成穂堂よ何処へ行く?
数日前、高校時代の同級生SやんとTちゃんが店を訪ねて来てくれた。
Sやんに「今更ながら、仕事はなに?」と聞くと
隣に座っていたTちゃんが「ken、Sちゃん○×会社のえらいさんやで」と。
○×会社と言えば、ある技術で世界のトップを走る企業。
「ほんまかいな?」と笑うと、
Sやんは「ほんまやで」と言って、名刺をくれた。
「おっ、よう入れたな」
「俺、運がええねん。それだけや」
Sやんは昔から物事を大層に言わない。
話が一段落した所で、Sやんが「ところでな」と、真顔になった。
「一度うちの爺さんの家を見に来ないか」と言う。
「爺さんち?」と、僕が眉をしかめて言うと
「同窓会の時、kenと話した時から考えとってん」
「なにをまた・・・」
「まあ、聞きいや。爺さんの家は今で言う古民家風の家でな、俺が継いでんけど空き家状態やねん」と。
僕ほ「ほぅ」と言った。
「でな、田舎やねんけど、爺さん家から300メートル先にAEONやアウトレットモールがあるねん」
僕は頷いた。
「これ、放っておく手があるか?」と、Sやん。
「何が?」と、僕。
「商売やがな。なんぞの店になるやろ」
「そんなにええ場所なんかいな?」
「さあ、そこやがな。また、家の 建っとる場所がええねん。俺はいけると思うねんけど、それを見に来て欲しいんや」
「行くのはええけど、Sやん、会社やめるんか?あっ、奥さんがするんかいな?」
「違うがな、kenがするねんがな」
「僕が?」
「そやで」
「なんで?」
「分からん」
「そんなアホな」
「折角、空いてる場所があるねん。誰かが使こうたらええねん」
「僕はあかんやろ。自分でやりいな。そうか、Tちゃんは?」
「もう商売はええわ。あのしんどさは勘弁して欲しい」と、Tちゃん。
「奥さんにしてもろうたら」と、Sやんを見ると
「俺は今のままで充分や」と、Sやんは手を大きく横に振った。
「ken、面白いやん。やってみ。どっちみち、空いてる家やろ」
と、Tちゃんが本気とも冗談とも言えぬ顔で言う。
「そんな簡単にいくかいな」と、僕が笑うと
「そんな簡単に、場所を貸してくれる人もおらへんで」と、Tちゃんが言う。
「簡単な事やがな。友達に何の遠慮がいるねんな」と、Sやん。
「Sやんには遠慮はいらんやろけど、何の店にしても内装設備にどれだけ費用がかかるか」
「手作りでいけるやろ」
「そんなものか?」
「そんなものや」
「場所は?」と、僕はついつい、いらない事を訊ねた。
「神戸市の山奥」
「通われへんやろ」と、言うと
「移住したらええがな。家、でかいで。店をしながらでも家族全員充分住める。田畑もついてるし。俺の家も同じ区内やし」
「Sやん家はどうでもええわいな。この店、どうすんねんな?」と、僕は笑いながら言った。
「たたむか」
「ままごと遊びみたいに、簡単に開けたり閉めたりできるかいな」
「なあ、店の家賃、いくら安いと言うたかて、堪えるやろ」と、Sやんが言う。
「そら、あるとないとではえらい違いやけどな」
「俺んとこは要るとしても修繕管理費くらいやがな。安いもんやで」
「他に誰かおるやろ」
「誰でもええっちゅうもんやないしな。それに、潰すにはおしい家やねん」
「うちの家ははどうするよ?」
「売るか、貸したらええがな」
「そう簡単にいくかいな」
「秋口に収穫祭をするから、兎も角、呼ぶわ」と、Sやんは言う。
帰り際に、Sやんが重ねて言った。
「ほんまに秋口に連絡するわ。奥さんにも見てもらって。それから考えたらええ」
僕は「分かった。でも、僕はせーへんで」と言った。
空から湧いて出たような話だ。
人間というのは得手勝手なもので、
瞬間にこの店と新天地での可能性を天秤に掛けている。
本気でコトにあたれば、大概の事は何とかなる。
それは、分かっている。
今の店はやっと目鼻がついてきた所だ。手放すにはまだ早い。
しかし、僕は新し物好きだ。
山間での暮らしもいいかも知れない。
近くにショッピングモールがあるというのは、かなり便利な田舎暮らしという事になる。
隣の市には師匠の住まいもある。
また、師弟としての仕事が出来るかも知れない。
いやいや、あかん。
これまで何店舗も作ったり潰したりを繰り返してきた。
僕もその苦しさは嫌というほど分かっている。
至近距離にショッピングモールがあった所で、問題は人の流れだ。
現地を見ない事には、何とも言えない。
取り敢えず、先行部隊として僕だけが現地に住んでみるか。
いやいや、違うがな。本気で考えてどうするねんな。
この町に一つ作りたいものがあるしな。
