ステキでない金縛り
長男が呆けたようにリビングで座っていた。
どうしたのかと聞くと
「寝ていたら胸の上に何かが乗ってきてん。
体は動かへんし声もでーへん。怖かった」と。
「そらあ金縛りや」
「そうなんか。初めて経験した。何でそんな事になるんやろ」
「神経がたってたんやろ。どうっちゅうことない。
大概、みんな経験する事や」
「おとーさんは金縛りになった時どうしてんの?」
「んん~、スクリューパンチ一撃やね」
僕は学生時代から嫌というほど金縛りに遭っている。
金縛りにかけてはスペシャリストかも知れない。
尻尾の生えた黒ずくめの小人に跨がられたり、
布団のまわりをバタバタと走り回られたり、
天井まで体を持ち上げられたり、
好きな事をされている。
この無礼きわまりない奴等に
渾身の力をこめてパンチを出そうとするのだが、体が動かない。
頭の中では「スクリュ~パ~ンチ」と連呼している。
必死で手を動かそうとすると、
その内、ピクッと神経が繋がるのが分かり、覚醒する。
神経作用だとは分かっていても、
何故か腹立たしくて、空に向かって虚しく二三度パンチをする。
で、「ケッ!」とか言ってまた、眠りにつく。
その夜、晩ごはんを終えた家内と二男に、
長男金縛り事件の話をすると、
二男が、つい先日自分も金縛りにあったと言う。
多分、同日家内が唸り声と共に
「ええ加減にせ~っちゅうねん」と、
いやにはっきりとした二男の寝言を聞いたらしい。
「ほぅ、二男よ、君も戦う派か」と、僕はニコニコしながら言った。
「『金縛りにあったら戦いなさい』って、おとーさんに教わってんで」
「そんな事言うたかいな?でも、正解や。
気で負けたら魔物に魅入られるんや」
家内が「普段、ヘラヘラ言うてるのに、負けん気は強いのね」と、笑う。
・・・おいら武士だから・・・
家内はかつて、枕元にどこぞのおばあさんが座っていたのと
やはり布団のまわりをひたひたと走る足音を聞いた事があるらしい。
得体の知れない生き物に足の裏を舐められた時はびっくりして飛び起きたと。
みんなそれなりに金縛りには遭っているのだ。
幻覚や幻聴にしても、本人の体験という意味では
現も幻も同じことだ。
人のつくりだす知覚というのはなんと面白いものか。



どうしたのかと聞くと
「寝ていたら胸の上に何かが乗ってきてん。
体は動かへんし声もでーへん。怖かった」と。
「そらあ金縛りや」
「そうなんか。初めて経験した。何でそんな事になるんやろ」
「神経がたってたんやろ。どうっちゅうことない。
大概、みんな経験する事や」
「おとーさんは金縛りになった時どうしてんの?」
「んん~、スクリューパンチ一撃やね」
僕は学生時代から嫌というほど金縛りに遭っている。
金縛りにかけてはスペシャリストかも知れない。
尻尾の生えた黒ずくめの小人に跨がられたり、
布団のまわりをバタバタと走り回られたり、
天井まで体を持ち上げられたり、
好きな事をされている。
この無礼きわまりない奴等に
渾身の力をこめてパンチを出そうとするのだが、体が動かない。
頭の中では「スクリュ~パ~ンチ」と連呼している。
必死で手を動かそうとすると、
その内、ピクッと神経が繋がるのが分かり、覚醒する。
神経作用だとは分かっていても、
何故か腹立たしくて、空に向かって虚しく二三度パンチをする。
で、「ケッ!」とか言ってまた、眠りにつく。
その夜、晩ごはんを終えた家内と二男に、
長男金縛り事件の話をすると、
二男が、つい先日自分も金縛りにあったと言う。
多分、同日家内が唸り声と共に
「ええ加減にせ~っちゅうねん」と、
いやにはっきりとした二男の寝言を聞いたらしい。
「ほぅ、二男よ、君も戦う派か」と、僕はニコニコしながら言った。
「『金縛りにあったら戦いなさい』って、おとーさんに教わってんで」
「そんな事言うたかいな?でも、正解や。
気で負けたら魔物に魅入られるんや」
家内が「普段、ヘラヘラ言うてるのに、負けん気は強いのね」と、笑う。
・・・おいら武士だから・・・
家内はかつて、枕元にどこぞのおばあさんが座っていたのと
やはり布団のまわりをひたひたと走る足音を聞いた事があるらしい。
得体の知れない生き物に足の裏を舐められた時はびっくりして飛び起きたと。
みんなそれなりに金縛りには遭っているのだ。
幻覚や幻聴にしても、本人の体験という意味では
現も幻も同じことだ。
人のつくりだす知覚というのはなんと面白いものか。


