レトロショップ成穂堂ケンの苦悩と爆笑の日々 -275ページ目

恩送り

「ペイ・イット・フォーワードを信じるか?」と、問われたら、

「はいな」と答える。

ペイ・イット・フォーワードの概念は、古くから日本にもある。

「恩送り」という言葉をお聞きになった事はないだろうか?

人から恩を受けたら、そのご恩を何らかの形で、他の人に返すというものだ。

その連鎖が、優しさの社会をつくる。
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成穂堂がけったいな店とて再出発(というのもおかしいが・・・)を図ったのは一年半前。

けったいな店を作ると、けったいなお客がつく。

まあ、自然の理ですわな。

案の定、店には個性的な方々が集まりだした。

この方々に共通して言えるのは、

その人柄に馴れてくると、ことのほか親切だということだ。

信じ難い方にも出会えた。

僕はただただ、その施しを受けている。

その方Sさんは、と或る事業で財を成した。

それこそ寝食忘れて働いたそうだ。

財はできたが、長年の無理が災いし病に倒れた。

九死に一生を得たSさんは、人生観が一変したという。

人生において、財を成す事は目的でもなく成功でもない。

より多くの仲間と喜びを分かち合うことこそ大切だ。

痛みを分けあうことこそ大切だ。

これからは、そういう生き方をしようと決心なさった。

そんな時に、辺鄙な場所で、古ぼけた倉庫を店がわりにしている成穂堂を見つけたのだろう。

その前を通りかかった時、「これは捨てておけん」とお思いになった。



ある時「そんなに品物を次から次に買って、どこに飾るのですか?」

と、Sさんに聞いた事がある。

Sさんは、ごく当たり前に

「知り合いにあげるねんがな。骨董好きな人は多いんやで」と。

「えっ!」と、僕が驚くと

「おかしなもんで、人様に何かをさせてもらうやろ。

その内、それが形を変え、他のところにいくようになるんや。

みんなが喜ぶ。わたしも喜ぶ」と、にっこり。

「そら、うちは買ってもらって助かりますけど、Sさんは出費が嵩むばかりですがな」

「みんなのお陰で余裕もできた。お陰様は繋いでいくもんや。それでええのや」

「僕はしてもらうばかりですがな」と、言うと

Sさんは「KENさん、あなたに余裕が出来た時、

あなたのできる事をできる範囲で、人様にしておあげ」と、真顔で仰った。


当初は何かの気まぐれだろうと思っていた。

だけど、一年半たった今でもSさんは足繁く通って下さる。

そしてその姿勢は一貫して変わらない。

まるで、映画のような話だ。

そんな信じられないことが自分に起こるなんて、夢にも思っていなかった。

いつ自分にそんな余裕ができるか分からないが、

Sさんの気持ちはしっかり受け継ごうと思う。


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