恩送り
「ペイ・イット・フォーワードを信じるか?」と、問われたら、
「はいな」と答える。
ペイ・イット・フォーワードの概念は、古くから日本にもある。
「恩送り」という言葉をお聞きになった事はないだろうか?
人から恩を受けたら、そのご恩を何らかの形で、他の人に返すというものだ。
その連鎖が、優しさの社会をつくる。
・
・
・
・
・
成穂堂がけったいな店とて再出発(というのもおかしいが・・・)を図ったのは一年半前。
けったいな店を作ると、けったいなお客がつく。
まあ、自然の理ですわな。
案の定、店には個性的な方々が集まりだした。
この方々に共通して言えるのは、
その人柄に馴れてくると、ことのほか親切だということだ。
信じ難い方にも出会えた。
僕はただただ、その施しを受けている。
その方Sさんは、と或る事業で財を成した。
それこそ寝食忘れて働いたそうだ。
財はできたが、長年の無理が災いし病に倒れた。
九死に一生を得たSさんは、人生観が一変したという。
人生において、財を成す事は目的でもなく成功でもない。
より多くの仲間と喜びを分かち合うことこそ大切だ。
痛みを分けあうことこそ大切だ。
これからは、そういう生き方をしようと決心なさった。
そんな時に、辺鄙な場所で、古ぼけた倉庫を店がわりにしている成穂堂を見つけたのだろう。
その前を通りかかった時、「これは捨てておけん」とお思いになった。
ある時「そんなに品物を次から次に買って、どこに飾るのですか?」
と、Sさんに聞いた事がある。
Sさんは、ごく当たり前に
「知り合いにあげるねんがな。骨董好きな人は多いんやで」と。
「えっ!」と、僕が驚くと
「おかしなもんで、人様に何かをさせてもらうやろ。
その内、それが形を変え、他のところにいくようになるんや。
みんなが喜ぶ。わたしも喜ぶ」と、にっこり。
「そら、うちは買ってもらって助かりますけど、Sさんは出費が嵩むばかりですがな」
「みんなのお陰で余裕もできた。お陰様は繋いでいくもんや。それでええのや」
「僕はしてもらうばかりですがな」と、言うと
Sさんは「KENさん、あなたに余裕が出来た時、
あなたのできる事をできる範囲で、人様にしておあげ」と、真顔で仰った。
当初は何かの気まぐれだろうと思っていた。
だけど、一年半たった今でもSさんは足繁く通って下さる。
そしてその姿勢は一貫して変わらない。
まるで、映画のような話だ。
そんな信じられないことが自分に起こるなんて、夢にも思っていなかった。
いつ自分にそんな余裕ができるか分からないが、
Sさんの気持ちはしっかり受け継ごうと思う。

「はいな」と答える。
ペイ・イット・フォーワードの概念は、古くから日本にもある。
「恩送り」という言葉をお聞きになった事はないだろうか?
人から恩を受けたら、そのご恩を何らかの形で、他の人に返すというものだ。
その連鎖が、優しさの社会をつくる。
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成穂堂がけったいな店とて再出発(というのもおかしいが・・・)を図ったのは一年半前。
けったいな店を作ると、けったいなお客がつく。
まあ、自然の理ですわな。
案の定、店には個性的な方々が集まりだした。
この方々に共通して言えるのは、
その人柄に馴れてくると、ことのほか親切だということだ。
信じ難い方にも出会えた。
僕はただただ、その施しを受けている。
その方Sさんは、と或る事業で財を成した。
それこそ寝食忘れて働いたそうだ。
財はできたが、長年の無理が災いし病に倒れた。
九死に一生を得たSさんは、人生観が一変したという。
人生において、財を成す事は目的でもなく成功でもない。
より多くの仲間と喜びを分かち合うことこそ大切だ。
痛みを分けあうことこそ大切だ。
これからは、そういう生き方をしようと決心なさった。
そんな時に、辺鄙な場所で、古ぼけた倉庫を店がわりにしている成穂堂を見つけたのだろう。
その前を通りかかった時、「これは捨てておけん」とお思いになった。
ある時「そんなに品物を次から次に買って、どこに飾るのですか?」
と、Sさんに聞いた事がある。
Sさんは、ごく当たり前に
「知り合いにあげるねんがな。骨董好きな人は多いんやで」と。
「えっ!」と、僕が驚くと
「おかしなもんで、人様に何かをさせてもらうやろ。
その内、それが形を変え、他のところにいくようになるんや。
みんなが喜ぶ。わたしも喜ぶ」と、にっこり。
「そら、うちは買ってもらって助かりますけど、Sさんは出費が嵩むばかりですがな」
「みんなのお陰で余裕もできた。お陰様は繋いでいくもんや。それでええのや」
「僕はしてもらうばかりですがな」と、言うと
Sさんは「KENさん、あなたに余裕が出来た時、
あなたのできる事をできる範囲で、人様にしておあげ」と、真顔で仰った。
当初は何かの気まぐれだろうと思っていた。
だけど、一年半たった今でもSさんは足繁く通って下さる。
そしてその姿勢は一貫して変わらない。
まるで、映画のような話だ。
そんな信じられないことが自分に起こるなんて、夢にも思っていなかった。
いつ自分にそんな余裕ができるか分からないが、
Sさんの気持ちはしっかり受け継ごうと思う。
