江神シリーズ初短編集届く
二男がゆうメールを小脇に抱えて帰ってきた。
玄関ポストの中で威風堂々と寝転がっていたらしい。
発送元は東京創元社、宛先は僕と家内の連名。
著者代送のスタンプが押してある。
郵送物は見ずとも誰の著作物か分かる。
出版社関係の知人は何人かいるが、
作家業をしている知人は一人しかいない。
「東京創元社か。あれから、何年になるのかなあ?」
僕は、そのゆうメールを開封しながら呟いた。
江神二郎の洞察 有栖川有栖

一番最初に著者代送のスタンプが押されたゆうメールを
受け取ったのも東京創元社だった。
追っかけるように、有栖川さんが我が家に来てくれて
おでんで作家デビュー祝いをしたのを覚えている。
もう自分のことのように嬉しかった。
それから数十年の時が流れても、新刊が出る度に送ってくれ、
僕の本棚の1連ほどは有栖川本で埋まっている。
二男は中学にあがってから有栖川さんの本を読み出し、
自分達相手に息をハアハア言わせながら遊んでくれるあのおじさんは、
どうも僕のようにふらふらとした人ではなさそうだと、分かってきたようだ。
僕が、送られてきた本をぱらぱら読んでいると、
三男が不意に言った。
「おとーさん、その本いくらするの?」
「2,000円もしないかなあ?」
「じゃあ、ちっとも儲からないね。
2,000円じゃ、ごはん食べに行ったらなくなっちゃうよ。
だから、おとーさんは本を書かずに売っているの?」
「いや、ちょっと違うんだけどね。
あのおじさんがこの本を書いて作って売っているんじゃなくて、
おじさんは、小説を書くのがお仕事で、それを出版社が本にして
たくさんの本屋さんで売るねんな」
「書くだけで、お金がもらえるん?じゃ、おとーさんも書けばいいやん」
と、ずけずけと痛いところを突いてくる。
「それだけの文才があれば、とっくに書いとるわ!」とは、言わない。
「おとーさんは、本屋をする為に生まれてきたんだ。
人にはそれぞれ天から与えられた使命があるのよ。
おまえも大きくなったら、天から声が降りてくる」
と、僕は三男の頭をなでながら言った。
「おとーさん、店にいるの似合わんと思うけどな。
その声、ほんまに聞いたん?」
そう言って、三男はリビングのドアを開け消えていった。
なかなか鋭いヤツよ。
商売上手なら、もっと違った生き方をしているだろう。
何を目指しているんだろうねえ、おいらは?
玄関ポストの中で威風堂々と寝転がっていたらしい。
発送元は東京創元社、宛先は僕と家内の連名。
著者代送のスタンプが押してある。
郵送物は見ずとも誰の著作物か分かる。
出版社関係の知人は何人かいるが、
作家業をしている知人は一人しかいない。
「東京創元社か。あれから、何年になるのかなあ?」
僕は、そのゆうメールを開封しながら呟いた。
江神二郎の洞察 有栖川有栖

一番最初に著者代送のスタンプが押されたゆうメールを
受け取ったのも東京創元社だった。
追っかけるように、有栖川さんが我が家に来てくれて
おでんで作家デビュー祝いをしたのを覚えている。
もう自分のことのように嬉しかった。
それから数十年の時が流れても、新刊が出る度に送ってくれ、
僕の本棚の1連ほどは有栖川本で埋まっている。
二男は中学にあがってから有栖川さんの本を読み出し、
自分達相手に息をハアハア言わせながら遊んでくれるあのおじさんは、
どうも僕のようにふらふらとした人ではなさそうだと、分かってきたようだ。
僕が、送られてきた本をぱらぱら読んでいると、
三男が不意に言った。
「おとーさん、その本いくらするの?」
「2,000円もしないかなあ?」
「じゃあ、ちっとも儲からないね。
2,000円じゃ、ごはん食べに行ったらなくなっちゃうよ。
だから、おとーさんは本を書かずに売っているの?」
「いや、ちょっと違うんだけどね。
あのおじさんがこの本を書いて作って売っているんじゃなくて、
おじさんは、小説を書くのがお仕事で、それを出版社が本にして
たくさんの本屋さんで売るねんな」
「書くだけで、お金がもらえるん?じゃ、おとーさんも書けばいいやん」
と、ずけずけと痛いところを突いてくる。
「それだけの文才があれば、とっくに書いとるわ!」とは、言わない。
「おとーさんは、本屋をする為に生まれてきたんだ。
人にはそれぞれ天から与えられた使命があるのよ。
おまえも大きくなったら、天から声が降りてくる」
と、僕は三男の頭をなでながら言った。
「おとーさん、店にいるの似合わんと思うけどな。
その声、ほんまに聞いたん?」
そう言って、三男はリビングのドアを開け消えていった。
なかなか鋭いヤツよ。
商売上手なら、もっと違った生き方をしているだろう。
何を目指しているんだろうねえ、おいらは?