怒涛の6月初日
とある日の昼下がり。
静けさを切り裂くような女性の叫び声が・・・
と、いうのではなく、
店入り口から、「KENさ~ん、居る~?」という野太い声がした。
この声、紛れも無くYやんだ。
今日は通常より通販の受注が多く、家内はその対応にアタフタしている。
非常用助っ人もいない。
僕はと言えば、小難しい本の査定をしていた。
そんな日に限ってなぜYやんが・・・
Yやんは10年来の常連さんだ。
何とか往なさなくては。
「飴玉、あげるからまたおいで」
「おおきに。ほんじゃまた。違うて~。
どうやった、この間預けてた古銭。やっぱり、あかんか?」と、Yやん。
「Yやん、ちょっと忙しいねん。結論だけでいいか」と言うと、
Yやんが、にんまりして
「なんぼ?」
僕は「○○円で引き受けるわ」と。
「あんまり値打ちないねんな。そんなもんか」
「そんなもんや。Yやんの持ち込んだ古銭は、ややこしいねん」
「どうややこしいん?」
「あかんて。今、本の査定しているやろ。
それが終わったら、通販の処理が待ってますねん」
「なあ、頼むわ。教えて~な~」と、引き下がらないYやん。
「講釈しだすとなごうなるねん。ほら、お嬢もバタバタしているやろ」
「どこにお嬢がおるねんな」
「聞こえたら、トンカチが飛んでくるで。代金はこれ、講釈は今度。じゃ、また」
流石に、Yやんもしぶしぶ帰って行った。
そこへ、電話が鳴った。
受話器をあげると「KENさん、毎度。面白いものが手に入りましてん。
何に使うのか分からんものがいくつかと木像が一つですねん。
あっ、ついでに着物を2ケース、持って行きますわ。
今から、もって行ってもよろしい?」
「本は?」
「本はおまへん」
「えっ?本はない? ああ~、何にしても今日はあきませんわ。来週にしましょや」
「遅そうなってもええんですけどね」
「今日は、正味あきませんわ。じゃ、電話切りますわ」
どうも僕の店には風変わりな連中が集まるきらいがある。
ところでYやんが店に持ち込んだのは「天保通宝」という古銭だった。
古銭なんて僕には分からないが、
持ち込まれたのがたまたま、天保通宝だった為、
多少の知識があった。


天保通宝は、江戸末期から明治にかけて流通した銭貨だ。
5億枚近く鋳造されてれたという事になっているが、
実際には7億枚はあると言われている。
公鋳銭と言って、天下の管理の下に造られた通貨だ。
・・・と、いうのは建前。
江戸時代には、ご存知のように
各藩内でのみ使用可能な地方貨幣というのがあった。
これにかこつけて、
あちこちの藩が天保通宝を鋳造した。
これを密鋳銭と言い、恐ろしい数量が鋳造されていたらしい。
質は推して知るべくだが、
コレクション品として価値がないかというと、
一概にはそうとも言えない。
師匠から聞いた話では、
千円くらいのものから、目が飛び出るほど高いものもあるらしい。
・
・
・
しかし、障子の向こうから聞いていると古本屋での話ではない。
「うちは古本屋だ」と言うのだが、常連さんは、
こうして何でもかんでも平気で持ち込んでくる。
いっそ便利屋に転身した方がよいのだろうかと思う今日この頃だ。
さて、長男が応援に来てくれたようだ。
こんな時間だが、また仕事に戻る。
静けさを切り裂くような女性の叫び声が・・・
と、いうのではなく、
店入り口から、「KENさ~ん、居る~?」という野太い声がした。
この声、紛れも無くYやんだ。
今日は通常より通販の受注が多く、家内はその対応にアタフタしている。
非常用助っ人もいない。
僕はと言えば、小難しい本の査定をしていた。
そんな日に限ってなぜYやんが・・・
Yやんは10年来の常連さんだ。
何とか往なさなくては。
「飴玉、あげるからまたおいで」
「おおきに。ほんじゃまた。違うて~。
どうやった、この間預けてた古銭。やっぱり、あかんか?」と、Yやん。
「Yやん、ちょっと忙しいねん。結論だけでいいか」と言うと、
Yやんが、にんまりして
「なんぼ?」
僕は「○○円で引き受けるわ」と。
「あんまり値打ちないねんな。そんなもんか」
「そんなもんや。Yやんの持ち込んだ古銭は、ややこしいねん」
「どうややこしいん?」
「あかんて。今、本の査定しているやろ。
それが終わったら、通販の処理が待ってますねん」
「なあ、頼むわ。教えて~な~」と、引き下がらないYやん。
「講釈しだすとなごうなるねん。ほら、お嬢もバタバタしているやろ」
「どこにお嬢がおるねんな」
「聞こえたら、トンカチが飛んでくるで。代金はこれ、講釈は今度。じゃ、また」
流石に、Yやんもしぶしぶ帰って行った。
そこへ、電話が鳴った。
受話器をあげると「KENさん、毎度。面白いものが手に入りましてん。
何に使うのか分からんものがいくつかと木像が一つですねん。
あっ、ついでに着物を2ケース、持って行きますわ。
今から、もって行ってもよろしい?」
「本は?」
「本はおまへん」
「えっ?本はない? ああ~、何にしても今日はあきませんわ。来週にしましょや」
「遅そうなってもええんですけどね」
「今日は、正味あきませんわ。じゃ、電話切りますわ」
どうも僕の店には風変わりな連中が集まるきらいがある。
ところでYやんが店に持ち込んだのは「天保通宝」という古銭だった。
古銭なんて僕には分からないが、
持ち込まれたのがたまたま、天保通宝だった為、
多少の知識があった。


天保通宝は、江戸末期から明治にかけて流通した銭貨だ。
5億枚近く鋳造されてれたという事になっているが、
実際には7億枚はあると言われている。
公鋳銭と言って、天下の管理の下に造られた通貨だ。
・・・と、いうのは建前。
江戸時代には、ご存知のように
各藩内でのみ使用可能な地方貨幣というのがあった。
これにかこつけて、
あちこちの藩が天保通宝を鋳造した。
これを密鋳銭と言い、恐ろしい数量が鋳造されていたらしい。
質は推して知るべくだが、
コレクション品として価値がないかというと、
一概にはそうとも言えない。
師匠から聞いた話では、
千円くらいのものから、目が飛び出るほど高いものもあるらしい。
・
・
・
しかし、障子の向こうから聞いていると古本屋での話ではない。
「うちは古本屋だ」と言うのだが、常連さんは、
こうして何でもかんでも平気で持ち込んでくる。
いっそ便利屋に転身した方がよいのだろうかと思う今日この頃だ。
さて、長男が応援に来てくれたようだ。
こんな時間だが、また仕事に戻る。