれる

姉の月子さんが、お茶目でユーモラスな

味わいを醸し出しています。

 

公園で仲間外れにされていた

女の子を助けてあげた時、

「助けたかったのです。昔のわたしを」

と、お姉さんは語ります。

 

いじめられて、苦しい想いをして、

同じ生きるのなら、勇気を持って

自分の心に素直に生きようと

悟られたのかもしれないですね。

 

 

 

 

女の子が亡くなってからの日々も

静かなトーンで描かれます。

 

お父さんとお母さん、雪夫くんが、

女の子が残してくれたものを

それぞれに温かく慈しみながら、

生きていくのです。

 

周りの人たちの心のなかに、

冬のひだまりのように輝いて、

女の子は、生き続けているのです。

 

愛らしく、純粋な

永遠の夢の王国みたいに。

 

(女の子の大好きなお洋服も

「Innocent World(純粋無垢な世界)」

でした)

 

 

ふたりがいつもお茶をしていた

絵画が飾られている喫茶店に

雪夫くんがひとりで訪れる場面も

柔らかい余韻がありました。

 

乙女クラシカルでレトロなこのお店

(原作では「宵待草」)は、

吉祥寺の「ゆりあぺむぺる」という

カフェなのだそうです。


 

細かなところでは、ふたりが

このカフェで会う場面で、

うさぎさん(フレデリックくん)が

ふたりの間の椅子に座っていたのが

かわいかったです。


女の子のお部屋も

憧れと好きなものと夢が

いっぱいの雰囲気。


それから……、「あ、」と

気づいたのは、ふたりが

レストランでカレーを食べた時、

モーリス・ラヴェルの

「亡き王女のパヴァーヌ」が

流れていたところ。

 わたしの大好きな曲なのです。



 


女の子ができるかぎり、

したいことをして生きたこと、

雪夫くんが見た不思議な夢、

お姉さんの生き方、どこかしら

つながっているような気がするのです。

 

生命もいつかは終わりが来るけれど、

だからこそ、淡々とした日々も、

いっぱい生きること。


生まれてきて、好きな人や

好きなものと出会えることは、

奇跡のような幸せだということ。

 

明日世界が終わるとしても

りんごの木を植えようとする想いは、

無駄にはならなくて、別のかたちで

生き続けていくように感じます。

 

 

止まったようになっていた

心の底のつめたい湖に

波が立って、水面に

光の珠が光りました。

 

帰宅して、庭を見て、

風に揺れるお花を見て

心のなかでつぶやきました、

 

純粋無垢なる

亡き王女ぴなちゃん。

いっしよに過ごした幸せや、

あなたと出会えた幸せ、

夢の王国は、永遠だよ。


帰り道、夫やお友達、

いろんな人と出会えたことは、

全て幸せな奇跡なんだと、

感謝の気持ちでいっぱいに

なりました。

 

 

 

 

 

パンフレットが清楚で上品で、

内容も充実していました。

 

監督さん、原作者、

俳優さんたち、それぞれの

インタビューや解説、

 

作中に登場したお洋服について

Innocent Worldのデザイナー

藤原ゆみさんによる

丁寧な説明など、きれいで

読みごたえがありました。

 

 

映画『ハピネス』(2024)』

(映画の公式サイトです)


Innocent World

(由茉ちゃんの

大好きなお洋服屋さんです。


再現された大阪本店の世界、

ロマンティックで

美しかったです。)