心揺れ動く成穂堂であった(笑)
Sやんに「今更ながら、仕事はなに?」と聞くと
隣に座っていたTちゃんが「ken、Sちゃん○×会社のえらいさんやで」と。
○×会社と言えば、ある技術で世界のトップを走る企業。
「ほんまかいな?」と笑うと、
Sやんは「ほんまやで」と言って、名刺をくれた。
「おっ、よう入れたな」
「俺、運がええねん。それだけや」
Sやんは昔から物事を大層に言わない。
話が一段落した所で、Sやんが「ところでな」と、真顔になった。
「一度うちの爺さんの家を見に来ないか」と言う。
「爺さんち?」と、僕が眉をしかめて言うと
「同窓会の時、kenと話した時から考えとってん」
「なにをまた・・・」
「まあ、聞きいや。爺さんの家は今で言う古民家風の家でな、俺が継いでんけど空き家状態やねん」と。
僕ほ「ほぅ」と言った。
「でな、田舎やねんけど、爺さん家から300メートル先にAEONやアウトレットモールがあるねん」
僕は頷いた。
「これ、放っておく手があるか?」と、Sやん。
「何が?」と、僕。
「商売やがな。なんぞの店になるやろ」
「そんなにええ場所なんかいな?」
「さあ、そこやがな。また、家の 建っとる場所がええねん。俺はいけると思うねんけど、それを見に来て欲しいんや」
「行くのはええけど、Sやん、会社やめるんか?あっ、奥さんがするんかいな?」
「違うがな、kenがするねんがな」
「僕が?」
「そやで」
「なんで?」
「分からん」
「そんなアホな」
「折角、空いてる場所があるねん。誰かが使こうたらええねん」
「僕はあかんやろ。自分でやりいな。そうか、Tちゃんは?」
「もう商売はええわ。あのしんどさは勘弁して欲しい」と、Tちゃん。
「奥さんにしてもろうたら」と、Sやんを見ると
「俺は今のままで充分や」と、Sやんは手を大きく横に振った。
「ken、面白いやん。やってみ。どっちみち、空いてる家やろ」
と、Tちゃんが本気とも冗談とも言えぬ顔で言う。
「そんな簡単にいくかいな」と、僕が笑うと
「そんな簡単に、場所を貸してくれる人もおらへんで」と、Tちゃんが言う。
「簡単な事やがな。友達に何の遠慮がいるねんな」と、Sやん。
「Sやんには遠慮はいらんやろけど、何の店にしても内装設備にどれだけ費用がかかるか」
「手作りでいけるやろ」
「そんなものか?」
「そんなものや」
「場所は?」と、僕はついつい、いらない事を訊ねた。
「神戸市の山奥」
「通われへんやろ」と、言うと
「移住したらええがな。家、でかいで。店をしながらでも家族全員充分住める。田畑もついてるし。俺の家も同じ区内やし」
「Sやん家はどうでもええわいな。この店、どうすんねんな?」と、僕は笑いながら言った。
「たたむか」
「ままごと遊びみたいに、簡単に開けたり閉めたりできるかいな」
「なあ、店の家賃、いくら安いと言うたかて、堪えるやろ」と、Sやんが言う。
「そら、あるとないとではえらい違いやけどな」
「俺んとこは要るとしても修繕管理費くらいやがな。安いもんやで」
「他に誰かおるやろ」
「誰でもええっちゅうもんやないしな。それに、潰すにはおしい家やねん」
「うちの家ははどうするよ?」
「売るか、貸したらええがな」
「そう簡単にいくかいな」
「秋口に収穫祭をするから、兎も角、呼ぶわ」と、Sやんは言う。
帰り際に、Sやんが重ねて言った。
「ほんまに秋口に連絡するわ。奥さんにも見てもらって。それから考えたらええ」
僕は「分かった。でも、僕はせーへんで」と言った。
空から湧いて出たような話だ。
人間というのは得手勝手なもので、
瞬間にこの店と新天地での可能性を天秤に掛けている。
本気でコトにあたれば、大概の事は何とかなる。
それは、分かっている。
今の店はやっと目鼻がついてきた所だ。手放すにはまだ早い。
しかし、僕は新し物好きだ。
山間での暮らしもいいかも知れない。
近くにショッピングモールがあるというのは、かなり便利な田舎暮らしという事になる。
隣の市には師匠の住まいもある。
また、師弟としての仕事が出来るかも知れない。
いやいや、あかん。
これまで何店舗も作ったり潰したりを繰り返してきた。
僕もその苦しさは嫌というほど分かっている。
至近距離にショッピングモールがあった所で、問題は人の流れだ。
現地を見ない事には、何とも言えない。
取り敢えず、先行部隊として僕だけが現地に住んでみるか。
いやいや、違うがな。本気で考えてどうするねんな。
この町に一つ作りたいものがあるしな。
心揺れ動く成穂堂であった(笑)